7月15日〜7月21日 [etc]
バルテュス展
京都市美術館へ「バルテュス展」を観に行きました。バルテュスは、私もトモコも昔から大好きな画家なのですが、バルテュスオンリーの展覧会に行くのは初めてなので、去年あたりから大いに楽しみにしてゐました。しかし、どーもマスコミで騒いでゐる様なので、混んでたらヤだな、といふ懸念があったのです。が、まだ始まったばかりといふ事もあるのか、割と空いてゐました。よかったー。
まとめてバルテュスの画業を観るのはとても感慨深く、大いに満足できる展覧会でした。
バルテュスといへば、ロリコン。少女のエロスを描いた作品が有名ですが、もちろんそれらの作品は私も好きとはいへ、私が最も好きなバルテュスは、「街路」や「山(夏)」の様な作品。キリコを思はせる、この世のイデアを描いたかの様な、静謐で凝固した永遠を掴んだ作品。と、いま書いて気がついたのだけれど、少女の作品もイデアだし、静謐で永遠だよなぁ。うーん、ま、私は人がゴチャゴチャ居る作品の方が好きなんでせう。一人の少女にスポットが当ってゐる奴より。
で、私の中のバルテュスは、そんなイメージなのですが、今回の回顧展では、普通の(?)風景画もけっこう展示してありました。ふーん、これもバルテュスかー。解説によれば、バルテュスは結構風景画には力を入れてゐたみたいで、山水画とかの技法を研究したりしてたらしい。ふーん、山水画かー。
あと、画面のテクスチャーが凄くて。完璧主義者で、何度も何度も(上から)描き直すから、テクスチャーがえらい事になるらしい。これは画集では分からなかった。
それと、「嵐が丘」の挿絵シリーズがあって、それが興味深かった。ここにはバルテュスの原型が現れてゐる、といふ事もありますが、なにより、ロリコン・ネコ好き・美男子(ピーター・オトゥールにエイドリアン・ブロディを混ぜた感じ)で、そこに「嵐が丘」が加はるなんて、なんか分かりやす過ぎー、と笑ってしまったからです。
あまりにカッコ良過ぎるものって、笑へますね。
白川静問題
「漢字の成り立ち」落合淳思(筑摩選書)を読みました。この本は話題になってる様ですが、やはり白川静批判が入ってゐるからでせう。
私も若い頃は「白川静すげー」と興奮した口ですが、長ずるに及んで、なんか違和感が出て来て、特に晩年のカリスマ化した姿には胡散臭ささへ感じてしまって、離れてしまったのです。が、気にはなってゐた。私自身には、白川静のどこに問題があるのかを分かるほどの知識も力もないので、誰かそこらを説明してくれないかなぁ、と思ってゐました。故に、これは正に待望の本だった訳です。
もの凄く簡単に言ふと、白川静の問題点は、自分の考へがまとまった1960年代前半以降、新しい情報を入れなくなった事です。確かに白川静は、それまでの字音から探る字源研究を、字形から探るものに転回し、そこに呪術儀礼からなる様々な新解釈を構想する事で、漢字研究を一歩も二歩も進めた功績があります。それらのいくつかは、いまでも有効なのですが、しかし、1960年代後半からも様々な新資料の発見や、古代研究の進展があったのに、それらを一切無視して自らの理論の精緻化のみに腐心したために、その体系(白川学)は、時とともに妄想に近いものになっていってしまった、といふ事らしい。
なーるほど、それは分かる。白川静は、学会の派閥からは距離をとり、「孤詣独往」を尊ぶ、と言って、ひとりコツコツと独自の研究を重ねた人です。ファンはまた、さういった所に痺れるのですが(私もさうだった)、確かにこれはカッコいいし、藝術の世界ならまだいいのかもしれないけれど、学問の世界ではちょっとマズい、といふ事でせう。
学問=サイエンスは、エビデンスによって裏付けられてゐなければなりません。新資料=新エビデンスを無視するのは、学問の自殺に他ならない。
つまりは白川静の研究は、最後には学問ではなく、文学になってしまった、といふ事でせう。だからこそ、一般にファンが増えたんだ。
なるほどねぇ。
オール・ユー・ニード・イズ・キル
「オール・ユー・ニード・イズ・キル」をMOVIXで観ました。うーん、ちょっと期待はずれ。これ、日本のラノベが原作のループものなんだけど、「まどマギ」以降ではもう通用しないと思ふ。ゲームをクリアする様に、何度もやり直しながら闘っていく、といふ“だけ”の作品に見えてしまふ。
ただ、トム・クルーズは相変はらず良くて、後半のエミリー・ブロントに珈琲を入れてやるシーンは最高。あの表情、他の役者では出来ない。あれで、この映画の欠点全てが帳消しになる・・・といふのはさすがに言ひ過ぎではあるけれど、さう思はす一瞬。トムクルファンは必見でせう。
トークショー
幸いにしてアップリンクで行ったトモコのトークショーは好評だったみたいですが、その余波なのか、次は京都みなみ会館にてトークショーを行ふ事になりました。8月16日の土曜日。「リアリティのダンス」上映後に。
内容は、基本、アップリンクで行ったものと同じ(ホドロフスキーのタロットとサイコマジックの解説。及び映画「リアリティのダンス」のタロット的読み解き)ですが、全く同じでは面白くないので、なんかちょっと違ふ話するかも、との事です。
配給してゐるアップリンクの人たちでさへ「さういふ事だったのか!」と驚嘆したといふ映画の読み解きが、京都で聞ける!今回は私も!・・・と思ったけど、土曜日。オパールでの仕事があるやないですか。うーむ。
ま、興味のある方は是非、是非。
Comments
投稿者 オーソン : 2014年07月22日 22:42
みなみ会館でトークショー、、、すごいですね!観にいきます!
『オール・ユー・ニード・イズ・キル』は、腕立て伏せから、脱出するシーンで爆笑しました。
投稿者 元店主 : 2014年07月24日 18:38
オーソンへ
強制起訴メンバーによる「オール・ユー・・・」の評価は、
マツヤマさん「ダメ」、ヤマネくん「思ってたより良かった」、私「期待はずれ」といった感じだ。まぁ、それぞれが最初に持ってた期待値によって変わる相対評価だから、くらべる事はできないけれど。
でもみんな、トム・クルーズは良かった、と。
みなみ会館、行ったってねー。で、感想を私に教えてくれ。
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