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2014年04月03日(Thu)

3月26日〜3月31日 etc

灰羽連盟

アニメ鑑賞シリーズ第4弾。今回のはちょっと古くて、2002年のアニメ「灰羽連盟」。絵もちょいレトロな感じで、舞台もここではないどこか。壁に囲まれた中世ヨーロッパの様なグリの街を舞台に、灰羽(ハイバネ)と呼ばれる背中に羽が生えて頭上に光輪を抱いた少女たち(あ、少年も居たか)の生活を描いた話。地味ではあるが、しみじみとなかなかいい作品でした。

この中にレキといふ少女(とは言っても、多分10代後半)が出て来るんだけど、彼女は“少女地獄”に墜ちてるんだよね。“少女地獄”とは、私が勝手に夢野久作から名前だけ借用してるんだけど、少女がその潔癖さ故に墜ちる地獄のこと。潔癖で聡明、感受性の強い少女は、醜さが許せない。故に世の醜さを憎み、それと闘ひ、自分はそんな醜さと無縁であらうとする。けれど、聡明故に自分の中にその醜さをみつけてしまひ、強い自己嫌悪に陥る。それでさらに正しく美しくあらうとし、エゴを抑へ他人のために尽くさうとするんだけど、すると周りから感謝されたり絶賛されたりして、それが「私はホントはそんなぢゃないのに。報酬が欲しくて、許しが欲しくてやってゐるだけのエゴイストなのに」とさらに強い自己嫌悪に陥る。そこから抜けようとして、さらに正しく美しくあらうとして・・・とバッドスパイラルに入って抜けられなくなってしまふこと、これが少女地獄です。
そこから如何にして抜け出すか、がテーマとなる訳ですが、実はこれ、「まど★マギ」における“魔法少女〜魔女システム”と同じです。魔法少女の墜ちる少女地獄が“魔女”。ハイバネの墜ちる少女地獄が“ツミツキ”と呼ばれる、羽が真っ黒な状態です。
むろん、それぞれの作品で地獄の抜け方は違ひますが、共通点は“ひとりでは絶対にそこから抜けられない”といふこと。
それにしても、四つみたアニメ作品のうち二つが少女地獄をテーマにしてるとは、なんとも・・・。

村上春樹

ところでこの「灰羽連盟」、村上春樹の「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」に影響を受けてるさうです。グリの街の設定がそっくりなんだと(確か“世界の終はり”の世界に)。壁に囲まれてそこから出ることができず、壁の近くにある森には近づいてならず、鳥だけが壁を超える事ができる、とか。
実は私、「世界の終わり〜」は発売当時にハードカバーで買って読んだのですが、といふ事は30年近く前で、私が村上春樹に違和感を感じた最初の作品であったといふ事もあり、全く内容を覚えてゐません!うーん。
それはともかく、村上春樹はアニメに影響を与へてゐるだけでなく、アニメからの影響も強く受けてゐるらしく(本人はそんな事は言ってないらしいですが)、確かに村上春樹の作品って、アニメっぽい。つーか、セカイ系っぽいよね!
それで色々と腑に落ちた。私、セカイ系ってダメなんだわー。
いや、セカイ系と言っても、ラノベの「イリヤの空、UFOの夏」と、マンガの「最終兵器彼女」ぐらゐしか読んでないけど、もう無理!って感じで。気持ち悪くて、読むのが辛い・・・。この感じ、確かに私が村上春樹の作品に感じる気持ち悪さと通じるものがあるんだよねー。
まづ、敵の姿がハッキリしない。なんか分からんが、ものすごーく邪悪な敵と闘ってることになってる。そしてそれと闘ふ主人公(セカイ系では主人公の彼女)の肩に、世界存亡がかかってゐたりする。・・・いや、敵の姿がはっきりしないのは、それが単なる妄想だからだと思ふんですよ。中二病の主人公が、妄想で自分(か彼女)を世界の救世主に見立てて、マスターベーションしてる様な感じ。うーむ。
私はやはり、敵は明晰性のうちに描くべきだと思ふ。確かに、姿の見えない敵、正体不明の敵、目的も意図も分からない捉へどころのない敵、といふものもあるけれど、それらもその分からなさを明晰に描くべきだと思ふ。「イリヤ」も「サイカノ」も村上春樹も、それが出来てゐるとは思へない。敵を明晰に捉へる事から逃げてゐる様に感じてしまふのです。
とはいへ、セカイ系に関しては、もうちょっと作品を観てみないとダメかなぁ・・・。

あなたを抱きしめる日まで

MOVIXで「あなたを抱きしめる日まで」を観ました。スティーブン・フリアーズ監督・ジュディ・デンチ主演で、アイルランドの女子修道会が子供をアメリカに売ってゐた、といふ実際にあった事実を元にした作品です。普段の私ならあんまり観ないタイプの映画ですが、なんと!あのホドロフスキーが最近のオススメ映画としてあげてゐたので、急遽観に行った、といふ次第。結果、観に行ってよかったー。地味ながらも堅実なつくりで、結構シビアな内容なのにユーモア感に溢れ、問ひかけは案外深い。私は、大西巨人も尊重したジョージ・オーウェルの言葉「The real problem is how to restore the religious attitude while accepting death as final」を思ひ浮かべました。
やはり信用する人の薦める映画は観ておくべきですね。

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