コンテイジョン [映画]
11月の強制起訴映画はスティーブン・ソダーバーグ監督の「コンテイジョン」。香港から帰ってきたグウィネス・パルトロウが、咳き込み、泡吹いて倒れて、病院へ。そこで簡単に死んでしまって、頭皮をベリベリと剥がされて、頭蓋骨を割られて、中をみた医師が「なんぢゃこりゃー!」と叫ぶ所から映画は始まります。新種のウイルスによる感染症。これがまた致死率が高く、感染スピードも早くて、世界中にコンテイジョン(伝染)していく。広がるパニック、なんとかワクチンを作らうと頑張る博士たち、事態の収拾をはかる政府、その裏に陰謀を疑ふブロガー、バリバリの一般人として奮闘するマット・デイモン・・・・・・。
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- ヤマネ
- あ、最初に発言していいですか?
- 元店主
- うん、どうぞ
- ヤマネ
- ・・・ダメでしたー!やっぱソダーバーグあかんわー!
- 元店主
- ははは。まぁ、私は最初の期待値が低かったから、そこそこ楽しめたんだけど
- ヤマネ
- ケンタロウさん、さういふの多くないですか?なんか、人間甘くなってません?歳ですか?
- 元店主
- いやいや(苦笑)。で、ヤマネくんはどこらへんがダメだったの?
- ヤマネ
- もう、全部ですよ!まづ、心理描写が下手。全体に薄っぺらい。監督としての考へといふか、提示がない。心意気も感じられない。お前、ほんまにこの映画撮りたかったんか?って、問ひつめたくなります!
- 元店主
- ボロカスだなー。でも、これだけの大規模な事件、群像劇を、うまくまとめてると思はなかった?
- ヤマネ
- まぁ、それは巧いですよ。それはね。でも、『アウト・オブ・サイト』や『イギリスから来た男』の頃の様な、異様にカッコいいスタイリッシュさはすっかり影を潜めてしまってると思ふんですけどねー。なんか、NHKのドキュメンタリーみたい
- 元店主
- 私もソダーバーグは『エリン・ブロコビッチ』まで、と思ってるけど。・・・確かに、今回の映画のそっけなさは凄かったよね。カッコ良く撮らうとか、面白く撮らうといふ気が微塵も感じられない。いっそ気持ちいいくらゐ。
- ヤマネ
- それは褒め過ぎですよ!単にやる気がないだけでせう、そんなの。なんかソダーバーグに貰ってるんですか?オパールのお客さん、とか?
- 元店主
- そんな訳ないやん!・・・・・・でも、ヤマネくんもマット・デイモンは良かったんぢゃないか?え?
- ヤマネ
- う・・・それは・・・よ、よかったです!マット・デイモン最高ー!
- 元店主
- ほらー。ぢゃあ、ローレンス・フィッシュバーンは?
- ヤマネ
- 彼が出て来ると、そこだけ映画になる感じですね!まぁ、好演ぢゃないですか
- 元店主
- だろー。なら・・・
- ヤマネ
- ちょっと待って下さいよ!あの、今回マツヤマさんは居ないんですか?
- 元店主
- あれ?そんな事ないと思ふんだけど・・・、マツヤマさーん!
- ヤマネ
- ヲヤジー!アニキー!
- マツヤマ
- 呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン!!!
- ヤマネ
- わ!なにしてるんですか!
- 元店主
- マ、マツヤマさん、その格好は・・・
- マツヤマ
- ふふふ、たうたうこの言葉を使ふ時がきたな・・・
- 元店主
- え、もしかして・・・
- マツヤマ
- この映画は・・・、この映画こそ・・・、ロックフェラー映画だ!!!ジャジャーン!!
- ヤマネ
- でたー!便蛇民古歩道!
- 元店主
- ていふか、ソヘGタカヒコー!
- マツヤマ
- 二人とも、ジュード・ロウ演じるネットブロガーの描き方だけ悪過ぎると思はなかったかい?
- 元店主
- 確かにそこは私も気になったんです。他の人たちはみんな、まぁ欠点があっても基本いい人、性善説で描かれてますけど、ジュード・ロウだけはねぇ。政府やCDCはウソをついてゐる!と陰謀説を唱へて政府やCDCの人たちの足を引っ張る、パニックを煽る、挙げ句の果てはレンギョウが病気には効く、とか言って、病気でもないのに病気になったふりをして、レンギョウをとって治った!とかウソ芝居をしたり。それらの情報を株屋とかに流して、しっかり金儲けもしてますし。
- ヤマネ
- ボクはそこが面白かったんですよ。ソダーバーグの主張が唯一みえた所で。インターネットが嫌い!あんなもの信用ならん!と考へてるんでせうね
- マツヤマ
- いや、あれはソダーバーグの主張ぢゃないな。そもそもソダーバーグに主張なんてないよ。彼は言はれた事をホイホイとやる、その職人技が冴えてるだけで。自らの主張などなく、官僚が作った答弁をそのまま読む、その姿勢がテレビしか観ない主婦層に『誠実さう』と受ける・・・といふどこかの首相にそっくりだな。スティーブン・ノダーバーグ!
- 元店主
- いや・・その・・・。えーと、あれがソダーバーグの主張ぢゃないとしたら、当然それは・・・ロックフェラーの主張になる訳ですよね?
- マツヤマ
- その通り!で、もっと突っ込んで言ふとだな、ジュード・ロウはアサンジなんだよ!この映画は、ジュリアン・アサンジとウィキ・リークスをぶっ潰すためのプロパガンダ映画なんだよ!
- ヤマネ
- えー、そんなの分かんないですよー
- マツヤマ
- 簡単に分かってもダメなんだよ。一般大衆の間に、なんかインターネットって信用できなーい、とか、やっぱテレビや新聞の言ってる事が正しいのよね、とか思はせる、といふか、その信念を強固にさせるのが狙ひなんだから
- 元店主
- 確かにウィキ・リークスは凄いですもんね。あれで各国の支配者層の陰謀、機密がボロボロ流出してゐる。有名になったのは、イラクのアメリカ駐留軍が、一般イラク人を無差別に殺傷してゐる映像の公開でしたが・・・日本的には、小沢を陥れたり、鳩山政権を倒したのが、実はアメリカと日本の外務官僚が組んでやった謀略だった、といふのがバレちゃった事ですよね。そんなこっちゃないか、と言はれてましたけど、外交機密文書の流出といふ形で証拠が出ちゃったのが凄い。私も興奮しました。もう支配者層は戦々恐々ぢゃないですか
- ヤマネ
- でも、その分、支配者の人たちも必死で、ウィキ・リークスの資金源を全て抑へて一時活動停止に追ひ込んだし、アサンジの事も暴行容疑で逮捕しましたしねー
- マツヤマ
- さうなんだよ。で、今はアサンジはイギリスで拘留されてるんだけど、アメリカからの圧力で、スウェーデンに送られ、最終的にはキューバのグアンタナモ刑務所に送られてそこで謀殺されるかもしれない、といふ事態になってるんだよ。ニューズウィーク誌日本版の11月16日号に載ってた
- ヤマネ
- ふーむ。ぢゃあ、この映画の製作総指揮であるジェフ・スコールも怪しいんですか?
- マツヤマ
- もちろんぢゃないか!彼はネットベンチャーで成功した成り上がりで、初代イーベイの社長だよ。イーベイ退社後は“パーティシパント・プロダクションズ(現パーティシパント・メディア)”を立ち上げて、映画製作に乗り出したんだ。その映画がみんな、怪しげな社会派のもんばっかりで・・・。『コーブ』とか『カウントダウン・ゼロ』とか『不都合な真実』とか・・・
- 元店主
- あれ?『不都合な真実』って、それロスチャイルド系ぢゃないですか?
- マツヤマ
- う・・・、それはさうなんだけど・・・、でも、最後に流れた曲、U2ぢゃないかー!
- 元店主
- 確かに!正にロックフェラー映画だ!
- ヤマネ
- もー!ロックフェラーかロスチャイルド、どっちなんですかー!
- マツヤマ
- まぁ、どちらにせよ、“1%”である事には変はりないだらう。これは完全に“1%”の映画なんだよ。映画そのものが治者の視点で描かれてゐるしな。民主党リベラル系映画ともいへるな、これ。この御時世にこの映画とはなー。1%は常に反乱、革命を抑へたい、ネットの様な民主的な手段は弾圧したいんだよ。ポピュリズム、とか言ってな。確かにネット空間はゴミが多いよ。民主主義も汚れ切ってゐる。でも、それをキレイにまとめられたらマズいんだよ。この映画は現実をキレイにまとめすぎ。胡散臭いぜ。“99%”であるオレたちは、常にオキュパイド・オールストリーツ。いっちょ派手にやらうぜ!・・・てな訳で、ハイチャラバーイ!
- ヤマネ
- あああ、マツヤマさん、消えちゃった。・・・で、結局どうなんですか、この映画?
- 元店主
- うう〜ん、・・・マット・デイモンが一般人として頑張る映画、といふ事でいいんぢゃない?
- ヤマネ
- さうですね!我々はどんな状況であらうと、自分たちのできる事を精一杯やる、と。娘が喜ぶなら、U2流してもいいやんか、といふ事ですね
- 元店主
- まぁ、そんな感じー
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12月の強制起訴映画はスピルバーグの新作「タンタン」です!
Comments
投稿者 テラリー : 2011年12月08日 23:51
なんと!僕は楽しみました!
ジュード・ロウ最高でした!
震災直後にデマや不確かなネット情報があふれる状況を経験したせいか、不安に踊らされる大衆って所がよかったです。最後に保釈金が集まってしまうところとか。
中国や、感染して死んでしまう関係者の扱いはかなり淡泊だとは思いましたが(笑)
投稿者 元店主 : 2011年12月09日 03:05
実は私も、この映画を観て311の事を思ひ出してゐたんだ。
確かにマツヤマさんのいふ通り、この映画は治者の視点で描かれてゐる。治者側は、基本みんな善意で動いてゐて、事態収拾のために犠牲も厭はない、といふ風に描かれてゐて、被治者側(一般大衆)は、パニックに陥って暴動を起こしたり、他人の家を襲ったり、食べ物を奪ったり。またジュード・ロウのウソ情報に振り回されたりと、とにかくろくでもない。これちょっと、不公平ぢゃないか?と思はないでもない。
でも、311を経験した後だと、かういった描き方もありではないか、と思ってしまふんだ。むろん、311における治者側(政府や東電)が良かった、といふのではないよ。あれもまた、ろくでもなかった。が、今回の事の最大の問題は、治者側に対する徹底的な不信の蔓延だと思ふ。
リバタリとしては、政府に対する不信はデフォだし、私も基本は信じてはゐないが、それにしたってなんでもかんでも信じてない訳ではない。信じない、疑ふ、といふのも結構大変で、それにはぢゃあ何が正しいか徹底的に調べたり考へたりしなくてはならない。それなしだと、安易にそれこそネットや噂の怪しげな情報に振り回され、ろくでもない事態に陥ってしまふ。今回の311はそれに近いものを感じた。
だから一応、建前として、例へばこの様な感染症のパンデミックが起こった場合、政府やCDCやWHOがどの様に動くのか、といふのを描くのも、なかなか良いのではないか、と。むろん、その通りに動くとは限らないので、色々なチェックは必要なんだけど。
ものごとを疑ふ、自分だけを信じる、といふのはもの凄く労力とコストのかかる事だからねぇ。「ウインターズ・ボーン」観てみたら、と。
信用の回復、あるひは健全な不信の構築、が必要であるよなぁ、と思った次第だ。
投稿者 テラリー : 2011年12月09日 07:57
その通りだと思います。
311は被害の大きさと、日本人の道徳心(?)が世界に衝撃を与えたわけですが、それはつまり暴動や略奪が起こって当たり前、パニックが起こるほうが普通ってことだと思います。カトリーナが印象的でしたが。なので治者側はよく描きすぎなのかもしれませんが、大衆の描き方はそんなに不自然ではないように感じました。
拡散希望と書いてあれば内容の真偽を考えることもなく、転送したりリツィートしたり、容易に発信する側になれる割には自分の頭で考えることはすっ飛ばされてるのが現状だと思います。もちろん僕も含めてですが。
投稿者 元店主 : 2011年12月10日 04:36
なるほど。
でも、大災害の折りには必ずパニックが起こる、といふのも怪しいもんだとは思ふぞ。むろん、火事場泥棒は常に現れるが、一般大衆は却って助け合ひの精神が産まれたりもする場合も多々あると思ふ。
・・・てな事を書いたレベッカ・ソルニット「災害ユートピア」といふ本があるから、もしヒマがあったら読んでみ。テラリーには、この本で紹介されてゐる“エリートパニック”といふ概念を、是非頭に叩き込んでほしい。
ちょっとこの映画の見方が変はるよ(多分)。
投稿者 テラリー : 2011年12月15日 21:35
読み進めております。
分厚いっす!
クリスマス辺りにKRUGを持参いたします。
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