カリフォルニアの空 [音楽]
私はインディーヒップホップ・ジャジーヒップホップにはあまり興味がありませんでした。
何故なら、私にとってヒップホップとはブラックミュージックの最新形態であり、常に革新性を求めてゐたので、90年代前半辺りの音に固執してゐるかの様なインディー/ジャジーヒップホップは、まー、あまり関係がないかな、と思ってゐたのです。
それに、これは些かの偏見が入りますが、インディー/ジャジーヒップホップは、年を重ねるにつれてどんどんメロウネスを強めていく様に思へ、言ってみればあまりヒップホップを聴かない人用の音楽になり果てたのではないか。などと、思ったりしたのも、私がそれらの音楽から距離をとってゐた一因でもあるでせう。
そんな私の偏見が、最近ひっくり返りました。
切っ掛けは、ケロ・ワンのセカンドアルバムです。
このアルバムをタワーレコードの店頭でみた時、思はず手に取ってマジマジと見てしまひました。そこには、ゴールデンゲートブリッジとどこまでも青いカリフォルニアの空、が写ってゐたのです。
私は昨年行ったカリフォルニアの事を想ひ出し、しばし陶然としてゐました。
が、アーティスト名をみて、なんだケロ・ワンか、と思ひ、その時は棚に戻したのです。
それでも、私の頭の中には常にあのジャケットがあり、先日、たうたう購入してしまひました。
そして、CDプレーヤーでアルバムを再生すると、私の頭にはパッとカリフォルニアの空が広がったのです。
実をいふと、私はカリフォルニアの空にも偏見を持ってゐました(偏見の多い人間だな、私も)。
あの、雲ひとつなく、どこまでも広く青い抜ける様な、カラッとした空は、なんでもイエス/ノーをはっきりさせ、フランクでオープンなアメリカ人の気質を象徴してゐるみたいで、なんかヤなかんじー、と思ってゐたのです。やはり、雲が多く、複雑微妙に表情を変へる日本の空の方がいいや、と。
ところが、昨年カリフォルニアに行った際、私はカリフォルニアの青い空にやられてしまったのです。ある種の圧倒的な気持ち良さがある。どこまでも青く青く抜ける空の下に、凝縮された快楽が瀰漫してゐる。確かにここは、“最後の人間”が住む所なのかもしれない・・・。
私がケロ・ワンのアルバムから感じたのは、ジャジーネスでもメロウネスでもなく、カリフォルニアの空、だったのです。
となれば・・・、と、私は今まで無視してきたグループも聴いてみる事にしました。
オークランドのグループ、クラウン・シティ・ロッカーズ。
生バンド入りのヒップホップグループ、といふ事で、シカゴのザ・ルーツなんかとよく較べられますが、こちらは・・・うん、確かに“空”だ!
ザ・ルーツが“シカゴの風”なのに対して、こちらは“カリフォルニアの空”です。
ロングビーチのグループ、アグリー・ダックリング。
まぁ、これは以前から聴いてゐたのですが、あらためて聴き直してみると・・・うむ、確かに“カリフォルニアの空”が!
考へてみれば、私はもともとウエッサイファンだった訳なのですが、これらの西海岸アングラヒップホップは、西海岸の東海岸、みたいな感じで、幾分差別してゐたんですね、自分の中で。やっぱウエッサイはファンクでギャンスタだらう、などと。
今まで聴こへなかったものが聴こへる、見へなかったものが見へる、といふのは気持ちがよいものです。カリフォルニアの空に、感謝。
Kero One - Welcome to the Bay - OFFICIAL MUSIC VIDEOああ、またカリフォルニアに行きたい・・・。
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