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2008年02月14日(Thu)

玉村方久斗展 アート

 京都国立近代美術館に「玉村方久斗展」を観に行きました。

 玉村方久斗といへば、玉村豊男のお父さん。といふより、前衛日本画家さんであつた訳で、大正新興芸術運動の担ひ手の一人として有名な方です。「ゲエ・ギムギガム・プルルル・ギムゲム」といふ、稲垣足穂なんかも書いてゐた雑誌を発行したりして、それで私も名前くらゐは知つてゐたんですが、どの様な作品を描いてゐるのか、といふのは全く知りませんでした。

 それで、まー、チョイと観に行つた訳なんです。で、これがまた、とても素晴らしかつたのです。

 日本画家さんですから、絵巻物も描いてゐるんですが、まづこれが素晴らしい。特に「雨月物語」。安易に表現するなら“グロテスク”、といふより“グロ”といつた感じの作風で、毒々しい色使ひ、歪み擦れぶれた描線、飛び散る血や糞尿に誇張された人々の表情、といつた具合でなかなかに強烈です。それでゐて、サッサッとかなりのスピードで描かれた印象で、各所に残る余白と併せて、それらが風通しのよさも齎してゐて、非常にモダン。こんなのは大好きだなー。

 さらに現代を主題にした作品群もあるんですが(「休日」「港町寸景」など)、これらもグー。正しい意味でのノスタルジーを感じます。“正しい意味での”といつたのは、これらの絵に描かれてゐる昭和初期の風俗に懐かしさを感じる(懐かしい絵が描かれてゐる)、といふ事ではなく、絵そのものが“我々の生まれてくる前の感覚”を持つてゐる、といふ意味です。父母未生以前の感覚、これが正しいノスタルジーでせう(私的にはね)。かういつた作品は、絵でも音楽でも小説でも素晴らしいです。私は大好きです。是非欲しいです。売つてくれェ! …って、買へる訳ないんですが。

 どうやら今回が初の回顧展となる様です。失はれてゐた作家さんだつた訳ですね。よい展覧会に行けてラッキーでした。

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