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2008年01月21日(Mon)

ナショナル・トレジャー 映画, ロックフェラー

 MOVIXにて『ナショナル・トレジャー/リンカーン暗殺者の日記』を観ました。

 ジェリー・ブラッカイマー制作、といふ事で、予想される通りの大味な作品。もう少し丁寧に作られないんかいな、と少々ゲンナリしながらの鑑賞でした。とはいへ、各所にキラリと光る面白さがあり、それなりに楽しめたのも事実です。その“キラリ”とは……“陰謀論”です。

 この映画、原題は『NATIONAL TREASURE/BOOK OF SECRETS』でして、それを上記の様に訳してゐる訳ですが、これは間違ひです。といふか、分かりやすい様にと思つてわざとかう訳したのでせうが、それは映画の主題を歪める事になります。“BOOK OF SECRETS”とは、“リンカーン暗殺者の日記”の事ではなく、“アメリカの歴代大統領だけが見る事のできる(そして書き込む義務のある)陰謀の真相の書かれた秘密のノート”の事なのです。

 映画では、主人公(ニコラス・ケイジ)がこのノートを見る事によつて、先住民の残した黄金で出来た都市を発見する、といふ展開になつてゐるのですが、その“黄金の都市発見! ”といふクライマックスはどうでもよくて、やはりこのノートを見る所が一番面白い。そのノートには、“ケネディ暗殺の真相”とか、“アポロ計画の真相”などが書かれてゐるのです。やー、この間“かぐや”が月面写真を撮つたところ、アポロが着陸した後を確認できなかつた事から、「やはりアポロは月に行つてなかつたのでは!?」といふ疑惑が再沸騰してゐる昨今、タイムリーで笑はせて貰ひました。

 そして47ページ。この秘密のノートの47ページをみて、主人公は衝撃を受ける訳ですけれど、その肝心の47ページに何が書いてあつたのか、それは観客には明らかにされません。うーん、何が書いてあつたのでせうか? 気になります。が、多分、「911はロックフェラーの陰謀だつた」とか「地球温暖化問題はロスチャイルドの陰謀だ」とか、そんな事が書いてあるんでせうねー。やー。(ま、映画の次のシリーズへの伏線かもしれませんが)

 告白しますと、私はこの映画のラストを観て、ショックを受けたのです。とにかくこの映画では、最後にアメリカ先住民の残した黄金の都市を発見する訳です。黄金で出来た、古代の都市の遺跡。それは普通、ユートピアの象徴です。汚れ切つた現代社会から失はれてしまつた黄金時代。故に、この後の展開は、以下の様になると私は予想しました。

 主人公が「今のアメリカには相応しくない(立派すぎる)」と自らの意志で再び都市を封印する。あるいは、都市が猛烈な勢いで水没していき(実際、映画では水没しかけるのです)、そこから命からがら逃げ出した主人公が、都市の沈んだ湖をみつめながら、「いつか、我々が黄金の都市に相応しい人間となつた時、また都市は姿を現すだらう…」と呟く、と。……ね、ね、普通はさうなるもんでせう?

 ところが! 映画ではなんと、この都市をアメリカ政府のものとしてしまふんですねー。大統領まで出て来て「ありがたう!」と礼を言つたりして。……い、いくらなんでも能天気すぎる! と、私は愕然とした訳です。が、ここである事に思ひ至りました。

 実をいふと、現代社会では国家間による黄金の取り合ひが、密かに、激しく行なはれてゐる様なのです。1971年のニクソンショックにより、金(ゴールド)とドルの兌換が廃止されました。それまでは、お金(ペーパーマネー)といふのは、金(ゴールド)の裏付けがあつてこそ、通用してゐたのです。その裏付けを、アメリカは外した。そしてドル(といふ紙切れ)を基軸として世界の通貨体制を再編したのです。こんな強引が事ができたのも、アメリカが圧倒的に強かつたが故です。いざとなつたら、アメリカがドルを引き受けてくれる、といふ安心感から、ドル基軸体制は維持されてきたのです。

「実物経済」の復活 —ペーパーマネーの終焉
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 ところが、とうとう最近はアメリカの勢力にも翳りがみえてきました。このままだとドルが本当の紙切れになつてしまふかもしれない。といふ事は、世界はペーパーマネー体制(IMF体制)から、元の実物経済(タンジブルエコノミー)体制へと戻つてゆく、といふ事です。つまり、本物の金(ゴールド)を持つてゐる国が強いのです。(「『実物経済』の復活」副島隆彦著など参照)

 ヨーロッパが、中国が、そしてもちろんアメリカも、金(ゴールド)を集めてゐます。争奪戦です。こんな中、もし本当にアメリカに黄金の都市が発見されたら…、それこそアメリカの覇権は安泰です。正に「ナショナル・トレジャー」。となれば、この映画はヨーロッパや中国に対する威嚇? なのかな??? やはりプロパガンダ? 分かる人だけに分かる密かなメッセージ???

 …とまぁ、世の中には陰謀が溢れてゐるのでしたー。

Comments

投稿者 パワー : 2008年02月08日 17:22

店主、トモコ様、ポー店長、おひさし出世魚です。パワー@MILANOです。
ここイタリアでは空前の「おひさし出世魚」ブームが起こって・・おらず、長年使われてきたチャオという挨拶が「おひさし出世魚!」に取って代わられようとして・・おらず、有識者たちから懸念の声が上がっていま・・せん。

ナショナルトレジャー2の映画内に隠された陰謀論、興味深かったです。一作目がすごく面白かったのと、テレビで繰り返し宣伝していたのですごく見たかったのですが、サクッと見逃しました。サクサクサクサクサクっと見逃しました。ごめんなさい。なおこちらでは劇場で公開される映画はほとんど全てが吹き替えとなっていますので、それで映画を見に行く気力がボビーンとそがれます。

アメリカの影響はイタリアにも及んでいるのでしょうか? 誰か教えてください。でも、ものすごく乱暴に言えば、
 イタリア人はアメリカが好き
らしいです。どのように好きなのか、どの程度好きなのかについてはまだ不明ですが、わかり次第、ザグッとレポートします。

彼らは英語も好きです。学校で勉強するのに、話せる人が少ないというのは日本と似たような状況です。地下鉄の中では「英語を話せるようになってチャンスをつかめ! チミの人生を変えよう!」 なんていう宣伝を見かけます。私も先日、体験しました。親しくない人に対してする salve! (サルベ:こんにちは!)という挨拶があるのですが、イタリア語の L の発音が難しく、どうしても英語のようにしてしまうんですね。それを聞いていたイタリア人の友達が 「英語みたいで格好いいじゃん!」 と言ったのです。

それではまた!

投稿者 店主 : 2008年02月10日 06:43

powerくん、おひさし出世魚です。
イタリアと違ひ、powerくんの去つたここ日本では空前の「おひさし出世魚」ブームとなつてをります(といふのはウソです)。やはりこれは日本に居た頃にpowerくんの行つた熱心な宣伝活動の賜物だと、我々「おひさし出世魚協会・日本支部」の人間も喜んでをります(といふのはウソです)。ここは是非ともイタリアでも大いに「おひさし出世魚」を流行らし、「春菊とおひさし出世魚のパスタ」なんかをpowerくんに作つて貰ひたい、と私は切に思つてをります(といふのはホントだよ〜ん)。

さて、どこの国だらうが、軽薄で思慮が足りなく、すぐに外国にかぶれるのは若者の特徴です。イタリアでもアメリカかぶれで「マザファッキンクレイジーメ〜ン、チャーチ!」とか言つてゐるバカ者、いや、若者が多い事でせう。(私も訳が分からず「チャーチ!」とか叫んでゐますが、何なんでせうね、あれ)しかし、そのうちアメリカに代はつて中国が台頭してくる様なので、イタリアでも「ピッツァマルゲリータイーガ!」と注文する若者が現れる事でせう。そのビビッドな激動の有様を、powerくんには是非ともレポートして貰ひたい!

待つてまーす!

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