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2007年06月26日(Tue)

『アポカリプト』について 映画

 ババさんと、映画『アポカリプト』について話し合ひました。

「いやー、最高に面白かつたですね! メル・ギブソン最高!」

 ええ、確かにアクション映画としては秀逸ですよね。ツボを押さへまくつてゐる、といふか。でも、マヤ文明の歴史や風俗をメチャメチャに歪めてゐる、といふ非難もあるんですよね。なんでまた、メル・ギブソンはそんな事をしたんでせう。

「うーん、メル・ギブソンは妄想爆発の人ですからねー。妄想力でせう。それに、一応メル・ギブソンもマヤ文明の研究成果に沿つて描いてゐるらしいですよ。ま、その研究はかなりの異端らしいですが」

 ええー! さうなんですか! …でも、かなりスタンダードのマヤ観とは違ふんぢやないですか?

「むむむ、さうですよねー。でも、学問の世界も色々だから。我々素人はよく分からないですよ」

 それはさうなんですが…。それなら、時代とかも変ぢやないんですか? 主役のジャガーズ・ポウたち裸族時代は紀元前。ピラミッドが林立してマヤ文明が高度に栄へたのは紀元後8〜10世紀。スペイン人たちが来襲したのが15世紀。と、いふのがスタンダードな南米史だと思ふんですが、これらが全て一緒の時代、といふ研究がホントにあるんですか?

「うう〜ん、いやー、それはよく分かりません! …でも、でも、ボクはねー、その点に関しては違ふ考へを持つてゐるんです」

ほう、どんな考へですか? 

「う〜ん、この映画はねー、始終ジャガーズ・ポウの視点で描かれてゐるぢやないですか。だから、マヤの腐敗した都も、スペイン人の来襲も、全てジャガーズ・ポウの幻覚なんですよ」

 おお、なるほど!

「えー、だから強引に時代を設定するなら、この映画は紀元前、裸族の時代の映画。そして、これはジャガーズ・ポウのイニシエーションの映画なんです。子供が、死の淵に臨む様な壮絶な体験を経て、最後は無事に帰還して大人になる、といふイニシエーションの映画なんです。だからジャガーズ・ポウの体験した事は全て、それらを象徴的に描いてゐるんです。ジャガーズ・ポウは、死の淵に臨んだこれらの期間に、自分たちの時代からスペイン人の来襲(南米文明の滅亡)までを、一瞬のうちに幻覚したんですよ。多少史実と違ふのは、これがジャガーズ・ポウの予言的幻覚だからです」

 なるほどー! それは卓見です。私も、最後のスペイン人の来襲が、あまりに幻想的、あまりに禍々しく描かれてゐるから変だとは思つてゐたんです。なるほど、さういふ解釈なら納得できますねー。でも、メル・ギブソンはよくそんな映画を撮りましたね。だつて、彼はカソリック原理主義でせう。こんな、明らかにカソリック(スペイン人)を“禍々しきもの”の象徴として描くなんて。

「だから、そこがメル・ギブソンの天才なんです。自分の作らうと意図した以上のものを結果として作つてしまふといふ。ま、本人は自らの妄想に忠実に作つただけだとは思ひますが。」

 やはり作品の価値を決めるのは妄想力ですね!

「さういふ事です! メル・ギブソン最高!」

 …しかし、ババさん、せつかくそんな卓見を持つてゐるんですから、是非レビューに書いて下さいよ。

「ん? いや、はははははは!」

 お忙しいとは思ひますが、ババさんのレビューを待つてる人も多いはずですよ。

「わはははははははは!」

 いや、マジなんですけどー。

Comments

投稿者 baba : 2007年07月10日 17:09

>多少史実と違ふのは、これがジャガーズ・ポウの予言的幻覚だからです

なるほどーーーー!!

…私の適当な思いつきをうまくまとめていただき、ありがとうございます…。

そのうちレビュー書きます!

投稿者 店主 : 2007年07月12日 05:14

>そのうちレビュー書きます!

期待してます!

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