ロンサム・ジョージ [音楽, 雑誌, 憂国]
雑誌『Newton』の6月号を読みました。
今号の特集は『天文学11の革命』と言つて、人類の宇宙観を変へた画期的な映像写真を11枚載せて、解説してゐます。これももちろん、面白かつたのですが、私は傍系の他の記事の方に興味をひかれました。
ニュートンプレス (2007/04/26)
まづは『ガラパゴスの今』。ガラパゴス諸島はダーウィンの進化論を生んだ島として有名ですが、世界最大の陸ガメであるガラパゴスゾウガメやダーウィンフィンチなど、他の所では見られない固有の生物種がたくさん生息し、独自の生態系を保つてゐる場所です。それ故、環境保護のシンボル的存在とみなされ、ユネスコの世界自然遺産第1号に選ばれたのですが、皮肉なことにそれ以降、観光客が激増し、それを相手に商売する人たちが大量に移つてきたため、激甚な環境破壊が進行してゐる、といふのです。
無分別に何でも焼却するゴミ捨て場が24時間休みなく煙をあげ、生活汚水はそのまま近海に流れ込み、かつてはそのまま飲めた地下水も汚染されて、今やミネラルウォーターを空輸するざまだとか。なにより深刻なのは、人間とともに持ち込まれた犬、猫、ネズミやヤギなどが生態系を壊してゐること。動物だけでなく、植物も外来種が800種を超え、ガラパゴスがガラパゴスである所以である、固有・独自・豊富な生態系、が失はれてきてゐる事です。
熊野に行つた時に、「世界遺産」と刻まれた巨大な碑が建てられてゐるのを見ても思つた事ですが、「世界遺産」などと名付けられたら碌な事はありませんね。
ところでみなさんは“ロンサムジョージ”を御存知でせうか。ロンサムジョージはガラパゴスゾウガメです。ガラパゴスゾウガメは15種類ほどゐるらしいのですが、その中の1種で(ピンタ島固有の亜種)、なんとその種としては最後の一匹になるのがロンサムジョージなのです。つまりロンサムジョージが死ねば、その種は滅びてしまふのです。…といふ事で、世界中に密かなファンを持つロンサムジョージ。日本のモッドバンド“ザ・コレクターズ”の加藤ひさしもファンのひとりで、『ザ・バラッド・オブ・ロンサム・ジョージ』といふ歌を作つてゐます(アルバム『CANDYMAN』収録)。
コロムビアミュージックエンタテインメント (2004/07/21)
売り上げランキング: 89043
そんなロンサムジョージに朗報らしきニュースが。どうやらかなり近い近縁種(遺伝子の半分が同じ)がピンタ島近くのイザベラ島でみつかつた様で、うまく行けば絶滅を免れるかも、といふ事らしいです。どういふ事かと言ひますと、つまりはこの発見された種はロンサムジョージと同じ種のゾウガメと、イザベラ島のゾウガメの間の子な訳で、イザベラ島をもつとよく探せば、ロンサムジョージと同じ種(同じ遺伝子を持つたゾウガメ)がみつかるかもしれない。さうなれば繁殖計画もできるし、この種を絶滅から救ふこともできる、といふ事なのです。
果たしてロンサムジョージ(ひとりぼッちのジョージ)に仲間は居るのか? この研究を進めてゐるエール大学の人たちには頑張つてほしいものです。
ロンサムジョージ。…ジョージと言へばボーイ・ジョージがまた捕まりましたね。今度は28歳の男性を監禁・暴行した容疑だとか。うーむ、ドゥーユーリアリーウォナハートミー? て、感じなのかな。…え? 今最もホットなジョージなら、“ジョージ、シンゾー”のコンビだッて? ああ、ブッシュと安倍総理がさう呼び合ふ事にしたとかいふ話ね。…白々しい! もの凄く険悪な雰囲気だつたくせに! 嘘ばつかり言つてるんぢやねーよ!!! ……ッて、あ、い、いや、そのー、なんだか話がそれましたが、えー、その他にも今号の『Newton』には、なぜ接着剤はくッつくのか、といふ記事がありまして、その答へは……“わからない”ださうです! ワンダフル!
いや、一応“機械的な結合(物質表面の凸凹に入り込み錨の様な働きをする)”“物理的な相互作用(分子間力によつて引き合ふ)”“化学的な相互作用(化学結合で結びつく)”の三つが複雑に絡み合つて接着してゐるのでは、と考へられてゐる様ですが、詳しいメカニズムは謎、らしいのです。
う〜む、何年か前に流行つた、飛行機がなぜ飛ぶのかは実は分かつてゐない、といふ話を思ひ出しますね。
科学は“分からない”ことも面白いから不思議です。
Comments
コメントしてください