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2016年03月04日(Fri)

BL/同級生 etc

2月25日~3月3日

BL
昨年末、劇場アニメ『ハイ★スピード!』を巡って、“BL問題”がオパール周りで起こった。これは、また例によって私とトモコが、映画『ハイ★スピード!』及びテレビシリーズ『Free!』をみんなに薦めまくってゐたら、一部の人たちから「自分はBLはちょっと・・・」とか「こんな腐女子向けの作品はどうも・・・」といふ意見が出され、それに対して私が「ええー!『Free!』は別にBLぢゃないだらうー、(腐女子の人が喜ぶ要素があるとはいへ)腐女子向けぢゃないだらうー」となって、議論が紛糾した、といふものです。

しかし・・・考へてみれば、私は今のBL(ボーイズラブ)を知らない。といふか、私も若い時は“男の子同士の恋愛の話”って奴を、マンガでも映画でも小説でもよく楽しんでゐましたが(だって80年代って流行ってたからね、さういふの)、でもその頃は“BL”などといふ言葉はなかった。なんて言はれてゐたかなぁ・・・“少年愛”かなぁ。“耽美派”とか。
あと“腐女子”といふ言葉もなかった。こちらは、多分“やおい”と言はれてゐたものと同じでせう。“多分”と保留をつけたのは、言葉が変はると、その意味内容も変はってゐる可能性があるからで、つまり、“BL”といふものも、私の知ってゐる所謂“少年愛もの”と微妙に、或はかなり違ふものかもしれない。
・・・と、いふ訳で、今の“BL”と呼ばれてゐるものを、チラリと覗いてみました。マンガ対象で。

・・・な、なんだ、これは。これって・・・ポルノやん。いや、そのジャンルを知るにはやっぱ雑誌をみるのが早いかな、と思って、『アラン』や『JUNE』を探したんだけど、すでにないようで、代はりに『BE BOY』っていふヒップホップ雑誌みたいな名前の奴が大量に出て来たんで読んでみたんだけど・・・ポルノ満載。なんか、これ同人誌?分厚いけど。
つーか、“BL”ってどうも同人誌文化から産まれたジャンルらしく、BL作家のほとんどが同人誌出身っぽい。つまり、彼・彼女らは“マンガ家”といふより“BL作家”って感じなのです。うーむ、そら私の知ってゐるのとは違ふわ。私の読んでたのは竹宮恵子や萩尾望都や山岸涼子とかだし。
私は、“少年愛もの”ってか“男同士の恋愛を描いたもの”は、男女間の恋愛では描けない別種の精神性、形而上的関係性、を描くものだと思ってゐました。それがなんでこんな形而下的な肉欲まみれに成り果ててゐるのか・・・って、たまたま私の読んだ雑誌が悪いのか。「BE BOY」ってBL界のポルノ雑誌なのか。それとも、BLはポルノがデフォなのか。いやいやいや、こんなんではなく、昔の“精神性”や“形而上的関係性”を描いてゐたマンガの衣鉢を継ぐ流れもあるはずだ。ないと困るよー・・・と探してゐたら、ありました。
それが、中村明日美子の「同級生」シリーズです。

同級生
中村明日美子は、幾原邦彦関連でその名前と画風は知ってゐました。BL作家らしい、といふ事も。その彼女の代表作・・・になるのかな?まぁ、そこらは俄なんでよく分かりませんが、「同級生」シリーズ。どうも劇場アニメ化もするらしいので、読んでみたのです。
・・・こ、こ、これだー!ポルノではない、“精神性”と“形而上学的関係性”を描いた作品。しかも、しっかり進化してゐる。
私が読んでゐた頃のものって、男同士の恋愛を描く事すら新しく困難な事であったのか、舞台が異国だったり、時代が古代だったりしたのです。その上、ストーリーは波瀾万丈でドラマティック。要するに、非日常性が強かったんですね。でも、「同級生」は現代の日本の男子高校生の話。ストーリーも、どってことない日常。その中で、二人の男の子が、少しづつお互ひの距離を確かめ、それを詰めていく・・・これが、いい!

こら是非とも、と、映画の「同級生」も観てきました。
・・・か、完璧。俄ファンの私が言ふのも何ですが、これは考へられうる最高に理想的なアニメ化ではないでせうか。作画、声優、音楽、演出・・・どれも「ぱーふぇくつ」。
監督が中村章子、といふ人で、どうやら「蟲師」に関はってきた人らしい。それでなのか、音の使ひ方がもの凄く印象的な作品でした。虫の騒ぐ声、風のさやぎ、ペットボトルの蓋を外す音、炭酸の泡の弾け、噴水の水の音・・・。押尾コータローによる劇伴もばっちり映画に合ってゐます。
そしてなにより、私は草壁の声をやった神谷浩史の神演技に驚嘆しました。いや、神谷浩史が凄いのは前々から分かってゐた事ですが、最近はちょっと馴れてしまって「あー、神谷浩史ねー、相変はらずねー」ってな感じになってゐたのです。それが・・・久々にやられた。これは凄いわ。特に、草壁が佐条に(正式に)交際を申し込む所なんて・・・こっちが息を飲んだわ。
(ところで映画終了後、私の周りの女子からは、ってか周りには女子しか居ないのですが、「ノジケン可愛かったー!」といふ声が方々からあがったのです。ノジケン、といふのは草壁の相手役の佐条の声をやった声優さんですが・・・さうなのか?ま、ノジケンも良かったけど、やっぱ神谷浩史ぢゃないの?と私なんかは思ふのですが、オークションとか見ても、草壁グッズより佐条グッズの方が高いんだよねー。うーむ。私は断然、草壁派だけど。腐女子の方々とは趣味が合はん)

僅か60分と短い映画ですが、もの凄く充実した60分。これ、以降も「卒業生」とかあるんだし、順次アニメ化していってほしい。あと、もう少し男性客が増えてもいいと思ふんだけど・・・。

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