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2015年05月20日(Wed)

裏面/ドールズ/コレクション etc

5月11日〜5月18日

裏面

先日行った「魔女の秘密展」があまりに下らなかった・・・といふ話は前回しましたが、かといって興味深いものがなかった訳ではない。個人的には、クビーンの絵が何枚かあったのが嬉しかった。ドイツ表現主義の画家アルフレート・クビーン。映画「カリガリ博士」の舞台セットを作った事で一般には有名ですね。夢幻的で魅力的な絵です。いや、別にそれほどクビーン好きとかいふ訳ではないんですが、先頃クビーンの小説「裏面」が約40年振りに復刊されまして、ちゃうどそれを購入したばっかりだったので、なんとなく因縁を感じて面白かった、といふ訳なのです。といふ訳で、早速「裏面」を読んでみました。

主人公はクビーン自身を思はせる画家。その主人公の学生時代の友人であるパテラが、ある切っ掛けから巨万の富を手に入れ、それを使って自分の理想とする“夢の国”を建設。自らが厳選した人のみを呼び寄せてその国に住まはせてゐたのだけれど、そこに主人公も呼ばれる。そこでの生活、最終的には崩壊に至るまでの生活が描かれる。・・・といった感じのお話で、予想される様に、夢幻的で幻想的、怪奇で陰鬱で奇想天外。正に「カリガリ博士」や「ノスフェラトゥ」などのドイツ表現主義映画を連想させる雰囲気の中で小説は進行していきます。人々の生活が乱れ、動物たちが氾濫し、眠り病が蔓延し、建物が崩壊し、みんな次々と狂気に駆られていく・・・といふ夢の国崩壊のシーンも凄いのですけれど、それ以前の、まだ平穏な頃の夢の国もなんか凄い。日が差す事が絶対にないどんよりとした天気、新しいもの厳禁な故に古びた建物や生活道具、古くさい服装、ころころ変はる規則、カフカの世界の様な官僚組織、騙し合ふ人々、秘密や陰謀が蔓延してゐるかの様な雰囲気、夢の国に君臨するパテラの魔術性・・・など、これの一体どこが夢の国なのか?いや、これこそ正に夢の国、悪夢の国なのかー!と、圧倒される描写の連続です。
今回の復刊には、クビーン自身の挿絵が入ってゐて、それがまた夢幻的な雰囲気を盛り上げます。さう、ドイツ表現主義的な雰囲気なのですが、実は最後の最後に至って、私が思ふに結構アニメ的な展開をするのです。いや、これをアニメ的といへば怒られるかもしれませんが、少なくとも私の頭の中では、ドイツ表現主義から一変して、アニメの画像がドバーと展開しました。うーむ、アニメの観過ぎか・・・。

カリフォルニア・ドールズ

今月の梅本座はロバート・アルドリッチの遺作「カリフォルニア・ドールズ」。この作品もカルト映画とされる一本ですが、以前梅本座でやった、同じくアルドリッチの「キッスで殺せ」と違ひ、単に権利の関係からDVD化がなされず、観たくてもなかなか観られない・・・といふ状況が産んだ“カルト”なので、やっとDVD化されたのは嬉しい。私も前々から観たいなーと思ってゐたので、早速長年の餓ゑを癒すことにしたのです。

お話は単純。カリフォルニア・ドールズといふ名の女子プロレスチームが、マネージャー(ピーター・フォーク)と3人で全米をどさ回りしながら、最後にタイトルを穫るまでを描いた作品。私はプロレスには全く興味はないのですが、この映画は滅法面白かったです。試合のシーンもむろん良いのですが、ボロ車で安モーテルを転々とする、そのどさ回りの日常もまた興味深かった。そこに刻み込まれた、雑多で猥雑でダルな70年代的空気(映画は81年の作品なのですが)。これは今の映画にはあまりないもので、最近ではPTAの「インヒアレントヴァイス」がこれに挑戦してある程度成功してゐましたが、なんか「映画を観た!!」といふ満足感がある。視覚的、といふより触覚的な感覚、空気感。かういったものが、今の映画には欠けてゐるのかもなぁー、とか思った次第です。
別にアルドリッチの遺作だからといふ訳でもないでせうが、最後はタイトルを穫ってハッピーエンド・・・のはずなのに、なんとなく一抹の寂しさが漂ってゐるのが、また70年代的でよい。
このDVD化を機に、みんなに広く観られればよいなー、と思ひました。

コレクション

先日、ヤゲオコレクション展について書いた時に、美術館なんて近代になってできた制度だし、コレクションは個人コレクションが王道だらうー、個人コレクションの方がおもろいよー、てな事を書き飛ばした訳なんですが、しばらくたってから、あれ?本当にさうなのかな?そんなに昔から個人コレクションってあったのかな?などと疑問が沸いてきて、ちょっと調べてみる事にしました。
といっても、自分の乏しい蔵書を探る程度の事しかやってませんが、本棚の隅に未読の本を発見。「コレクション」クシシトフ・ポミアン(平凡社)。古本屋で3800円で買っとるな・・・などといふ事はどうでもよく、この本を読んでみると、やはり少々自分の理解は雑であった事が判明しました。
この本によると、公共博物館には四つのタイプがあって、それぞれ伝統的・革命的・恩恵者的・商業的に分けられるらしい。
伝統的とは、貴族や王家、教会などが昔から集めてきたコレクションを元に形成されたもの。まぁ、これが一番古いタイプのコレクションだよね。ウフィツィやエルミタージュなど。
革命的とは、革命政府が色んな所から没収して作ったコレクションを元にしたもの。ルーブルやプラドね。
恩恵者的とは、これこそ個人コレクションを元にしたもので、アメリカはほとんどこれらしい。あと、ヴェネチアも。
商業的とは、なんらかの組織が色んな所から買ひ上げて作られたコレクションを元にしたもの。大英博物館が代表例。

つー訳で、やっぱ一番古いのは、王家や教会が集団で形成したコレクションであった。個人コレクションはその後。ううむ。が、しかし、この本にも書いてあるけど、やっぱ集団のコレクションは保守的になりがちで、新しい・革新的なコレクションは常に個人コレクションであったのも事実。なので、私の言ってゐた事もあながち間違ひではないだらう。まぁ、良かったー。
それはともかく、この本にはコレクションについて興味深い事が満載してゐる。もっと早く読んでおくべきだったー、と呟いたのでした。

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