7月1日〜7月8日 [etc]
失はれた時を求めて
プルーストの「失はれた時を求めて」第一篇“スワン家の方へ”の第一章「コンブレー」を読みました。実はこの「コンブレー」は、学生時代に井上究一郎訳のちくま文庫版を読んだ事があるのですが、その時は半分ほど読んで止めてしまったのです。別に面白くなかった訳ではないのですが、この本はまだ自分には早い、なんか十分楽しめてない様な気がする・・・と思ひ、他に読みたい本などいくらでもあったので、後年のお楽しみ、とお預けしてしまった、と。で、20年以上の月日が経過し(あっといふ間だったな)、高遠弘美訳の光文社文庫版が出始めたのを機に、そろそろ機は熟したか、と思ひ、読んでみたといふ訳です(と言っても、買ってから読み始めるのに数年かかった)。やはり、機は熟してゐました。猛烈に面白いです!
この「コンブレー」は、主人公の子供時代が追憶の中で描かれます。大人の眼からみれば他愛もない、下らないものだけれど、子供にとっては切実な想ひ、それ故の愚行が美しく描かれてゐて、ところどころで息が詰まりさうになります。人生に於いて大切なものは子供時代に全て(すでに)ある、といふのは本当ではないだらうか、と思へてくる。実は私、子供時代の事はほとんど何も覚えてなくて・・・幼年時健忘といふらしいですが、最初にフロイトの理論を知った時、私は幼年時代に何かどえらい事をしでかしたのではないだらうか、それ故に記憶を抑圧してるとか?あるひは何かトラウマが?と悩んだものですが、色々調べてゐるうちに、フロイトの抑圧理論は科学的に破綻してる事がわかり、ホッとしました。幼年時健忘は、幼年時には記憶のシステムがまだ未発達な故に起こるらしい。つまりは程度の差こそあれ、誰にだってある事なのです。
となれば、我々はみな、幼年時の記憶を再発見・再創造するべきなのではないでせうか。そこに、大切なものがあるのなら。マルセイユタロットにおいて、過去カードをひく様なものです。この「コンブレー」は、そのよすがとなります。幼年時の切実な想ひを、この本の主人公とともに生きる/生き直すこと。その事によって、我々はそれぞれのコンブレーを再発見できるでせう。
別に、マドレーヌ入りの紅茶が必ずしも必要な訳ではないですよ。
キッスで殺せ
第三回梅本座は、カルトクラシックの代表的な一本、ロバート・アルドリッチの「キッスで殺せ」でした。参加者全員初見。デビット・リンチが「ロストハイウェイ」で引用した、カッコ良過ぎるオープニングに、期待が高まります。しかし、話が進むにつれ、ん?と思ふ所がポツポツと・・・。ラストは、ある意味もの凄くビックリする展開で、私的には大満足。スクリーンをあげ、座長から届けられたワインのボトルを開けて、みなで映画の感想を語り合ひました。
「あれって、なんやったん?」「あの人とあの人の関係は・・・」「あそこはなんでああなったの?」「結局、どういふ事なん?」・・・・。
やはり、みんなストーリーの各所に疑問点がつきまとった様です。
家に帰って調べてみると、この作品は「三つ数へろ」と並んで、ストーリーのよくわからない名作、だとか。うーむ、なるほど。確かに、ストーリーなんてそれほど重要ではない。映画は、カッコいい映像と音楽、後はハッとさせられるイマージュがあれば、それでいいとは私も思ひます。この映画は、それらを満たしてゐる。
にしても、マイク・ハマーって乱暴だな。
シネマ歌舞伎
初めて“シネマ歌舞伎”なるものを観ました。京都MOVIX で。作品は、「天守物語」。はっきり言って、歌舞伎役者でアップに耐えられる人なんて何人ゐるの?と疑問であった私はシネマ歌舞伎には興味が持てなかったのですが、玉三郎なら、問題ない。しかも、相手役は海老蔵だ。これなら大丈夫だらう、と観に行った訳です。
うう〜む・・・視点がコロコロ変はる、といふのに強烈な違和感。舞台を観る醍醐味は、好き勝手に色んな所を観られる、といふ所にもありますので、視点を強制される、といふのがなんとも気持ち悪い。これなら視点固定で舞台全体を撮った方がいいんぢゃないか、とも思ったのですが、それではあまりに藝がないのでせう。難しい所です。
「天守物語」は話も面白く、玉三郎がやっぱいいので、楽しめたのは楽しめました。でも、やはり最後まで違和感が・・・。ううーむ、やっぱ舞台がみたいなぁ、歌舞伎、値段があがったし、私自身も最近の財政が苦しいので、もう長く観に行ってないのですが、こんなものを見せられると、やはり本物の舞台が観たくて・・・。は!それが狙ひかー!!
痛T
アニメの絵が全面に描かれたクルマ、通称“痛車”ってありますよね。あれ、カッコいいと思ふんですよねー。あれこそヒップホップ感に溢れてゐる。日本人がアメリカの黒人のマネしてレクサスとかに乗っても、ちっともカッコ良くない。乗るなら、痛車でせう?とか思ふんだけど。
それはともかく、私はクルマには乗らないので、せめてTシャツでも着ようかと・・・痛Tね。とはいへ、別に受け狙ひで着る訳ぢゃないので、単に痛いだけのTシャツではなく、痛くて、且つカッコいい奴が欲しい・・・と思ってたんだけど、これがなかなかない。うーん、と探してゐて、やっと見つけました!「まどマギ」のマミT。ほむらちゃんぢゃなくて、敢てマミさん、といふ所もいいし、アメコミ風のデザインもいい。これなら、と早速購入して、嬉しがって店に着ていきました。ところが・・・。
常連の方々は次々とやってくるのですが、みな何も言ひません。ジッと私の胸元を見つめてゐるので、気がついてゐるのは間違ひないのですが、何も言はない。
たうたうしびれを切らして、私はマツヤマさんに言ひました。これ、マミさんですよー、と。すると、
「痛すぎてノーコメントだよ!」
と一蹴されてしまひました。・・・
うーん、そこが、いいと思ふんだけど・・・。
速報
7月13日の日曜日に、渋谷はアップリンクでホドロフスキーの「リアリティーのダンス」の上映会があり、その後、トモコによるトークショーがあります。ホドロフスキーのタロットとサイコマジックの解説、及び映画に鏤められたタロットの象徴の読み解きを行ひます。他にできる人が居ないので、是非に・・・と頼まれて東京まで行く訳ですが、他の日のトークショーが柳下毅一郎や滝本誠、中原昌也や原正人など、有名人ばかりの中、いきなり“カフェ・オパールの小川トモコ”って・・・一体誰やねん!って事になってる様な・・・。おヒマな方、是非応援に駆けつけて下さい。トークの内容は絶対的に面白いですよ!
» 映画『リアリティのダンス』上映&トーク:【ゲスト】小川トモコ – ホドロフスキーのタロットとサイコマジック - イベント | UPLINK
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