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2014年04月28日(Mon)

『リアリティのダンス』プレミア上映会 映画

4月22日火曜日18時半より、アレハンドロ・ホドロフスキー監督の新作「リアリティのダンス」のプレミア上映会(公開タロットリーディングつき!)が、東京新橋ヤクルトホールにてあり、私とトモコは京都から駆けつけました。整理券の番号が早かったので2列目ほぼ中央での鑑賞。(ちなみに1列目は全てマスコミ席。とはいへ来てゐるのは数名のみ。その数名も、映画上映中は爆睡してゐた様な・・・。残りの人は、映画が終はってからワヤワヤ入ってきました)
以下はその晩の記録です。

リアリティのダンス

まづはホドロフスキー23年ぶりの新作映画「リアリティーのダンス」のプレミア上映です。何が“プレミア”なのかと云ひますと、正式公開に先立っての上映であるといふこと、監督本人が来ること、それと完全無修正での上映といふことです。正式なロードショーに於いては、映倫の関係で、修正(ボカシ)あり&R指定附きでの上映となるのです。
まぁ、映画はなんだって修正なしで観るのが良い訳ですが、特にホドロフスキーの映画は無修正が望ましい。なぜなら、彼の映画はアート=魔法としての映画だからです。

今回の映画は、今までの彼の過去の4作品(彼が自分の作品と認めたもの)とはまた違ったスタイルの作品です。アートへの荒々しい意志をそのまま封じ込めたかの様な「ファンドとリス」。超人思想&超越への憧れと懐疑を一体として表現した「エル・トポ」と「ホーリーマウンテン」。“赦し”“癒し”といふテーマが迫り上がってきた「サンタ・サングレ」。・・・彼の歩みは、超越への激しい想ひに突き動かされて自己鍛錬&修行を重ね、悟りの一歩手前まで行ったんだけどそこで踏みとどまり、衆生を救ふために現世に戻ってきた菩薩の様な感じですが、その現在形として彼が取り組んでゐるのがタロットリーディングとサイコマジックです。彼は無料でタロットリーディングとサイコマジックを行ひ、無数の人々を救ってゐるのです。で、今回の作品は、サイコマジックとしての映画、とでも言へる様な作品でした。
自伝的内容の作品といふ前宣伝でしたので、そして前半は同題の自伝本とほぼ似た様なストーリーが展開しますので、割と「ふーん」てな感じで観てたのですが、後半に入るとどんどん自伝本の内容から逸脱していき、主人公が少年ホドロフスキーからその父ハイメに変はり、彼の死と再生の物語へと怒濤の展開を遂げます。圧倒的です。私は大いに感動しました。父ハイメの再生とは、家族の再生でもあり、それはまた我々観客の再生であり、人類の再生でもあるのです。いや、あるべきなのです。さういった映画なのです。是非、劇場で観ることをオススメします。

ホドロフスキーインタビュー

映画終了後、ホドロフスキー本人が登場しました。全身白のスーツ!白髪から靴の先まで真っ白!か、かっこよすぎー。そして彼は言ひました。
「私はあなた方のためにこの映画を作ったのではない。自分のために作った。みなさんはそれぞれ自由に勝手にこの映画のことを受け取ってくれたらいい。だから私はこの映画について喋ることはしません。実は30分ほど前にタロットリーディングを公開でやってほしいと頼まれたので、それをやってみたいと思ふ。ではタロットの用意を。(←大意です)」
か、かっこえー!私は震へました。ところが・・・司会者の人がそれを聞いて慌てて、ストップ、ストップ!そんな訳にもいかないので是非質問に答へて下さい!と言ったのです。
「それは映画についての質問なのか?」とホドロフスキー。
「もちろんです」と司会者。
・・・な、なんぢゃそりゃー。私はずっこけました。ホドロフスキーがせっかく見事な捌きをみせたのに、あまりに官僚的すぎる。もっと臨機応変にできんもんなのか・・・。ホドロフスキーも憮然としてゐました。
とはいへ、質問に答へるホドロフスキーは素敵でした。喋ってゐるうちにどんどん熱くなってきて、顔を真っ赤にして、激しい手振りで畳み掛けるスペイン語は、むろん私はスペイン語なんて全く分かりませんが、なぜか真っすぐ心に入ってくる感じでした。か、かっけー。

タロットリーディング

さて、待望の公開タロットリーディングです。・・・いや、タロットリーディング自体は素晴らしかった。素晴らし過ぎたのですが・・・。こんな事は言ひたくない。とはいへ、あまりに周りが酷い!はっきり言って主催者側が酷い。酷過ぎる。
タロットリーディングは“占ひ”ではないんです。いや、世間にはタロットで占ひをしてゐる方も大勢居るのは承知してゐます。が、ホドロフスキーのやってゐる、マルセイユタロットを使ったタロットリーディングは、“占ひ”ではありません。そんなこと、ホドロフスキーのファンなら当然知ってゐるべきこと。なぜなら、ホドロフスキーは著書でも、インタビューでも、映画のコメンタリーでも、何度も何度も、そのことを繰り返してゐるからです。
未来は決まってゐない、だから未来など分からない。未来が分かるとか言ってる占い師どもは、みんな詐欺師かペテン師だ!と。
しかも、今回もタロットリーディングを始める前に、そのことをちゃんと言ひました。「タロットで未来はわかりません、現在のことが分かるのです」と。それなのに!
主催者側が、完全にホドロフスキーを占ひ師扱ひ。リーディングをして欲しい、といふ希望者たちも占ひのつもり。ホドロフスキーが何度もイライラして「未来のことは分からないと言ってるだろ。現在の悩みを言ひなさい」と言ってるのに、「資格試験に通るでしょうか?」みたいな事を質問して・・・。
4人の希望者のうち、3人までをホドロフスキーは追ひ返さうとしました。そのうち一人は完全に追ひ返され、残りの二人は強引にリーディングを受け、まともなのは最後の一人だけ。その最後の一人も、司会者が「もう時間がないので・・・」と止めさせようとするのを、「いや、あと一人だけ」と強く押し切って舞台にあげたのです。そらさうだ、それまで一人もまともな相談者が居なかったんだもの。最後の一人がちゃんと分かってる人で良かったー。
ちなみに最後の人の相談内容は「ここ数年来、首の後ろが痛くて、何をしても治らなくて困ってゐる」といふもの。うん、さうだよ、これこそ“現在の悩み”だよ。
ホドロフスキーは彼に幾つか質問をし、カードをひかせ、そこから彼の首の痛みとなってゐる原因、つまり彼の心の問題点をさぐっていきます(蛇足ながら付け加へますと、何をしても治らない痛み、といふのは身体的な問題より、心理的な問題であることの方が多いのです)。
カードの象徴を読み、それに対する彼の反応をみて、彼の無意識を読んでいくホドロフスキー。そして、彼の痛みの原因は、彼を置いてペルーに行ってしまった母親に対する愛憎、彼と母親の間に立つ姉に対する怖れと怒り、にあると判定、兄弟間の確執を解消し(その時に、妹が彼の助けになると示唆)、母親に会いにいけばその痛みは消えるだらう、と助言しました。
ついでに会場からスペイン語を喋られる女性を探し出し、彼女に痛む首の部分に向かってスペイン語で子守唄を歌はせ(彼の母国語はスペイン語なのです)、その間、彼に母親に対しての想ひをぶちまけさせました。おお、サイコマジック!
短い時間で、無知と無理解に取り巻かれた決して良いとはいへない環境でしたが、それでもホドロフスキーのリーディングは圧巻でした。マルセイユタロットをやってゐるトモコは猛烈に感動してゐましたが、端でトモコのリーディングを見てゐる程度の理解しかない私にも、ホドロフスキーのリーディングの凄さは伝はってきました。あれは厖大な実力に裏打ちされた技です。もしかしたら会場の大部分の人にとっては、単に毛色の変はった面白可笑しいパフォーマンスに映ったかもしれませんが、そこではもの凄く高度な技術による啓示が行はれてゐたと思ひます。
ホドロフスキーのリーディングが見られて、ホントに良かった。

終演後

実はトモコのタロットの先生もこの会場に来てゐたのです。で、終演後は3人でご飯を食べに行きました。先生(昔、フランスでホドロフスキーのサイコマジックを見てゐる)とトモコは、二人でホドロフスキーのリーディングについて、猛烈に熱く語り合ってゐました。私は専門的な事は分からないので、先生による易しく噛み砕いたリーディングの解説を聞きながら、余韻に浸ってをりました。
我々にとって、4月22日は特別な夜となった感じです。

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