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2013年04月23日(Tue)

理由 文楽

先日、文楽の春の公演の昼の部を観に行ったのですが、「伽羅先代萩」の床下の段で、煙が立ち籠める中、勘解由(←悪人ね)がドロドロと舞台下から現れる・・・といふ所で、どうも舞台装置が故障したらしく、大夫がワハハハハと(勘解由の笑ひを)笑ひ、太鼓がドロドロと鳴り続く中、一向に勘解由が上がってこない。頭だけチョコッと出た状態で、ジーッとしてゐる。
ワァハッハッハッハ〜ドロドロドロ〜ハッハッハ〜ドロドロドロ・・・。
そのうち煙も晴れ、大夫も黙り込み、太鼓も鳴り止み、演者・観客全員の視線が勘解由の頭に集中する中、舞台裏から「あげて!あげて!はやく!」「あがりません!」といふ怒鳴り声も漏れ聞こえてきて、緊迫度は高まる一方。永劫かと思はれる静粛が続いた後、やおら大夫が一声を発し、チョンチョンと拍子木が鳴って、幕がサーッと引かれたのでした。

まぁ、かういったトラブルはそれはそれで楽しい。それはともかくとして、昼の部は私の好きな呂勢大夫&清治コンビに、鶴澤寛治、蓑助もまぁ、割と元気さうだったし、なにより住大夫が前回よりは元気さうだったので(それでも衰へはやっぱ激しいけれど)、とても楽しめ、大満足で劇場を後にしました。

梅田に着いて、どっかで珈琲を飲んで休みたい・・・となって、でもどこに行かう?と悩むのも面倒くさい、と思ってゐたら、目の前に阪急17番街。トモコが、ここなら人も少ないだらうし、昔ながらの喫茶店があっていいんぢゃない、といふので、エレベーターであがって、「西班牙喫茶 伊達」といふ所に行きました。

割と混んでゐる。昔ながらの喫茶店で、なかなか感じがよい。う〜む、まぁ、内装が、これ、なんとなく西班牙な感じはするし、故に西班牙喫茶なのだらう。しかし、「伊達」とは? 何故、「伊達」といふ名前なのだらうか。カッコいい、といふ意味なのだらうか。それとも、伊達さんが始めたのだらうか。この店が「伊達」といふ名前である理由は・・・・・・と考へながら珈琲を飲んでゐると、フッと分かってしまった。

なんだ、それは我々が「伽羅先代萩」を観て来たからではないか。「伽羅先代萩」は、仙台藩の伊達騒動を題材にした作品。今日の舞台の中途半端な幕切れの幕をひくべく、我々が居る所は「伊達」なのだ。
さう得心して、私は「わぁはっはっはっはー」と大笑しながら、見得をきった。店中の人が注視する中、私の座ってゐた椅子がドロドロと上昇したのは言ふまでもない。

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