デビル [映画]
7月の強制起訴映画は「デビル」ジョン・エリック・ドゥードル監督です。原案・制作はあのシャマラン。たまたま乗り合はせた男女5人が、エレベーターの中に閉じ込められる。いつまで経っても出られないうちに、緊張が高まり、やがて一人、また一人と死んでいく・・・。
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- 元店主
- さて、みなさん、どうでしたか?
- マツヤマ
- ずばり、シャマランだな
- ヤマネ
- 御意!シャマランですよね、これ
- 元店主
- 確かに。私も、あんまりシャマランっぽくて思はず笑ってしまったんですが・・・
- マツヤマ
- これは、シャマランが若手監督に原作を与へて撮らせる、ナイトクロニクルのシリーズものの第1弾なんだ。だからシャマラン的なのは当たり前かもしれないが・・・、ここまでソックリだと、なんで自分で撮らないんだ?とか、疑問に思ふよな。自分で撮れよ、シャマちゃん!
- 元店主
- 『エアベンダー』の失敗が尾を引いてるんぢゃないですか。相当、叩かれたみたいだし。
- ヤマネ
- シャマランって、『レディ・イン・ザ・ウォーター』の頃からゴールデンラズベリー賞の常連だし、向かうではすっかりトンデモ監督扱ひなんですよ。それが・・・辛くなったのかなぁ・・・
- マツヤマ
- 日本でも似たやうなもんぢゃない?とはいへ、必ず新作がちゃんと公開されるし、根強いファンが居るんだらうなぁ。例へば・・・我々とか。みんな、シャマラン好きだよな?
- 元店主&ヤマネ
- 大好きです!
- マツヤマ
- よし!・・・・・・でも、実をいふと、オレはあんまりこの映画、面白くなかったんだよな
- ヤマネ
- ヘー!それはなんと!どこらへんがですか?
- マツヤマ
- なんといふか、この映画、『キューブ』みたいだと思ったんだ
- 元店主
- ヴィンチェンゾ・ナタリの?
- マツヤマ
- さう。色んな種類の男女がひとつの箱の中に閉じ込められ、さてそこからどうやって抜け出すか?といふ話だろ
- ヤマネ
- い、いやー、確かにエレベーターは箱ですけど・・・、それ、ちょっと強引過ぎる解釈ぢゃないですか?
- マツヤマ
- だから、オレは『キューブ』なんかに較べて、工夫が足りないと思った。このシチュエーションなら、もっと色々なにか出来るだらう、と
- ヤマネ
- それ!全然シャマラン的な見方ぢゃないですよ!シャマランの映画は、そんな風に観るもんぢゃないです!むしろナタリ的。マツヤマさんは、シャマランよりナタリの方が好きなんぢゃないですか?
- マツヤマ
- やー・・・もちろん、ナタリは好きだけど・・・
- 元店主
- 私はこれ、『サイン』だと思ったんですよ
- ヤマネ
- さうさう!ボクも思ひました!
- 元店主
- 主人公の警部は、過去に悲惨な目にあって(家族を殺されてゐる)、現在は信仰を失ってゐる。それが、事件を解決する事によって信仰を取り戻す・・・といふ、ひとりの人間の信仰回復の物語。構造的には、『サイン』と全く同じでせう
- ヤマネ
- さうなんですよねー。シャマランの映画って、基本、それですよね。魂の物語な訳で、ギミックやストーリーなんて、基本そのためのものなんです。それを、エレベーターの中に居る誰が犯人なのか?とか、犯人はどの様な手口を使って殺したのか?とか、そんなフツーの推理ドラマとして観るから、なんぢゃそりゃ!トンデモだ!・・・とかいふ事になるんですよねー。でも、そんな人はシャマランの映画の見方を分かってないです!
- 元店主
- で、それはいいとして、私としてはこの映画、凄く巧い、タイトに無駄なく纏められてゐる、と思った訳です。
- マツヤマ
- さうか?オレは結構、無駄の多い映画だと思ったけど
- 元店主
- さうですか。どこらへんが、無駄だと思ひました?
- マツヤマ
- うーん、あのラテン系の警備員とか。悪魔の話をするやつ。あいつ、要らんだろ
- 元店主
- ええー!あれ、最も大事な人物のひとりぢゃないですかー!あいつが居ないと、シャマランぢゃないですよ!
- ヤマネ
- その通りです!マツヤマさん、やっぱシャマランのファンぢゃないですよ!少なくとも、ボクは認めません!
- マツヤマ
- なにをー!
- 元店主
- まぁまぁ、二人とも・・・。で、私はこの映画、巧過ぎる、タイトに無駄なく纏め過ぎ、と思った訳です。シャマランの映画の最大の魅力のひとつである“過剰さ”が、そこにはない。優等生が、先生の出した課題をそつなくこなした、とでもいふか。そこが、物足りなかった。
- ヤマネ
- まー、テレビでやる『ヒッチコック劇場』とか『ミステリーゾーン』的な感じはしましたね。映画にしては、小粒。ちょい物足りない。巧いですけどね。
- マツヤマ
- でも、さっきも言った様に、これはナイトクロニクルシリーズの第1弾なんだよ。このあと、何作か続く訳で、それ全部観て評価しないと。シリーズ全てを観ると・・・なにかどんでん返しがあるかもしれない
- ヤマネ
- だからー!それは間違ったシャマランの見方ですよ!
- マツヤマ
- なにをー!オレがどういふ見方をしようと勝手だ!
- 元店主
- まぁまぁ、二人とも、もう一児のパパなんだから、そんな事で揉めるのは止めませうよ
- マツヤマ
- パパとかそんなの関係ないだらう!
- ヤマネ
- さうですよ!ケンタロウさん、なに一人だけ大人ぶってるんですか!
- 元店主
- む・・・、私は別に大人ぶったり、気取ったりしてる訳ではなく・・・、あ
突如、停電
- 元店主
- わー!
- ヤマネ
- や、やめてー!
- マツヤマ
- なんぢゃこりゃー!
突如、点灯
- ヤマネ
- あいたたた・・・、なにかに噛まれた様な・・・
- 元店主
- うう、ガラス片が刺さった・・・
- マツヤマ
- オ、オレは首が捻れた・・・
- 元店主
- うわ!マツヤマさん、首が360度捻れてますよ!
- ヤマネ
- わ−!やっぱ、マツヤマさんがデビルだったんですねー!
- マツヤマ
- なんでさうなるんだよ!
- トモコ
- あああ、もう!3人ともなにをいつまでバカやってるの!火事よ、火事。すぐそこで!
- 三人
- えええ!
我々3人は大慌てで、オパールの外に飛び出た。7月29日金曜日の21時過ぎ。オパールの側の3階(+小部屋)建てのビルが出火し、屋上の小部屋が音を立てて、劫火に包まれた。その火は紅に京都の夜空を染め、辺りに熱と煙をまき散らした。近くに祇園と宮川町を抱へる町内故か、消防車が20台以上も集結し、人々は殺気だってゐた。不穏な空気が辺りに充満する。
我々3人は茫然と火をみつめ、そこに立ち尽くしてゐた。3人が3人とも、その火の中にデビルを見つめてゐたのだ。我々の耳には、デビルの哄笑さへ聞こえてゐた。火は、大きく笑ひながら、揺れた。
しかし、我々は動じなかった。映画を観てゐた我々は、どうすればよいか、分かってゐたのだ。我々は3人とも、一斉に自らの罪を告白し始めた。それは長い告白であった。罪に塗れた人生を送ってきた我々にとって、それは長く、辛い告白であった。現在の日本が置かれてゐる、苦境。これも畢竟、我々ひとりひとりの罪の故なのだ。その事を自覚しなければならない。我々は真摯に、時間を忘れて告白を続けた。
どれほどの時間が経ったのだらう。我々が誰ともなく顔をあげると、すでに火は大半収まり、辺りの殺気は払はれてゐた。大丈夫だ。京都は救はれた。天明の大火は確かここらから起こり、当時の京都の街の大半を焼き尽くしたが、今回は、その様な事にはならなかった。日本も、まだまだ苦しまなければならないかもしれないが、必ず救はれるだらう。そして、我々も。
我々3人は確信してゐたのだ。デビルが居るなら神サマも居るだらう、といふ事を。
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8月の映画は「モールス」です。「ぼくエリ」のハリウッドリメイク。監督は「クローバーフィールド/HAKAISHA」のマット・リーウ゛ス。主演は「キックアス」のクロエ・モレッツです!
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