富江 アンリミテッド [映画]
5月に強制起訴された映画は、初めての邦画。しかもホラー。「富江 アンリミテッド」です!ババーン!
実をいふと、映画鼎談メンバーの三人は三人ともホラー映画がダメ。絶対に観ない!観たくない!観る奴の気持ちがわからん!といった感じなのですが、さて・・・。
★
- マツヤマ
- ・・・なんなんだよ、これ
- ヤマネ
- ・・・なんなんですか、これ
- 元店主
- ・・・え?何がですか?
- マツヤマ
- なにって・・・この映画だよ!富江だよ!
- 元店主
- あ、マツヤマさん、恐かったですか?さういへば、予告編を観て悪夢にうなされた、といふ話だったですけど
- マツヤマ
- ちっとも、恐くなかったよ!それ以上に、ちっとも面白くなかったよ!大体、どういふ態度で観たらいいのか、分からないよ、この映画。
- ヤマネ
- ボクも、何でこんな映画を観なくちゃならないのか、さっぱり分かりませんでしたよ!プンプン!
- 元店主
- それは、もちろん強制起訴されたからぢゃないか。
- ヤマネ
- さういった意味ぢゃないですよ!大体、この映画、なにがしたいんですか?怖がらせたいんですか?笑ひをとりたいんですか?どちらにしても中途半端すぎますけど
- 元店主
- いや、この映画の監督である井口昇によると、これまで撮られた映画『富江』シリーズは、恐さの中に可笑し味がある原作を活かしきれてない。やっぱ恐さを前面に出した映画ばっかりだったから、ここはひとつ、恐さの中に可笑し味のある原作に忠実な映画を撮らう、といふ事らしいよ
- ヤマネ
- それはいいですけど、それなら、その監督の意図は完全に失敗してますね!恐くもなく、可笑しくもない。ひたすら脱力です。大体、みんな演技が下手過ぎます!セリフも棒読みだし。なんなんですか
- マツヤマ
- オレも同感。特撮とかも、チープすぎてシラケる。今時あれはないだらう。むろん、ハリウッドばりの凄い特撮なんて期待してないけど、それでもあれは酷過ぎる。演技の素人臭さも含めて、オレには高校の学芸祭用に映画サークルが撮った作品にしか思へなかったな。とてもカネとってみせられるレベルぢゃない
- 元店主
- なるほど。まぁ、お二人の言ふ事は確かにその通りなんですが・・・、でも、私は結構面白かったですよ
- ヤマネ&マツヤマ
- ええー!どこがー!!
- 元店主
- ええっと、ですね。まづ、音楽の使ひ方が結構よかったと思ふんですよ。オープニングのバッハとか、途中で入る、ダサイ80年代ロックみたいな奴とか、ラストの80年代風歌謡曲とか。結構、センスいいと思ひますよ。ちょっと、感心した
- ヤマネ
- ああー、確かに、あの歌謡曲は良かったですねー
- 元店主
- それから、富江が串刺しになって、続いてバッハの音楽に合はせて富江の白黒写真が何枚も映って、最後に富江の顔が溶解していく・・・といふオープニングはカッコ良かったし、歌謡曲をバックに街を彷徨ふ場面から狭い四畳半での惨殺シーンといふラストは、なんだか懐かしい、胸が締め付けられる様な感じがして、良かった。あれは80年代っぽいよね。
- マツヤマ
- まぁ、ラストはちょっといい感じだったよな。情緒が纏綿としてゐるって感じか
- 元店主
- ね?ね?でせう?それから、ですねぇ・・・、何度も悪夢が再来する、といふ構造が良かったです。絶対危機に陥って、もうダメ・・・といふ所で目が醒める。夢か、助かったのか、と思ふと、また違った現実が悪夢となって襲ってくる、といふ繰り返し。それによって、なにが真実なのか、現実なのか、特定できなくなる、といふ所が良かったですね
- マツヤマ
- それ、単に脚本が穴だらけ、矛盾だらけって事ぢゃないか?
- 元店主
- 違ひますって!わざとああいふ話にしてるんですよ。この『富江』といふ話はですねぇ、富江といふ美女が居て男を狂はせずにおかない・富江は殺されても死なない・富江は増殖する、といふ基本設定があって、それを元に作られた色々な話の集積なんです。伊藤潤二の原作はね。別に全ての話を一貫するストーリーがある訳ではない。富江といふ美女の出て来る悪夢の集積、多次元・多層世界なんです、富江ワールドは。だからこの映画は、富江の妹といふ設定の月子の思春期故に不安定な精神世界にフォーカスして、それを富江の現れる悪夢として描いたものなんです。フロイト的にいへば、富江は月子の抑圧された無意識の回帰でせう。
- ヤマネ
- う〜ん、それはさうかもしれないですけど・・・なんか、胡散臭いなぁ。フロイトとかいふ時点で。
- 元店主
- まぁ、富江は“戦争機械”なんだよ
- ヤマネ
- 明らかに無理矢理でせう!
- マツヤマ
- しかし、いくら口先でうまく説明されても、実際に観てみるとなぁ・・・。巨大化した富江とか、どうなんよ。『大日本人』かと思ったよ。
- ヤマネ
- さうなんですよねー、全体に見世物小屋っぽいんですよ。安っちい
- 元店主
- うう〜ん、そこがいいと思ふんだけど・・・。あのAKB48の子が首なしで走り回るシーンとか面白くなかった?
- ヤマネ
- ああ、あの子、AKB48の子だったんですか。びっくりするぐらゐ演技下手だったですねー
- マツヤマ
- いや、オレはあのシーン、退屈だったな。退屈すぎて、欠伸が出て、出て、たまらなかったよ。さうだな、48回くらゐ、欠伸したかな
- ヤマネ
- え、もしかして、それ・・・
- マツヤマ
- AKB(あくび)48!
- 元店主
- ・・・・・・コホン。ええっと・・・その、富江役の中村みうはどうでしたか?私は結構、よくて。これぞ富江!って、感じ。実はそれでこの映画、好印象なのかも
- ヤマネ
- エエー、ボクは全然ダメです。ちっとも美人にみえない。それより、不細工といふ設定の妹月子役の荒井萌の方がずうっと可愛くてよかったですよ!
- マツヤマ
- オレも別にいいと思はなかったけどな。
- 元店主
- さうですか・・・。いいと思ふんだけどなぁ、富江。富江、富江・・・ブツブツ
- マツヤマ
- あ、さうだ、“富江”って、“トモコ”と名前が似てるからいいと思ふんぢゃないか?自分の奥さんと似た名前だから親近感を覚えてしまふ、とか。髪の毛が長い所とかも、トモコさんに似てるし。
- 元店主
- そんな、字数と最初の“ト”が一緒なだけぢゃないですか!
- ヤマネ
- ボクのお嫁さんも同じトモコといふ名前なんだから、その説は成り立たないですよ
- マツヤマ
- わ!トモコが増殖した!
- 元店主
- ・・・マツヤマさん、そんなこと言ってたら、家に帰ったらサコさんもトモコに・・・
- ヤマネ
- 増殖するトモコ
- マツヤマ
- や、やめてくれよ!シャレになんないから。夜、トイレに行けなくなるだろ!
- ヤマネ
- いやー、でも、自分の奥さんが増殖したら、恐いでせうねー
- 元店主
- ・・・・・・
- マツヤマ
- ・・・・・・
- ヤマネ
- ・・・・・・
- 三人
- わー!!!!!!
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6月の強制起訴される映画は、「トト・ザ・ヒーロー」のジャコ・ヴァン・ドルマル監督 による「ミスター・ノーバディ」です。
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