スコット・ピルグリム vs 邪悪な元カレ軍団 [映画]
テアトル梅田にて「スコット・ピルグリム vs 邪悪な元カレ軍団」エドガー・ライト監督を観ました。
これは昨年から結構話題になってゐた映画です。確か、ファンたちによる公開要請運動みたいなものがあったんぢゃなかったかな。ネット上で、その署名運動があったのを私も何度か見かけました。最近は、かういったの流行なんですかね?「キック・アス」も似たような経過を辿って日本で公開された様な記憶が・・・、っていい加減ですけど、「キック・アス」が猛烈に面白かったので、これも面白いかな?と思ひ、観に行ったといふ訳です。
まづ、何よりビビったのが、出て来る出演者全員が、もの凄ーくダサく、不細工で、カッコわるい、といふ事です。舞台がカナダのトロントだし、お話がオタクの妄想話みたいなものなので、多分わざとだと思ふのですが、いやー、ビックリした。ここまでダサさを集結した様な映画って、久しぶりに観たかも。が、むろん、映画そのものがダサいといふ訳ではありません。
映像表現は、ゲームやマンガの表現を巧く取り入れ、自然な感情移入を拒む様な異様に早いカッティングや唐突な場面変換など、創意と意欲に満ちあふれ、楽しめます。そして音楽。音楽はBECKがやってゐる様ですが、これがいい。所謂、ダサカッコいいといふ奴で、実は映画そのものも正に“ダサカッコいい”といふべきもので、かういった映画は結構希有かも、と感心しました。
お話は、主人公スコット・ピルグリムが理想の女のコと出会ひ、彼女をゲットするために彼女の元カレ7人と闘ふ・・・といふどうでもいいもので。とはいふものの、この“どうでもいいもの”といふのは、褒め言葉です。
「エンジェルウォーズ」の時に書きましたが、映像表現を輝かす“どうでもいいお話”といふのは案外難しい。で、「エンジェルウォーズ」では完全にそれに失敗してゐる、と。それに対し、この「スコット・ピルグリム」での“どうでもいいお話”は、成功してゐます。みごと、映像表現を輝かせてゐます。ザック・スナイダーには是非この映画を観て勉強し直して欲しいですね。
さらにいふなら、「エンジェルウォーズ」では妄想世界と現実世界が二つに分かれてゐて、その対応関係が安易な比喩に落ち着いてしまってゐるのですが、この「スコット・ピルグリム」では妄想世界・現実世界・夢の世界が渾然一体となって描かれてゐます。バーチャルとリアルの境界線を巡る問題が取りざたにされる現代、こちらの方が表現としては数等切実で且つ上でせう。で、その様な妄想と現実が混沌とした世界の中で、如何にして自分を見つめ、世界との関係を確立するか、といふのが描かれた、とてもアクチュアルな映画。なーんていふと、褒め過ぎでせうか?
・・・しかし、ここまで書いてきてこんな事をいふのはなんですが、ゲームを全くやらず、マンガも久しく読んでをらず、今やロックに何の関心もなく、白人中産階級的価値観ってダサくてついていけねー、と思ってゐる私にとって、究極的にはこの映画は“あまり関係ないよねー”といふのが正直な感想でした。ははは。
もっと黒い映画が観たいよなぁ。
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