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2010年08月02日(Mon)

インセプション 映画

MOVIXにて「インセプション」を観ました。

前作「ダークナイト」にて一挙に超大物監督になってしまったクリストファー・ノーランによる新作。といふ事で、私も予告編を観ながら楽しみにしてゐた一本です。
なのですが、見終はった感想を早速述べるならば、「まー、やはり、こんなもんか」といふもの。いや、結構楽しんで観たんですよ。でも、私、クリストファー・ノーランの作品は、「メメント」でも「プレステージ」でも「ダークナイト」でも、見終はった感想は「まー、こんなもんか」といふものなのです。さういった意味で、クリストファー・ノーラン、一貫したスタイルを持った監督、といへるかもしれません。
そのスタイルとは、“難解な事に憧れるけど頭がついていってない青年”といった感じでせうか。

今回の映画は、他人の夢の中に侵入してその人の深層心理にあるものを探ったり逆に深層心理に考へを植ゑ付ける、といふ、パッと聞けばなかなか魅力的な話です。これをうまく映像化できればどんなに刺激的だらう、と期待に胸を踊らせた訳ですが、結果として「マトリックス」は超えられなかった、と感じました。

そもそもこの映画、構想9年!とか言はれてゐますが、9分の間違ひではないか?と疑ひたくなる様な杜撰な穴に満ちてゐます。この様な、現実世界ではあり得ない世界設定の話を作るなら、細部に至るまで、どこまで矛盾なく世界を構築できるか、が作品の成否を決めると思ふのですが、この映画は思ひつきで作ったとしか思へません。

例へば、アーキテクチャーといはれる夢の設計士が出て来るのですが、これがなんなのか、イマイチはっきりしません。彼女(アリアドネといふ名の女性なのです)がどうやって夢を設計してるのか、これがサッパリ描かれてをらず、分からない。
いや、私も本当にどうやったら夢を設計できるのか、なんて事を問ひつめてるんぢゃないですよ。彼女が頭の中で勝手に夢の世界を構築してゐる、とかでもいいのです。ただ、それをどうみんなと共有するのか、は重要でせう。だって、彼女は最初、この映画のハイライトであるロバートの夢侵入作戦に同道できない予定だったんですよ。「君を危険に巻き込んだら教授に怒られる」とかデカプーが言って。そんな、一緒に夢を見ないのなら、一体どうやって彼女の設計した夢の世界に入っていくのか?気になるでせう。
そもそも、夢の設計、といふのもよく分からない概念です。映画の中では、相手にこれが夢だと気づかれない様に、自分たちの目標が達成しやすく世界を構築するために、と説明されてゐますが、だいたい夢の世界とは矛盾に満ち、時間も空間もグニャグニャになってゐるもので、それでも本人が変だと思はないのが“夢”です。それが、現実世界と寸分違はない世界を作ってる時点で、なんかをかしい。そんなの“夢の設計”ではない。と、思ってしまひます。
なんかー、あまりに想像力が貧困ではないか、クリストファー・ノーラン。

それとか、夢の世界で死ぬと目が醒める、といふ設定になってゐるのですが、これが最後のロバートの夢に侵入するミッションでは、あまりに強い麻酔薬を使って眠ってゐるので、決められた目覚めの時間が来る前に夢の中で死んでも目を醒す事ができず、本人は“虚無”に落ちる、と説明されます。
ま、これはいいでせう。
でも、それは現実世界と一つ目の夢の世界での間の事でせう?実はこの映画、夢の中でまた夢をみる。その夢の中でまた夢を観る・・・といふ風な展開をみせるのですが、夢の中でみた夢の中で死んでも、ひとつ手前の夢の世界に戻るだけのはずです。その夢の世界では、別に強力な麻酔を使用してゐる訳ではないのですから。なのに、夢の中の夢、のさらに夢の中でロバートが死んだとき、みんなは「わー、ロバートが虚無におちたー!絶体絶命ー!」と騒ぐのです。変でせう?ロバートはひとつ前の夢に戻るだけのはずです。

また、夢の中から醒める方法として、高い所から落ちた衝撃で目覚める、といふのがあって、みんな目覚めるために高い所から落ちたりするのですが、最深層の夢の中では、アリアドネは高層ビルの上から飛び降りるのです!
いくら急いでいたからって、そんな所から落ちたら死ぬぞ!死んだら、この映画の設定では、虚無に落ちるんぢやないのか?なんで落ちないの?・・・・・・と、とにかく矛盾だらけ。

矛盾があってしかるべき夢の世界に矛盾はなく、矛盾があってはならない映画全体の世界の方は矛盾だらけ、とはこれ如何に?え、ノーラン!

しかしながら、それでも私が結構この映画を楽しめたのは、役者の方々が良かったからです。「シャッターアイランド」と同じ役をやってゐるとしか思へないデカプー、早川雪舟以来のハリウッドスターになるのか!と思はせる渡辺謙、らを筆頭に、主要メンバーはみんな良かった。名前知らないんだけどアリアドネ役の娘とか、デカプーの相棒の役の人とか。
とにかく、役者が良ければ映画は楽しめるんだから。良かった、良かった。

結論。脳乱くんには是非、もう少し考へを詰めるか、難解病を治してから、次回作を撮ってほしい。エヘン。(この様に、偉さうな事を言へるのが楽しくて、毎回ノーランくんの映画を観てしまふのかもしれませんね。・・・って、ノーランの手の上で踊らされてるだけやん!)

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