ある帰郷 [Customers]
先週の事だけれど、私が夜にのそのそと店に出勤すると、見覚えのある後ろ姿が。それが、何年振りかのノガミくんであった。
「オパール、潰れたと思ってたわー。三条に行っても店、ないし」
あれ?ノガミくんは、オパールの移転を知らなかったのか。確かに、東京のノガミくんの連絡先が分からなかったもんだから、特に知らせてなかったけど、周りの友だちから連絡がいってるとばかり思ってゐた。だって、可能が隣に住んでる訳だし。
「可能なぁー、いくら隣に住んでても、最近は全然会ってなかったしなー」
なるほど。情報の伝達といふのは案外難しいもんだ。
ところで、ノガミくん、映画は撮ってるんかいな。
「あー、まー、撮ってるよ。一応。今年の頭にも、新作上映会やった」
さうなんや。それは、おめでたう。それ、是非京都でもやってよ。
「うーん、まー、なー。秋、ぐらゐかなー、できるとしても」
と、言ひながら、どんどん傾いていくノガミくん。ノガミくんはお酒に酔ふと、身体が傾いていく傾向があるのだけれど、すでにワインを5杯も飲んでゐる今、身体はほとんど90度まで傾いてをり(顔がほぼ横向きになってゐる!)、そのノガミくんと対峙してゐる私は、なんだか平衡感覚が狂はされるのであった。
映画といへば、何か最近、観た?
「うーん、・・・ゴダールの新作!」
な、なに?そんなもの、あるの?
「あるよ、『あるカタストロフィ』。上映時間は1分」
1分!・・・それは、面白さうだなぁ。それ、ノガミくんの新作と併映してよ。
「う〜ん・・・」
さういへば、今回は、なんで帰京したのさ?
「ああ、祖母が亡くなって、明日、葬式やねん」
ええ!じゃあ、今日はお通夜ぢぁないの?ノガミくん、行かなきゃ。こんな所で、飲んだくれてる場合ぢぁないのでは!
「いやー、ま〜、いいんだよ、別に」
と、言ひながら、ますます傾いていくノガミくんであった。
ま、別に、いいかー。
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