京都三条 カフェ・オパール Cafe Opal：Home

ところで、一般に“恐い映画”といひましても、「ホラー」とか「スプラッター」とか「スラッシャー」とか色々とある訳で、そんな中でも、我々は主に「ホラー」系統のもの・・・になるのかな？　ま、心理的に恐い映画を選んで観てゐたのです。
つまり、いくら「あへこは」とはいへ、“残虐もの”は観ない！　て、いふか、それは別物だらう！といふ、認識だったのですね。単に逃げてゐただけ、といふ話もありますが。
残虐シーン。苦手なんですよねー。拷問とかリンチとか、堪へ難い。人が痛い目にあって苦しんでゐるのなんて観たくない。・・・もう、「ソウ」とか「ホステル」とか絶対に観たくない！！！　と、叫んでゐたら、でもクローネンバークとかタランティーノとか好きぢゃないですか。石井輝男も三隅研次も大量に観てるくせに、などと言はれてしまったりするのです。
いや、あれは・・・また別ぢゃない？

ここに「切株映画」といふ言葉があります。この言葉は、高橋ヨシキ氏と中原昌也氏が考案したものらしく、正確には「切株派」と言って、映画を観る悦びの半分くらゐは、切株表現（人体が破壊・切断される描写）にあると信じる人たちの事らしい。かういった人たちに愛されるのが「切株映画」。要するに、首チョンパ！とか、頭がボカッと破裂！とか、血が大量に吹き上げる！とか、そんな映画の事です。そんなシーンがあれば、文芸大作だらうが、恋愛映画であらうが、みんな「切株映画」である、と。
「切株映画」。う〜む、グッとくるネーミングです。すでに「ショック！残酷！切株映画の世界」と「ショック！残酷！切株映画の逆襲」といふ、切株映画に関する本が２冊も出てゐるのですが、これが滅法面白い。私は、多分ここに出て来る映画のほとんどを観る事もなく死んでいくと思ふのですが、本自体は舐める様に読みました。まるでここに出て来る映画は、全て何度も繰り返して観た様な気持ちにまでなりました。
いやー、自分が絶対に観ないと分かってゐる映画について読むのは楽しいなぁ。はははー。

話は戻りますが、確かに私自身、日本刀で人体真っ二つ！とか、超能力で頭が破裂！とか、そんな映画を楽しんで観てきました。しかし、さういふのは、なんといふか、現実離れしてゐるといふか、現実を反転させて真実を垣間見せるといふか、とにかく爽快で気持ちよいのです。笑へるし。正に「切株」といふ呼称がふさわしい。
が、私の苦手な残虐映画も、その人体破壊表現の故に「切株映画」なのです。ウ〜ン、どうなんだろ。
例へば「ホステル」。金持ちが犠牲者を買って（捕まへて）、それを拷問して嬲り殺しにして楽しむ・・・といふ映画。それは、一寸・・・・・・違ふんぢゃないか？
リアル過ぎるといふか、陰惨といふか、笑へない感じ。そんなもの、想像するだけで気分が悪くなります。なんといふか、“切株＝人体破壊”よりも、“人が苦しむこと”に重点が置かれてゐる様な気がします。こんなものまで、「切株」で一緒にしていいのでせうか。それとも、切株派の人たちにとっては、「ホステル」も「スリーピーホロウ」も同じなんでせうか。

と、ここまで書いてきて、大きなミスに気がつきました。そもそも、「ホステル」を観てないのに、“リアル過ぎる”とか“笑へない感じ”とか“切株よりも苦しみ優先”とか、断定してゐる事がをかしい。現物を知らないのに、論じ様がない。考察する事もできない。となれば、やはり、現物を観るに如くはない、のですが・・・。

絶対に嫌だー！！！

やはり、私は「切株派」の本を読むだけで十分です。