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2007年11月09日(Fri)

グッド・シェパード 映画, 憂国

 MOVIXで『グッド・シェパード(ロバート・デ・ニーロ監督)を観ました。

 マット・デイモン主演で、アメリカ諜報部員(OSS→CIA)を演じます。イエール大学に入学し、そこの友愛クラブである“スカル & ボーンズ”に入会、スカウトされて諜報部員になつて、祖国アメリカのために謀略活動に邁進する男。まー、簡単に言へばスパイの世界を描いてゐるのですが、『007』や『ミッションインポッシブル』の様なおとぎ話ではありません。あくまでリアルに、リアルに現実のスパイの世界を描いてゐるので(と言つてもフィクションですが)、それはそれは寒々しい世界が描かれます。

 スパイの世界は騙し合ひです。今日の味方は明日の敵、誰一人信用してはならない、といふ世界ですので、友達は全て失ひます。家族もボロボロ。挙げ句の果ては息子と国家、どちらをとるか? といふ選択に追ひ込まれる始末。全く、碌なもんではありません。

 が、近代社会では様々な謀略活動が幅をきかせてきたのも事実です。民主主義、大衆社会ではどうしたッて一般大衆が力を持ちます。なので権力者はこの一般大衆を如何に操るか、といふ事に腐心せざるを得ません。テレビや新聞を使つたプロパガンダ & 洗脳、諜報機関による多種多様な謀略活動などが横行する所以です。

 しかしながら、この様な世界は不幸であると言はざるを得ない。騙される方はもちろん、騙す方も、不幸です。この映画は、騙す方の不幸を描いてゐる訳ですが、何故この様な事になるのでせうか。それはやはり、「人を騙す」「ウソをつく」といふ、世界中の道徳を見回しても「やつてはいけないこと」トップ3に入るであらう事を、生業としてゐるからでせう。

 やはりですねー、人を騙したりウソをついたりしたらダメですよ。いくら「国家のため」とか「世界を救ふため」とか大義名分を掲げても、それはダメです。といふか、大義名分を掲げるだけたちが悪いかもしれません。地獄に落ちますよ、そんな事をしてゐたら。(この映画の主人公の生きる寒々とした人生は、すでに生き地獄、といへるかもしれません)

 騙し合ひが横行する社会では、とかく「正直者が馬鹿をみる」といふ事になりがちです。さらに「正直者を馬鹿にする」といふ堕落した風潮が瀰漫しがちになります。こんな社会が良い訳がない。小泉政権が目指したアメリカナイズされた日本とは、正にかういつた社会で、政府及びマスコミは国民を騙しまくり、民間でも偽装や詐欺が横行し、みんなが「騙されるより騙す方になりたい」と、目を血走らせて他人を出し抜く事ばかり考へてゐる。醜い。醜悪な社会です。

 そこで小沢一郎は「黙々と働く人、努力する人、正直者が報はれる公正な国をつくる」と言つた。た、正しい。正し過ぎる! もしかしたら若い人たちにとつて、小沢一郎のかういつた正論は“ダサイ”のかもしれません。しかし、小泉政権を支持した若いひとたちこそ、最も小泉政権に喰ひものにされてゐる、といふ事実を直視しなければならないでせう。騙されてゐるんですよ、君たちは。いやホント。

 とまれ、この映画はピッグス湾事件(におけるアメリカの失敗)の事を直接的には描いてゐるのですが、現在のイラク戦争の事も間接的に批判してゐるんやろなー、さらに、現在の日本社会の事も間間接的には批判してる事になるかもねー、などと思ひながら、鑑賞した秋の夕暮れでした。

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