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2007年08月09日(Thu)

HIP HOP IS DEAD? 音楽

 ヒップホップの世界では今、HIP HOP IS DEAD論争といふのが盛んです。これは昨年出たNASのアルバム『HIP HOP IS DEAD』に触発される形で起こつたもので、要するに「ヒップホップはもう死んだ(ダメになつた)のか?」といふ論争です。

Hip Hop Is Dead
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 ふ〜ん、ヒップホップの世界ではそんな事が話題なんだー、でも私はヒップホップに関心ないしー、関係ないなー、と思つたそこのあなた。甘い。甘いですよ。たとへあなたがヒップホップに関心がないとしても、多少でも音楽(あるいはポップカルチャー)に関心があるなら、充分関係あります。これは由々しき事態なのですよ。何故なら、ヒップホップの死は、全ポップミュージックの死を意味するかもしれないからです。

 そもそも20世紀のポップミュージックは、その代表であるロックを含めて、全て黒人音楽(ブラックミュージック)を栄養として育つてきました。次々と革新的なスタイルを生み出すブラックミュージックを、白人たちがパクリ、薄めて、分かりやすくしたのがロックやポップス、といつても過言ではないでせう。この様にして白人ミュージシャンたちはお金を稼いだ訳ですが、黒人たちは文字通り搾取され続けてゐました。音楽面においても、金銭面においても。が、その状態をたうたう打ち破つたのがヒップホップです。

 白人たちはうまくヒップホップをパクる事ができず、ヒップホップそのものがまんまチャートを制しました。ビルボードチャートはヒップホップに占領され、それに伴ひ、初めて黒人たちに大量のお金がもたらされました。黒人たちの長年の夢がかなつたのです。快挙です。バンザーイ! …などと喜んでゐたら、あまりにヒップホップビジネスが巨大になりすぎて、精神が空洞化して、HIP HOP IS DEAD? と言はれるまでになつてしまつたのです。あらら。

 皮肉といふか、何といふか、難しい問題です。それにしてもお金の力は恐ろしい。ありとあらゆるものを骨抜きにしてしまひます。いや、もちろん本当にヒップホップは死んだのか? どうか? といふ問題に決着はついてゐないですよ。でも、やはりある種の行き詰まり・空洞化は確実にある、と私も思ひます。個々のミュージシャンはそれぞれいい作品を作つてはゐるのですが。

 もしこのままヒップホップが、つまりはブラックミュージックが死んでしまつたら、それはブラックミュージックを基に成り立つてゐた我々の時代のポップミュージックそのものの死を意味する…と思ひ、愕然とします。

 といふか、音楽に限らず、映画、文学、美術など、文化全般に渡つて行き詰まり、死にかけてゐる気がしてなりません。もう本当に終はりかもしれませんね。サブカルチャー イズ デッド。我々の時代はサブカルチャーが主流を成してゐる訳で、つまりはサブカルチャーの死、といふ事なんでせうが…。もともとサブカルチャー(ポップカルチャー)といふのはビジネスと密接な関係があつた訳で、最初から難しい問題を抱へてゐたのは事実です。そのビジネスとの相克が、ある種のダイナミズムでもあつた訳なんですが、ことここに至ると、ビジネスの力が強過ぎて、もうなにもかも骨抜き…。ま、サブカルチャーなんて死ぬなら死ぬでかまはない、とも言へる訳ですけれど。

 といふ訳で、歌舞伎、か?(歌舞伎は古典ですから)

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