江戸文字 [読書・文学, 歌舞伎]
『江戸文字入門』橘右橘著(河出書房新社)を読みました。
江戸文字とは何か。それッて、勘亭流の事ぢやないの? と、素朴に答へたのは私。ところが、さうではない。むろん勘亭流も江戸文字の一種ですが、江戸文字には勘亭流・寄席文字・相撲字・狭義の江戸文字(千社札に書く)の、4種類があるのであつたー!
確かに、並べてみれば違ふ。微妙ではあるが、ハッキリ違ふ。ふむふむ、なるほど。…うーん、知らんかつたー! 勉強になつたー! なんだか嬉しい。
ところで歌舞伎で使はれるのは勘亭流。この勘亭流は、江戸時代に岡崎屋勘六といふ人が確立した事になつてゐる。そこから弟子へ、弟子へと受け継がれて、あの大東亜戦争での絶滅の危機も乗り越えて、今に至る。現在の第一人者は伏木寿亭といふ人らしい。その人の書いた看板の写真も載つてゐる。…と、見れば、おお! これは今年の正月に観た浅草の花形歌舞伎の看板ではないか! …さうかー、あの字は伏木寿亭さんの手によるものだつたのかー。などと、知つた様な回想に浸る。なんだか嬉しい。
ついでにこの本では、歌舞伎の絵看板についても述べられてゐる。勘亭流と切つても切れない関係にあるからだが、この絵看板で主流を成してゐたのが鳥居派。ちなみにこの鳥居派の4代目は、あの浮世絵の美人絵で有名な鳥居清長である。で、こちらも子供や弟子に受け継がれて、受け継がれて、断絶の危機を乗り越えて、現在に至る。今は9代家元・鳥居清光。昭和13年産まれの女性である。…もしや、と、今年の正月に歌舞伎座で買つた筋書き(パンフレット)を開いてみると…。最初のところに絵看板の絵が載つてゐて、その絵にはちやんと“清光”の名前が! …うわーい、やつぱり!! ッて、当たり前なんだけれど、なんだか嬉しいのでした。
その他にも、千社札の世界など、興味深い話や写真が満載。正にこれらは、粋人・通人・趣味人の世界。実は私は趣味人とかあまり好かないんだけれど、かういつた本を読んでゐると、昭和生まれの尼崎育ちのくせに、何故か江戸ッ子を気取りたくなるのであつた。べらんめぇ!
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