引用日記 カフェ [読書・文学]
「それがフランスのカフェであつて、名目はコオヒイを売る店なのであるが、それよりもこれは実は、何もしないでぶらぶらしてゐる為の場所なのである」
『カフェ』
正にその通り、だと思ふ。何もしないでぶらぶらする、とは最も贅沢なことで、贅沢は人を豊にする。人間が貧しいと、贅沢を味はふ事が出来なくて、何もしない為にわざわざどこかに行つて大枚(?)を払ふ、といふ行為が理解できない。行つても、チットも楽しくない。これはお金のあるなしに関係ない話です。
とはいへ、「何もしない為」などといふ言葉は、省略がなされ過ぎてゐて、誤解を呼ぶかもしれない。「何もしない」とは、功利に関はる事を何もしない、といふ事だ。我々はみな生きていかねばならないし、聖者でもないので、功利と無縁に生きることはできない。が、やはり功利とは俗なるもので、それを避ける事は出来ないとしても、それだけだと人間が俗になり、貧しくなる。だから、俗を洗ひ流して魂の高貴さを得るために、贅沢な時間を過ごすために、カフェに行くのです。
みなさまの御来店を心よりお待ちしてをります。
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