抽象的なこと [音楽, オイシン, ノーザンソウル]
オイシン来店。私が自らの不健康ブームについて語ると、「いやー、ボクもおいしいもの食べ歩いてばつかりです!」と言ふ。
いや、さういふのとは一寸違ふんだが…、で、オイシンは何か聴いてるのか?
「やつぱ、スティービーですね。『迷信』最高!」
ああ、スティービーな。私も確か、昨日は「キー・オブ・ライフ」を聴いたな。…で、最近の奴は何か聴いてるのかな? てか、最近は何か買つた?
「いや…何も買つてないです。昔買つたCDやレコードを聴き続けてるんです。」
ううーん、それでやつてるのが“食べ歩き”ぢや、単なるオヤジだぞ。
「さうですか〜? 何が違ふんですか?」
さうだな。単に官能を満足させる事ばかりになつて、抽象的な事柄から離れるのが良くないんだな。さうなれば、人間はダメになるよ。
「ええー、音楽聴くのも、官能を満足させる事ぢやないんですか?」
いや、違ふ。音楽は本来、高度に抽象的なものなんだ。それは人を深い瞑想と思索に導く。音楽を単なる官能を満足させるもの(=楽しければいいぢやん!)と捉へてたらダメだな。
「ぢや、店主は最近、何を思索してるんですか? そんな不健康ライフの中で」
うむ。ソウルの7インチとノスタルジアの関係について、かな。アルバムだと、私はCDでも再発もんでも気にならないんだけど、7インチシングルに関してだけは、オリジナルものぢやないと嫌なんだよ。それは何故か? そこには“ノスタルジア”といふ概念が関係してるんぢやないか? と考へてゐるんだ。ノーザンソウルといふ音楽の持つ性質と、7インチといふ「モノ」の持つ性質。始源性、ミニュチュア、蒐集、ノスタルジア…。
「…店主、そんな事ばかり考へてるから、いつまで経つても商売が上手くいかないんぢやないですか」
!
「もつと具体的な事を考へませうよ! 効果的な宣伝とは何か、とか、何か分かりやすいウリを作る、とか。そのうち、ホントにオパール潰れますよ」
……まづ、この日記を辞める事から始めるかな。
Comments
投稿者 pion : 2006年10月13日 15:52
エリック・ドルフィーの「ラストデイト」を最近よく聞くのですが、アルバムの最後で
"When you hear music, after it's over, it's gone in the air. You never capture it again. "
「音楽を聴き終った後、音楽は宙に消えてしまい、二度とそれをつかまえることはできない」
と言ってます。
店主さんの言ってることからは外れてるかもしれませんが、私は音楽の持つ一瞬の力に惹かれています。
ノーザンソウルはその音楽を聞く環境で全く異なる感じ方をする最良の例だと思います。
投稿者 店主 : 2006年10月14日 04:56
なるほど。私が拘つてゐるのは、音楽が消えた(終はつた)後にも、レコードは残る、といふ事です。7インチの黒いビニール盤に、完璧な世界が刻み込まれてゐて、それは常に目の前にある、といふ事です。だから最近流行の、ダウンロードしたデータとして音楽を保有する、といふ形には馴染めません。そんなもの、音楽ではない、といふか、ソウルぢやない、とか思つてしまふのです。魂は、それに相応しい容れ物を必要とする。と、まァ、そんな感じ〜。
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