DNAによる支配 [ポー]
「人間なんて、所詮DNAに支配されてゐるのよねー」とはトモコの持論だが、何故にトモコがこのやうな考へを抱くに至つたかといふと、それはポーのせゐなのだ。どうしてここまでポーが愛くるしいのか。それは、ポーが明らかに人間の赤ちやんの特質を備へてゐるからだ、と思はれる。
ちつこい身体、プクプクした三頭身、無邪気そのものの表情、そして、何より赤い。このやうな性質を見ると、人間は必然的に「可愛い!」と思ひ、庇護したくなるやうにセットされてゐるのだ。さうでないと、無力な赤ちやんは生き抜いていく事ができない。これはDNAの生き残り戦略なのである。確かに私も、ふとポーと目が合つてしまふと「か、かはいい!」と呟いてしまふ事が多々ある。所詮、人間はDNAに支配されてゐるのである。
このやうな例には事欠かないが、本日もそんな光景がオパールで展開されてゐた。Kさんといふお客さんの方が、ポー店長を激しく気に入つてしまひ、まるで赤ん坊のやうに腕に抱いてあやしたり、カバンの中に頭だけ出して入れたりしてゐたのだ。そこに、5人ほどの年輩の女性客の方々がやつてきて、「まー、かはいい! 赤ちやん、赤ちやん」「鳥? 鳥?」(注・ポー店長は服に中に鳥のぬいぐるみを入れてゐる)?動くの? 動くの?」と大騒ぎになつたのである。それに対してKさんは律儀に「いえ、これは赤ちやんではありません。店長です」と答へてゐたのだが、その言葉は理解されず「かはいい赤ちやんねー」「いえ、店長です」「いいわねー、この帽子。よく赤ちやんに似合つてゐるわー」「いえ、この方は店長です」「喋る? 喋る? 赤ちやん喋る?」「だから、この方は店長です」「まー、いい子いい子!」「はい、店長ですから」と、もの凄いカオスがカウンター周りに渦巻き、私もトモコもどう介入して良いのか分からず、アタフタしたのであつた。DNAの支配とは恐ろしい。
ちなみに、その騒動の間中、ポー店長は愛くるしい表情で微笑んでをられました。
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