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2005年11月10日(Thu)

最澄と天台の国宝展 アート

 京都国立博物館に「最澄と天台の国宝」展を観にいく。天台宗と言へば、真言宗と並ぶ平安時代の仏教の宗派である。官命で唐に渡つてシナの仏教を隈無く収め、帰国した後に桓武天皇から鎮護国家を任された最澄が開いた宗派で、そのエリート然とした有り様は華々しいが、個人的には自費で唐に渡り、最澄がサッと撫でただけの密教を窮め尽くして、さらに法統まで継いで帰国し、様々な呪術を駆使して伝説を作りまくつた空海の方に惹かれるので、今まであまり天台宗には興味がなかつた。とはいへ、1200年に渡り日本を、京都を守つてきた巨大宗派であるので、もちろんその奥は深い。数年前にあつた「空海と高野山」展ほどの感銘はなかつたが、なかなか面白く堪能できた。

 なかでも良かつたのが、慈恵大師座像。慈恵大師は第18代の天台座主で、別名が元三大師。天台宗中興の祖で、生前からその異貌とともに抜群の超能力を誇ることで有名であつた。様々な伝説が伝へられるが、超能力によつて自ら鬼に変じ、魔物たちと闘つたといふ話が有名で、さらなる別名を“降魔大師”といふ。私は天台宗の中ではこの人に特に興味があつて、いつかは比叡山の元三大師堂に行つて、元三大師が鬼に変じた姿を描いたといはれる「角大師」のお札が欲しい! と思つてゐるのだが、なかなか遠くてね。だつて元三大師堂は比叡山の奥にあるらしいのですよ。根本中堂よりズウッと奥に。行くのはかなり難しいなァ。…で、この元三大師の座像があつたのだけれど、これがよい。確かに異貌で、迫力があつた。これなら鬼に変身できさうだ。

 滋賀の善水寺の秘仏、本来なら50年に一度しか開帳しない薬師如来像があつて、そんなものここに公開していいのか! と一寸ムッとしたけれども、なかなかイイ顔をしてゐて、眼福。さすが秘仏。が、やはり、そんなものここに公開していいのか? と思ふ。

 他にも密教の護摩檀や法具も展示してあり、なんか真言宗みたい、あ、天台も密教だつたッけ! と思ひあたつたりして面白かつた。その部屋には声明が流れてをり、身の引き締まるやうな、陶酔境に誘はれるやうな、不思議な気分になつたりした。

 せつかく京都にゐるのだし、比叡山に是非とも行かなければならんなー、と改めて思ひました。

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