やる事がある [ヤマネくん, テラリー]
ヤマネくん来店。実家に帰るため、しばしの暇乞ひにやつて来たテラリーと遭遇する。
「へー、実家に帰るんや。どれぐらゐ帰るの?」
「一週間と少し、です」
「そんなに帰んの! なんで? それ、楽しい?」
「いや、ボクには(実家で)やる事がありますから」
「! ……、格好いいやんテラリー。今時の若者とは思へないよ。普通は、あー暇! なんもやる事ない! 、て言ふのが学生の定番やけど。かういふ人間が、10年後20年後に同世代から抜け出してくるんだよなー」
「はい」
「はい、ッて……。でも、テラリー、もう就職活動なんとちやうん」
「いえ、ボクは院に進みますから」
「出た! とりあへず進路保留組!」
「いいえ、違ひます。ボクは大学に入る前から院志望でした。研究者を目指してゐるんです」
「へ? さうなの? なんで?」
「それは…ボクにはやりたい事があるからです」
「凄い! そんなに若いうちからやりたい事がハッキリしてゐるなんて! テラリーは幸せ者だねー」
「はい。自分のやりたい事をやれる道に進めるのは幸せです」
「うーん、バンザーイ! …ケンタロウさんはどうなんですか?」
私は未だに自分のやりたい事もやるべき事もわかんないよ。むむむー、将来どうしやうかなー?
「ははは、まだ悩んでゐるんですか。哲学者にでもなつたらどうです?」
んー、哲学者と詩人は食へないからなァ。とりあへず稼がんと。
「ははは、テラリーに還元して貰つたらどうです?」
うん、ま、それは当然そのつもりだけど。
「ええ!? さうなんですか!」
当たり前ぢやないか、テラリー。世話になつた人に恩を返せるのは幸せだぞ。マーヴィン・ゲイも教へてやつたぢやないか。
「そ、それは…」
「ははは、ボクの事も忘れないでね! いやー、テラリーの世話をしておいて良かつた。」
「ワ、ワッツゴーイノー!」
うーむ、果たしてテラリーは実家から帰つてくるだらうか。
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