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2014年05月21日(Wed)

5月11日〜5月20日 etc

ブトー

南仏からカップルのお客さんが来られました。そのお客さんが、ダンスを観たいんだけど京都だと何処でやってる?と尋ねられたので、「マイコダンス?」と尋ね返すと、「ノー、ノー、ブトー」と言ふので、ブトー?ブドーの間違ひか?と思ひ、「ブドー?」と言ひながら私がファイティングスタイルをとると、「ノー」と言って招き猫みたいな格好をします。それを観てトモコが「舞踏のことじゃない?」と私に囁きました。

ブトー、舞踏か!なるほど。と思ひ今度は「ブトー?」と言ひながら、口をパカッと開けて白目を剥くと、「イエス!ブトー!」と叫んで嬉しさうに爪先立ちでチョコチョコと辺りを歩き回ります。「サンカイジュク?」「イエース!タツミヒジカタ」「ビャッコシャ?」「イエース!オーノカズオ」などと言ひ合ひながら、お互ひ片足立ちになったり、身体を捻ったりしてゐましたので、まぁ、他にお客さんが居なくて良かったと思ひました。
それにしても、そんなもん京都で常時やってる訳がない。ちょい前に京大西部講堂で大駱駝館がやってゐて、カズ16が観に行っていたはずですが・・・。
とりあへずカズ16に電話して訊いてみたのですが、今はやってないとのこと。仕方ないので、UrBANGUILDの場所を教へ、あとは大阪のコモンカフェを教へておきました。そこらなら何か好みに合ふものがやってるかもよ、と。
うーむ、ブトーねぇ。

混沌

今週は雑誌社の取材が二つもありました。昨今、忘れられがちなオパールとしては珍しい。で、その時にカメラマンの人が色々と店内を撮影するのですが、ゴチャゴチャと物が並んだカウンターの上、そこには魔女や岡本太郎やtedや鉱物やウサギや死神や黒人や文楽やフレッドくんや天使やなにやかにやがあるのですが、そこを撮影しながら「混沌としてるねぇー」と呟いたのです。
それを聞いて私は「Confusion will be my epitaph」と、思はず心の中で答へました。
答へながら、あ、もしかしてさうかも、と思ったのです。
オパールは壁の色もみな違ふし、椅子や電燈なんかも色々と違ふものを使用してゐますので、よく「席によって全然雰囲気が違う。でも、なぜか凄く統一感がありますねー」と言ふお褒めの言葉を頂くのが常なので、私はそれを「多様なるものの調和」と呼び、オパールのコンセプトの一部と考へてゐましたし、それを私自身の信条とも銘とも信じてゐたのです。
しかし、もしかしたら私自身は「多様なるものの調和」ではなく、「多様なるもののそのままの混沌」ではないか、と閃いたのです。
確かに、トモコは魔法派なので「多様なるものの調和」でせうが(今のオパールはトモコが創りました)、私はむしろ混沌派。私の人生に対するイマージュは「廃墟の上で朝日を浴びて踊る」といふものですし。なにか物事を安易に纏めようとする力に対し、激しい反発を感じてしまふのです。混沌を混沌のまま肯定せよ!
とはいふものの、最近は踊り続ける力がなくなってきまして、廃墟の上に倒れ伏してしまひさうになる事も度々・・・。いや、こんな事ではダメだ!混沌を混沌のまま肯定するには、踊り続けるしかない。シェイクし続けなければ物事は分離する、といふ灰野敬二の言葉も頭を過ります。実は「多様なるものの調和」と「混沌を混沌のまま肯定する」は、同じコインの裏表の可能性があります。全員が独自でないと真の意味で“ひとつ”にはなれない、との灰野敬二の言葉もありました。
さて、また踊りを再開しませうか。

A.E.ヴァン・ヴォークト

私がヴァン・ヴォークトの小説を読まうと思ったのは、ホドロフスキーが自身のフェイバリットライターにあげてゐたからです。そこで最初に手に取ったのが「非Aの世界」。実はホドロフスキーは一般意味論にも一定の評価を与へてゐる様でして・・・一般意味論とは、コージェブスキーの考へ出した理論で、後のゲシュタルト療法や神経言語プログラミングにも影響を与へたとされ、戦前から戦後にかけて流行ったんですね。オカルティックな精神理論。それが60年代のカウンターカルチャーの時にちょい再燃した。グレゴリー・ベイトソンとかロバート・アントン・ウィルソンとか。まぁ、多分ホドロフスキーも同時代の雰囲気の中に居て、それの影響を受けたんだと推測されますが、ヴァン・ヴォークトもさう。彼も一般意味論に影響を受けた様で、その影響の下に書かれたのが「非Aの世界」といふ訳です。この接点故に、まずこの作品を読んでみました。
ふむ。まづ・・・訳が悪い!のは置いておいて、なかなかに面白いです。どこがと言ひますと、主人公が自分が何者なのか、なんのためにここに居るのか、さっぱり分からない、といふ設定で、敵は誰なのか、一体世界はどうなってゐるのか、もさっぱり分からない状態で色々と闘っていくといふ所です。この闘ひにおける武器が、一般意味論の理論である“非A理論”といふ事なのですが・・・これ、さっぱり訳がわかりません。どういったものなのか、よー分からん。
実は私、S.I.ハヤカワの一般意味論の解説書とかも読んでみたのですが、別に、特にどうって事はない。ごく常識的な人生訓が書かれてゐるだけの様な・・・。

気を取り直して、次は「宇宙船ビーグル号の冒険」を読んでみました。こちらはとても面白かった!確かに、ホドロフスキーのBD作品を彷彿とさせる感じはあります。
SF界では人気があるらしいネコ型生命体ケアル、とか、エイリアンの元ネタになったと言はれるイクストル、など、出て来る宇宙生命体も魅力的ですが、なにより味方側のビーグル号の内部で派閥争ひとかがあって、非常に不安定な状態で、正体の分からない未知の生物と闘ふ、といふ所が面白かった。
これらの事から言へるのは(って、たった2冊から判定してますが)、敵も味方もはっきりせず、今置かれてゐる状態もとるべき方法もはっきりしない、不安定で混沌とした状態に、主人公が強力な統一理論を持って臨む(「非A」では非A理論、「ビーグル号」ではネクシャリズム=総合科学)といふのが、これらの作品の魅力ではないでせうか。
まづ、世界は混沌としてゐる、といふ現実認識がある。で、それに対抗できるのが、人類の叡智の究極であるなんらかの統一理論である、と。

ホドロフスキーにも、さういった所があります。彼の場合は、タロットに体現されるオカルト理論(秘められた叡智)、聖書に対する「自然の本」としての叡智と世界観。これによって、混沌とした世界を御さうとするのです。
今回の来日でも、ホドロフスキーは我々人間個人が如何に自分の両親や祖父母を通して先祖全体と繋がってゐるか、ひいては全人類が繋がりひとつになるべきか、といふ事を力説してゐました。それは分かります。小我を捨て、大我につく、といふのは基本的に正しい教へでせう。
しかし!「混沌派」の私としては、どうしたってそこに引っ掛かりを感ぜずにはおれません。確かにその考へは正しいかもしれない。が、それが安易に世俗の世界に齎された時、それはファシズムや全体主義になってしまふ。混沌を混沌として肯定できない弱い精神が、安易な物語に頼ってしまひ、結果としてそこに入らない個人を抑圧する事になるのではないか?

無論、ホドロフスキーはそこらの事も十分に分かってゐるでせう。なんといっても、彼はスターリン主義者の自分の父との葛藤を経て、今があるのですから。
それ故に、父との葛藤の解消を主題としたこのたびの新作「リアリティのダンス」は興味深かった。まだ一回しか観てないので、未消化も甚だしいですが、現時点での私の考へは以下です。

混沌を混沌として肯定すること、全ての人が独自となること、は正しい事ですが、なかなかに難しい事でもある。人は混沌や独自に耐えられなくて、安易な物語に縋ったり、時には精神を病んだりします。そこで、病んだ精神を癒す、或は安易な物語に毒された精神を解毒するために、一時的な方便としての物語を処方する。これがサイコマジックなのではないでせうか。
しかし、あくまで一時的な方便に過ぎないので、浄化や解放が行はれた後は、それを絶対視しないようにするのが肝要。今回の映画は、同題の自伝本の映画化といふ事ですが、途中から内容が本とは大幅に変はります。つまり、世界に対する解釈は何重もあり得る、あり得なければならない、といふ事です。要所要所でホドロフスキー本人が出てきて物語に働きかけるのも、語り=騙りの構造を明示してゐるといへるでせう。

聖書が、実際に字で書かれ、その事によって固定し、現前した秩序を定める書であるのに対し、タロットは固定されない「自然の書」である、とされます。つまり、タロットには固定された一定の読み、解釈はありません。これはある意味「混沌を混沌のままに肯定する」といふ事ではないでせうか。
灰野敬二にとってロックがさうである様に、ホドロフスキーにとってはタロットが、「多様なるものの調和」といふ安寧と、「混沌を混沌のまま肯定する」といふ厳しさを、統一するものなのかもしれません。

なんにせよ、永遠にシェイクし続ける、永遠にダンスし続ける事が肝要である!まぁ、とりあへずの結論はこんな所です。

Comments

投稿者 荒木です : 2014年05月23日 13:16

魔法っ子、トモコさんにピッタリの本を見つけました。
「将来の予言」~歴史の解説とテクニック・ガイド~とありました。ニューヨークの出版社で1990年発刊。
占星術やタロット、八卦、易など世界の様々な占いについて解説しています。

画像・表紙について詳しくは明日のブログで!

投稿者 トモコ : 2014年05月24日 03:50

悪魔っ子の荒木さん、こんにちは!
情報ありがとうございます。
実は私、予言はしないのですが、
テクニックガイドって単純に面白そうです。
ブログ楽しみにしております。

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