これなに? [マツヤマさん]
マサユキくんがマツヤマさんに連れられて来店しました。
マサユキくんはよく来てくれるのですが、私はいつも掛け違ってしまって、会ふのは久しぶり。もうすっかり喋る様になってゐたので私はビックリしてしまひました。考へてみれば、マサユキくんも2歳なので、喋って当たり前なのかもしれません。
そこで私も、マサユキくんとコミュニケーションを図ってみました。
マサユキくんは好奇心真っ盛りの年頃。次々と色んなものを指差しては、「これなに?」と尋ねてくるのです。それに、私は大人としての意地と余裕を示しながら、次々と答へていきました。
「これなに?」
これは椅子の足だよ、椅子の足。
「これなに?」
これは椅子の背中。
「これなに?」
これは・・・椅子の手・・・かな。
「これなに?」
これは、机の足。
「これなに?」
これは・・・うーむ、机の・・・面(おもて)・・・。
「これなに?」
これか。これは・・・。
と、ここで私は戸惑ってしまひました。マサユキくんの指差してゐるのは、オパールに置いてある大テーブル。この大テーブルは何枚かの木を並べて継いで作ってあるのですが、わざとその間を開けてあるのです。まー、デザインですね(ちなみにカッシーナ)。マサユキくんは、その継ぎ目の空いてゐる部分を指差してゐるのです!ここは・・・なんだ?なんと呼べばいい?
しかし、あまり逡巡してゐるのも大人としてカッコわるい。私は咄嗟に頭に浮かんだ言葉を叫んでゐました。
これは、机の割れ目!
「机の割れ目!」と、マツヤマさんが素っ頓狂な声をあげました。
それを聞いて、私はしまった!と思ったのですが、もう後の祭りです。確かに、机の割れ目、は教育上良くなかったかもしれない。早期教育が叫ばれる昨今ですが、いくらなんでも2歳では早過ぎたかもしれません。マサユキくんが、自分の指をそこに突っ込みながら「割れ目?割れ目?」ときいてくるに及んでは尚更です。
私とマツヤマさんは、マサユキくんを間に挟んで、気まずい沈黙に陥りました。
と、その沈黙を破るマサユキくんの天真爛漫な笑い声。「キャハハハハハ!」それに引き続き、マサユキくんは私に対してかう言ったのです。
「割れ目と違ふわ!」
え?え?、ぢゃあ何なの?何なの、マサユキくん。
「このクルクル廻ってるの、なに?」
これは、レコード。いや、そんな事より・・・
「お歌、うたってる人、どこ?」
それは・・・・・・あそこ!あの黒い箱の中。ってか、割れ目ぢゃないなら何なの?マサユキくん?
「これなに?」
これは、髭。ボクの髭。おーひーげ。だからそれはいいとして・・・
「これなに?」
これ?これって、どれ?口?
「歯?歯?」
さうさう、これは歯。いや、分かったから・・・
「これなに?」
これ!だから、これは・・・机の割れ目!
「キャハハハハ!違ふわ!」
だーかーらー、割れ目と違ふなら、何なんだ!
いつまでも続く私とマサユキくんのやり取りに呆れ果てたマツヤマさんは、「そろそろ・・・」と言って、マサユキくんを連れて帰っていってしまひました。私は最後までマサユキくんに質問の答へを迫ったのですが、うまく躱されてしまった形です。うーむ。
二人が帰った後、ユキエさんに「マサユキくんとえらく仲良くしてましたねー」と言はれ、私はハッと気がつきました。これは、私とマサユキくんの精神年齢が同じ、といふ事を示してゐるのではないか?つまり、マサユキくんの精神年齢は40歳だといふ事です!
となれば、机の割れ目ぐらゐの事で騒ぐ事はない。私はホッと胸を撫で下ろしました。
それにしても、机の割れ目ぢゃないのなら何なのか。気になって今夜も眠れません。
Comments
投稿者 コサージュのまきです : 2010年06月26日 15:25
仕事中です。こっそり大爆笑です。
投稿者 元店主 : 2010年06月27日 00:30
まきさん こんにちは
最近の幼児は精神年齢が高くてビックリします。それにしても私と同じくらゐとは・・・。
ところで、机の割れ目、ぢゃないとしたら、なんなんでせうね?あれ。
投稿者 さえこ : 2010年07月02日 14:29
おひさしぶりです。
爆笑でございます!!!
正解なんなんですかね~
投稿者 元店主 : 2010年07月03日 02:14
さえこさん こんにちは
マツヤマさんにきいた所によると、マサユキくんは基本的にその日に覚えた言葉は何度も繰り返すさうなのですが、「机の割れ目」だけはあれ以後、一切口にしないさうです。
うーむ、これをどう解釈するべきか・・・。
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