彼女について私が知つてゐる二、三の事柄 [映画]
みなみ会館で『彼女について私が知つてゐる二、三の事柄』を観ました。ゴダールの1966年の作品です。
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主婦売春を描いた(?)映画なのですが、“主婦売春”といふ言葉から連想される生々しさは微塵もありません。と、いふか、これは主婦売春を描いた映画である、といふ事前のインフォメーションがなければそもそも主演のマリナ・ヴラディが何をしてゐるのか、といふ事さへもよく分からない。みんながてんでバラバラに、詩的なのか哲学的なのか無意味なのか、なんとも言へない台詞を画面に向かつて喋つてゐる。生々しい欲望も、感情も、描かれず、パリの郊外化の工事の様子、ベトナム戦争に関するインフォメーションが断片的に挿入される、といふ、非常にゴダール的な映画です。
ま、なんと言ひますか、ブヴァールとペキュシェが出てきますし、題名が『彼女について私が知つてゐる二、三の事柄』な訳ですから、つまりはこれは「断片的」な映画である、と。我々は世界については常に「断片的」に、「二、三の事柄」しか知る事ができない、全体に至る事はできない、と、それこそが人生だ! と、いふ、まー、人生そのものを描いた映画である、といふ訳でせう。なんとも分かりやすい。が、そんな簡単に分かつていいのか? といふ自省を強いるのがゴダールの映画な訳でして、一応分かつたつもりになつた所からさらに深く考へる必要があるでせう。
とはいへ、年末でもある事ですし、私もなにかと忙しいので、そんな事をやつてゐる暇はありません。資本主義批判? そんなもの糞くらへだよ!! ベトナムの代はりにイラクが爆撃されてゐる。我々は世界システムに対してボムしなければならない。ボム・ザ・システム & スタイル・ウォーズ。システムの持つ美しさと、廃墟の持つ美しさ。絶えず更新される美の観念。それは流れる水と治水工事。人為としてなされる環境保護。そして私は今日も東山の街を歩く。高さ制限の元で行はれる工事と溢れ、流れる観光客。私だけが逆方向に歩いていく。本日も、これから仕事です。
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