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2007年05月27日(Sun)

日本のヒップホップ 音楽

 カツヤマが来店しました。

「オガケンさん、雑誌の『ブラスト』が廃刊したのは御存知ですか?」

 え! さうなの、知らなかつた。

「ボクはこれは、日本のヒップホップの敗北だと思つてるんですよ。そこで…オガケンさんは、何故日本にヒップホップが根付かなかつたとお考へですか?」

 そんなの分からないよ!

BLAST (ブラスト) 2007年 05月号 [雑誌]

シンコーミュージック・エンタテイメント (2007/03/20)

「ボクは、ムロさんが悪いと思つてるんですよ」

 へ? なんで? ?

「ムロさんたちが、スティル・ディギンとか言つて、ヒップホップは元ネタを知つてないと恥ずかしい、といふ風潮を作つたのが悪いと思つてるんです。あのせゐで、後から来た若い人たちがみんな萎縮・敬遠したのが良くなかつたんではないかと」

 いや、それは変な理屈だな。“根付く”とかさういふのは、敷居を低くして誰でもかれでも引き入れる、といふのとは違ふだらう。敷居が高いからと言つて入つてこない連中は、もとから関係なかつたんだよ。そんなのが入つて来ても、中身が変質するだけぢやないか。それこそ、“根こそぎ”だよ。

「さうですかねー…。『ブラスト』でも総括みたいな事をやつてまして、そこではジブさんが悪い、みたいな感じになつてたんですよ」

 あ、私もジブラは良くないと思ふな。

「ええー! さうかなー、ボクはジブさんはいいと思ふけど」

 いや、私も別にジブラ一人のせゐで日本のヒップホップがダメになつたと言つてる訳ぢやないよ。大体、こんなの誰かの所為とかさういふ問題ぢやないでせう。もつと大きな背景と構造の故だらうし。ただ、私はジブラからは全くヒップホップを感じないんだよね。あれこそヒップポップ、といふか、ヒップホップの意匠を纏つたポップミュージックだと思ふ。キングギドラは別だけど。で、そんなジブラが、ある意味日本のヒップホップを代表してゐる形になつてるのが、日本のヒップホップを歪めた一因ではないか、とは思ふ。

「それぢや、ライムスターはどうですか」

 ライムスターは、重要なグループだね。私も大好き。でも、功罪相半ばする、とは思ふ。そもそも私の考へでは、ヒップホップとは黒人たちのソウル復興運動なんだ。チカーノたちも居るけど、彼らにとつても事情は同じ。抑圧された民族のソウル(魂)復興運動。だから必然的に、支配階級である白人たちへの闘争といふ要素と、自分たちの共同体の復興、といふ側面を含んでゐる。でも、日本では上手くそこと繋がらなかつたでせう。日本を属国支配してゐるアメリカへの闘争とか、日本民族の魂の復興とか。んー、演歌とリンクするとか。

「ははは! そんなの当たり前ぢやないですか」

 さうかな。私はその方向はあり得たと思ふけど。…とにかく、ライムスターは、ヒップホップといふ舶来の音楽が好きな自分たちを“マイノリティー”と規定して、日本の“マジョリティー”の感性への戦ひを挑んだ訳だ。それはそれなりに意味があつたとは思ふけど、所詮それは趣味の争ひに堕してしまつた。ま、人生における戦ひとは趣味を巡るものだ、といふニーチェの言葉もあるけれど。…でも、いはゆる“ストリート”が、“クラブ”や“音楽同好会”の事では、底が浅過ぎる。そんなもの、根付かないと思ふよ。

「ぢや、オガケンさんの考へる、ザ・日本のヒップホップは誰なんですか?」

 それは…ケーダブだよ。

(爆)

 いやいや、ほんと、ケーダブにはヒップホップがあるよ、確実に。でも、そのケーダブが今や、なんか頭のをかしい人みたいな扱ひになつてるだらう。それが日本のヒップホップの現状。確かに、酷いな。ケーダブを第三会議室でキャラクター化した宇多丸の責任も結構あるかも。

「分かりました。ぢや、オガケンさんの考へる、日本のヒップホップがダメになつた理由は…」

 一寸待つた! なんか引きずられてきたけど、別に私は日本のヒップホップがダメになつたとか、別に思つてないから。それは私が現場に居ない一ファンに過ぎないからかもしれないけど、別に『ブラスト』が廃刊になつたからッて…。業界の事情は分からないけど、そんなのと関係ない所から、本当にいいものは生まれてくるんぢやないの。むしろこれからぢやない? もし本当に日本にもヒップホップが生まれるとすれば。

「ぢや、そんなオガケンさんに是非オススメしたいのが…THA BLUE HERBです! 復活して第三期に入つたんですが、是非ライブ観て下さい! 京都にも来ますから」

 ああ、THA BLUE HERB か。ファーストは聴いたけど、よく分からなかつたんだよね。面白かつたけど。

「いや、彼らはライブを観ないとダメ! マジで凄いです! 是非!」

 うーむ、確か01くんも好きだと言つてたし、興味はあるんだけど、この日、仕事だしなぁ…。

Comments

投稿者 カツヤマ : 2007年06月07日 03:59

日記で取り上げてくださってありがとうございましたー!
前田くんが、「顕太郎さんとヒップホップ話したい」って言ってました。

ボク的には、顕太郎さんのJAY-Z考がよかったです!
ま、いいか。もうこの話は……。

投稿者 店主 : 2007年06月08日 04:48

JAY-Z考か。“メイクマネ”ーと“セルアウト”を巡る話だな。この件に関しては、まだまだ言ひたい事もあるのだが・・・。

前田くんには「それならオパールに来なさい」と伝へて下さい。

投稿者 リスa.k.a.前田 : 2007年06月17日 18:38

ご無沙汰してます。日記面白かったです。

僕もオガケンさんと同じで日本のヒップホップはダメになったとは
全く思っていません。ブラストが廃刊になったのは単に編集者の怠
慢だと思います。ただ少し前まではいわゆるマジョリティーに対す
るカウンターとしてのヒップホップは日本にも確かにあったのです
が(THA BLUE HERB、MSC、降神など)、最近はあまりそうい
感じが良く分からなくなってるかなーと。

ちなみに、個人的にライムスター大好きなグループだったのですが、
武道館ライブ→活動停止というベタベタな流れで少し前から感じてた
違和感が決定的になりました。

最近ではKREVAが凄いなと思ってます。
あと、Kダブとカニエ・ウエストはなんとなく近いんじゃないかと(笑)。

あ、オパールに行かないと!

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