近松座歌舞伎公演 No.18 [歌舞伎]
京都芸術劇場・春秋座に「坂田藤十郎襲名記念・近松座歌舞伎公演 No.18」を観に行きました。
“近松座”とは、現坂田藤十郎が扇雀時代に発足させたもので、近松門左衛門の作品を研究・研鑽し、上演を重ねて広く世に問ひ、ひいては上方歌舞伎復興の一助とならん、とするものです。それの(国内における)十八回目。坂田藤十郎の名跡を継いでからは初めての公演となります。
ま、私にとつては何もかもが初めて尽しなんで、どんなもんなのかなー、といふ気持ちで行つてきたといふ次第です。
最初は藤十郎の孫、中村壱太郎による『鏡獅子』。壱太郎は16歳。史上最年少での『鏡獅子』、との事です。
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私はこれまで2回、『鏡獅子』は観ました。最初は今年の正月・歌舞伎座における中村勘三郎によるもの。次はDVDで海老蔵のパリ公演におけるもの。そして今回が3回目。ハッキリ言つて、最初の勘三郎のやつが凄過ぎたんで、あとの二つが見劣りして仕方が無い、といふ事があります。年齢的、芸歴的にもこれは当然なのかもしれませんが、演じる人によつてこれほど違ふものか、と興味深くもありました。
ただ、楽しみ度、といふ事でいへば、今回はかなり高かつた。それはやはり、『鏡獅子』3回目だからでせうねー。3回目となると、もう大体どんなものかは分かつてゐます。分かると色々、今まで見えなかつたものも見える様になりますし、今までとの比較対照、といふ楽しみもあります。だからかなり面白かつた。初々しいといふか、固いといふか。扇子を回すのッて、やはり難しいんですねー。
藤十郎によるご挨拶を挟んで、『廓文章 吉田屋』。これは上方歌舞伎の、いはゆる和事芸をみせる代表狂言のひとつ、といふ事で、要は廓の太夫と若旦那がイチャイチャしたり痴話喧嘩をしたりする、といふ他愛のない狂言です。もちろん、この他愛のなさが肝な訳で、これをバッチリ魅せる訳です。若旦那・伊左衛門は坂田藤十郎。相手役の傾城・夕霧太夫は中村魁春。この中村魁春こそ、あの戦後の名女方・六世中村歌右衛門の息子(養子ですが)なのであつたー!
ッて、歌舞伎ファンの人にとつては「何を今更」といふ話ですね。いや、私は今年になつてから歌舞伎に嵌つた訳ですが、色々と歌舞伎の本なんかを読んでゐるとですねェ、ああー! 中村歌右衛門が生きてるうちに観ておくんだつたー! と、無駄な後悔に身を焦がしたりしてゐる訳なのですよ。だから、その子であり、歌右衛門の薫陶を受けた女方である中村魁春を、是非とも観たいと思つてゐた訳なのです。
そして! 観ました!
おお、これは……少し、厳しいかな? 確かに、上手いのでせうが、なんといふか、当時江戸の高尾、京の吉野太夫と並んで三都の遊君を代表する絶世の美女、二十代で夭折した浪速の夕霧太夫、といふ風には見えなかつたのです。どうにも、をじさんに見えてしまふ…。これは、私の研鑽がまだ足りない故でせうか。菊之助キレイー! とか言つてゐる様ではダメなんでせうか、女方の見方として。うーむ、歌舞伎は奥深いです。
春秋座、一寸客席の照明が明る過ぎる、と思ひました。
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