グエムル [映画]
TOHOシネマ二条にて『グエムル』を観る。『殺人の追憶』で映画ファンを唸らせたポン・ジュノ監督の新作である。なんと怪獣映画。そしてこれがまた、うう〜む、と唸らざるを得ない、傑作映画となつてゐたのであつた。
なんと言つても、志が高い! 全ての偽善的なもの、独善的な権力、などに対する闘ひが、随所で敢行されてゐる。具体的には、痛快なまでの反米映画となつてゐるのだ。
世評をみてゐるとこの映画、「なんか変な映画」といふ声が結構あるのだけれど、私にはさうは思へない。非常に正統的な怪獣映画だと思へる。と言つても、私の言ふ“正統的”とは、ゴジラの第一作目の様な、といふ意味である。
初代ゴジラにおいては、ゴジラは、戦争によつて死んだ人々の怨念であつた。原爆投下といふ史上稀に見る凶悪犯罪によつて殺された人々、南海の戦場でアメリカ兵と闘つて散つていつた人々。これらの人々の犠牲の上に現在の日本はあるのに、その事を忘れ、アメリカの庇護のもと、ヌクヌクと生活を享受してゐる日本人たちに対して、これらの人々の怨念が形となつて暴れ出たもの、それがゴジラであつたのだ。
グエムルも同様である。韓国も日本と同じく、いやもしかしたら日本よりもつと酷く、アメリカに間接支配されてゐる。人々はその事を見ない様にしながら、普段の生活を享受してゐるのだが、これは“偽善”と言つてよいだらう。この事に対する怒りが、“グエムル”となつて顕現するのだ。ドドーン!!! グエムルを退治しようとする駐韓アメリカ軍に対して、市民によるデモ=叛乱が起こるラストは圧巻である。私は茫然と感動してしまつた。
また、韓国社会の(アメリカによる)近代化に取り残され、愚物と見なされてゐる主人公ソン・ガンホが素晴らしい! 彼の存在そのものが、現在の韓国社会、ひいては日本社会、さらにはアメリカによるグローバリズム体制下にある世界に対する、批判となつてゐる。なんか、ダンカンみたいでしたが。
ここまでアクチュアルで戦闘的な映画を撮りながら、それでゐて随所にオフ・ビートの笑ひが横溢し、娯楽作品としても一級品。たぶん、これは今世界で最も面白い映画のひとつではないか。と、他の世界の作品を碌に見てないくせに断言してしまふ程の傑作。
なにがなんでも観る事をオススメします。
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