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2006年06月22日(Thu)

藤田嗣治展 アート

 京都国立近代美術館に「藤田嗣治展」を観に行く。藤田嗣治、レオナルド藤田、と言へば、一部の美術ファンには昔から非常に人気のあつた人だけれど、一般的には抹殺に近い扱ひを受けてゐた。それは大東亜戦争中に戦争画を描いた画家たちのトップであつた、といふ事から、戦後激しくバッシングされ、責任を一人で負ふやうに要請されて、そんな日本に絶望した藤田が祖国を捨てた、といふのが直接の原因だらう。

 藤田はフランスに渡り、フランス国籍を取得して、そのまま日本に帰ることはなかつた。藤田に言はすと、私が日本を捨てたのではなく、日本が私を捨てたのだ、といふ事になるのだけれど、さういふ気持ちも分からないではない。戦前の藤田は、世界で通用する数少ない日本の画家のひとりだつた。実際、フランスではスターであつた。そんな藤田は、かへつて日本では嫉妬とヤッカミの対象となる。日本的なものを面白をかしく外国に売り渡す道化・宣伝屋、日本の恥、とまで言はれたらしい。が、戦争が激しくなり日本に帰つてきた藤田は、戦争画の傑作を次々と発表し、圧倒的な支持を受ける事となる。やつと祖国でも認められ、人気を博した藤田。しかし、敗戦を機に、日本からまたしても手のひらを裏返すやうな仕打ちを受ける事となる。これでは、本人も絶望するだらう。

 そんなこんなもあつて、今回が日本における初めての大回顧展となるやうだ。やつと日本でも再評価される藤田。昔からレオナルド藤田ファンであつた私としては、非常に嬉しい。嬉しいのだけれど、なんだかやたら大流行りで会場にも人々が列をなしてゐる、と聞けば一寸うんざりする。そもそも混んだ美術館は大嫌いなのだ、私は。それに、お前ら今まで藤田なんて無視してきたくせに! といふ、なんともイヤラシい気持ちまで湧いてきて、そんな自分にも嫌気がさしてきたりして悶々としてゐたのだけれど、本日は雨。わーい、雨だ。これなら人が少ないかも! と、半ばルンルンと美術館に向かつたのであつた。

 ま、そこそこ混んではゐるけれど、これなら許容できる範囲である。初期の作品から晩年のものまで、画家の一生が一望できる展示となつてをり、正しく回顧展といふ趣き。ところで、私やトモコにとつて、藤田と言へば「子供」と「猫」である。要は戦後の作品で、主にそこに親しんできたのだけれど、今回印象に残つたのは、南米を旅行して描いた作品と、戦争画。南米旅行の作品群は、今回初めて見る(少し前に芸術新潮で見てゐましたが)。こんなものを描いてゐたのか、これはソーシャルリアリズムではないか! と、驚嘆。ディエゴ・リベラとも仲がよく、メキシコの壁画運動にも影響を受けてゐた、と知り、どちらかといふと耽美派で社会的なことには興味のない人なのでは、と勝手に思ひ込んできたこちらの偏見がみごと覆されました(とはいへ、やはり基本は耽美派だと思ひますが)。面白い!

 で、戦争画。実は今回一番楽しみにしてゐたのがこの戦争画で、会田誠が自分の作品で取り上げてやたら有名になつてしまつた「アッツ島玉砕」をはじめ、何点かの戦争画が展示されてゐたのだけれど、想像以上に暗い色調に、ビックリしてしまつた。ハッキリ言つて、目のあまり良くない私には何が描いてあるのか非常に分かりづらかつた。照明の関係もあるのかな? もつと壮絶で濃厚なものを想像してゐただけに、なんかペラッとした印象を受けてしまつた。このペラッとした所が、藤田の藤田たる所以、なのかもしれない。

 ううむ、駆け足で書いてきて、疲れた。…ま、そんな感じー、なので、まだまだ7月23日までやつてゐるので、興味のある人は是非。なんて書かないでも、みんな行くのかな?

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