数式の美しさ [読書・文学, ヤマネくん, 数学]
小説『博士の愛した数式』を読んだので、猛烈に数学の本が読みたくなつた。これぐらゐの効用は、この小説にはあるといふ事だ。で、私は部屋の隅に無造作に積まれてゐる数学本の中から一冊抜き出して、読むことにした。『数学の不思議』カルヴィン・C・クロースン(青土社)。5、6年前に買つた本かな。この機会を逃すと、また10年ぐらゐ積まれッぱなしになる怖れがあるからな。気分の乗つてゐるうちに、気合ひをいれてページを捲つた。
さて、数学の魅力とは、何より“美しい”といふ事にあるやうだ。数学に惹かれる人は、みんなその美しさに惹かれるやうで、逆に言へば、数学に美を感じない人は、数学とは無縁の衆生、といふ事になる。数学の美しさ、とは、何より数式の美しさ、の事である。数式。あの数字や記号が横一列にズラズラ並んだり乗ッかッたりしてゐる奴である。あれを見てゲンナリするやうでは、ダメなのだ。と、いふ事は、私は数学ダメぢやん。…うーむ、それは納得いかないなァ。
しかしながら、数学を愛する人たちが口を揃へて「美しい!」と叫ぶ、あのオイラーの公式。あの美しさを、私が分かつてゐるとは、あまり思へないのだ。確かに、凄い、とは思ふ。πやeといふ超越数に虚数が一緒になつてゴチャゴチャのはずなのに、そこに “1”が加はると、ゼロになる、といふのは。確かに、凄い。そしてヤマネくんなんかは「それでイイんですよ! “凄い! ”とか、“気持ちいい! ”とか、さう思ふだけで!」と言つてくれるのだが、それでもどうも自分では納得いかないのである。そこには、やはり自分の越えられない壁があるやうに思ふ。
ううむ、所詮私のやうなバリバリ文系の人間には、数式の美しさを理解するのは無理なのか。…と、考へてゐたのだが、なんと! 私はこの『数学の不思議』を読んでゐて、初めて、この数式は美しい! と感嘆する体験をしたのである! ドドーン! その問題の数式とは、といふか数式群は、ラマヌジャンの作り出した無限級数の方程式群である。無限級数とは、無限の数を足していくとひとつの値になる、といふものだが、もともと私はこの無限級数といふものには大いに惹かれてゐた。だつて、無限に数を足すとひとつの値になるんだよ。変ぢやないか。でも、ま、その程度で止まつてゐたのだが、この本に載つてゐるラマヌジャンの方程式群ときたら! ここに書き写せないのが残念だが(書き方が分からない!)、形がとてもシンプルで美しい。そして、その単純で美しい式を無限に足すと、ゼロになつたり、2分の5になつたりするのである。どうやつたらこんな方程式を考へる事ができるのか、不思議でならない。人智を越えたものを感じてしまひます。いや、大袈裟でなく。
とにかく、とても興奮した。…が、ま、やはりそれ止まりなんですけど。
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