オイシン好況 [テラリー]
オイシン来店。「いやー、店主、何を不景気な顔をしてゐるんですか! もう世の中は好景気なんですよ。うちの会社も去年の何倍もの収益があつたし、やー、好況、好況!」
……な、な、なにー! オパールはいまだ不景気のどん底を這ひずり回つてゐるぞ! 去年に較べて収益大幅ダウンだ。…まずい。
「かー! ダメですねー。ま、そのうちオパールにもいい目が廻つてきますよ。それまで辛抱して、精進して下さい!」
オイシン…随分と偉くなつたもんだなァ…。
「ハッハッハ! ボクも課長ですからね。部下もゐるんですよ。ええー、ぢやあ、ワインのボトルお願ひします。一番高い奴!」
と、オイシンはすつかり好況なのであつた。私は暗く落ち込まざるを得ない。本当に世の中好況なのだらうか。京都は、観光地や河原町周辺はともかく、三条あたりになるとメッキリ人がゐないけどなァ。それとも、不況なのはオパールだけなのか。むむむー……さうだ、あれがあつたな。タカハシくんからの東京土産のお菓子。とりあへず二種類あるから、隣のテラリーと分けて食べてくれ。
と、私はオイシンにお菓子を渡した。が、オイシンは好況のあまり人の話を聞いてをらず、二つとも自分のものだと思つたやうで、ひとつを頬張りながら、もうひとつを手元に置いてゐる。おい、オイシン、ひとつはテラリーのだから、それを分けてやつてくれ。
「!!! ……・えええ〜、し、しまつたァー。美味しさうな奴を後に残してゐたのに〜。テラリーの分だとは!」
「あ、オイシンさん、半分こしますか?」
「い、い、いらん! テラリーの情けは受けん!」
さすがオイシン、好況だな。
「も、もちろんですよ! ……クッソー!」
ははは、ぢやあ、可哀想だからこれもやらう。テラリーの実家土産のおかきと、アツコさんのデズニーランド土産のチョコレート。はい。
「…………・」
ん? どうした。いらないのか?
「いや! いります! ……どちらをテラリーにやるかで悩んでゐるんです」
ははは、それはどちらもオイシンが食べていいんだよ。
「ええ! ホントですか! …ヤッター!」
オイシン、好況だな。
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