自民党は圧勝したのではない [憂国]
ババさん来店。私が、やー、自民党圧勝してしまひましたねー、と言ふと、「いや、それは必ずしも正しくはありません。確かに獲得議席数だけ見ると自民圧勝に見えますが、それが小選挙区制のマジックといふもので、得票率で見ると、自民と公明を合はせてやつと半分に過ぎないんです。つまり、自民は辛勝した、とも言へる訳です」と答へた。
さうなんですか! 自民の得票率はそんなに低いんですか。それなら…マスコミなんかで「自民圧勝!」とか騒いでゐるのは情報操作ですね。
「全くです。マスコミは完全に自民の手下ですよ。今度の選挙もマスコミの洗脳工作で自民党は辛うじて勝つたんです。自民党に入れたのは、若年層が多いらしいですから。政治のことを何も分かつてゐない、普段は何の興味もない若者たちが、マスコミに踊らされてホイホイと投票会場に向かつて自民に入れたんです。ううーむ、まんま衆愚政治、ファシズムや!」
「自民党が圧勝したんぢやない、といふのはどういふ意味ですか?」と、横からハッシーが発言した。うむ、ではハッシーにも分かりやすいやうに説明しやう。
小選挙区制といふのは、全国を小さな選挙区に分けて、そこから一区につき一人だけを選ぶ制度なんだ。だから、話を簡単にするために、政党を自民と非自民のふたつ、選挙区の数を10個として考へると、全ての選挙区で自民が100票、非自民が99票獲得したとして、得票率は自民=100票×10区=1000票、非自民=99票×10区=990票となる。1000票vs990票でその差はわずか10票。ほとんど差はない、と言へる。ところが獲得議席数で見ると、たとへ1票差でも勝ちは勝ち、負けは負けだから、全ての選挙区で自民が勝つたことになつて、自民=10議席、非自民=0議席、となつて、自民の圧勝! といふ風になる訳だ。今回の選挙も、獲得議席数だけで見ると確かに自民の圧勝なんだけれど、得票率、つまり支持した人の数で見るとあまり変はらない、自民党はなんとか勝てた、といふ風になる。だからマスコミが「自民圧勝!」と騒ぐのはをかしい。さういへば、まるで国民の大部分が自民党を支持したやうに思へるだらう?
「ええ、さう思つてゐました」
ところが違ふ。得票率=支持した人の数でみると、自民党以外の党を支持した人の方が多い、といふ事になるんだ。自民党と公明党を合はせて、半分なんだから。だからこれからハッシーも、もし「自民圧勝や」と言つてゐる人がゐたら、「いや、それは違ひます。自民は辛勝したんです」と言つて、今説明したやうな事を教へてあげてくれ。
「分かりました! 任せてください。…ところで、シンショウ、て何ですか?」
……大丈夫かな。
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