地震・断筆 [可能涼介さん]
可能涼介来店。十日間ほど東京に行つてきた帰りだと言ふ。
「東京の連中はみんな地震に怯えてゐたぞ。寄ると触るとその話題だ。地震雲を見た、といふ噂とかが飛び交つてゐるんだよ。これは本当に来るかもしれないぞ、でつかい地震。人間もやはり動物だから、直感的に分かつてみんな動揺してゐるんぢやないか? ネズミみたいに。」
んー、まあねェ。でも、それッて、みんな案外楽しんでゐるんぢやないの。みんな密かに地震が来るのを待望してゐるんだよ。全てをチャラにしたい! とか思つてゐるんぢやないかなァ。さう簡単にチャラにはならないんだけどね。
「さうさう、それはその通り。でも、さうやつてみんながひとつの事を望んでゐると、オカルトぢやないけど、実際その通りになつたりするんだよ。だから、来るかもな、大地震。ああ、無事に帰つて来られて良かつた。」
それ、お前自身が望んでゐるんぢやないのか、地震。
「それはさうと、どうやら中原くん(中原昌也)が断筆宣言したらしいぞ。現在連載中の各出版社に、断筆します、といふファックスを送りつけたらしい。それで連載を放り出したらしい。何人かの編集者に聞いたから、多分本当だと思ふけど…でも、このまま業界内でなだめすかして、有耶無耶に収めてしまふ可能性も高いけどな。」
ふーん、なんでまた?
「イヤになつたんぢやない? 色々なことが。突然、全てを投げ出したくなつたんだよ、多分。ビートたけしもツービート時代によく蒸発したらしいぞ。でも、何故かきよしが見つけだして来ちやう。」
なるほど。地震と一緒かな。全てをチャラにしたい。…東京、といふか日本全体に強烈なストレスがかかつてゐるからなァ、ここ最近。しかし…さう物事は簡単にチャラにはできないんだよなー。革命で世の中がよくなるなんて幻想だから。
「結局、自分のやるべき事を、コツコツ辛抱強くやるしかない」
さうだな。……筋トレでもやるか。
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