予言俳句 [俳句]
カズ16来店。もうすぐ“俳句チェンバー”だが、カズは俳号を決めたのか?
「いや、まだなんです。ケンタロウさんは決めたんですか?」
もちろん。“煙草(えんさう)”だよ。
「エンソー?」
“煙草”と書いて“えんさう”と読む。ま、一応カフェの店主な訳だし、なにかそれに関係あるものといふ事で、とりあへずは“珈琲”といふのを考へたんだけれど、それぢやあ“小川珈琲”となつて、なんかパクリみたいだしなァ。で、珈琲とくれば煙草だらう。コーヒー & シガレッツ。といふか、「船を建てる」だな。で、“小川煙草”。さらに、これは号の定番だけれど、字を変へて、“緒川煙草(をがはえんさう)”とした訳だ。
「いいですねェ。ボクのも何か考へて下さい」
う〜む、カズか…。カズ…ナズ…イルマティック…ナズトラダムス……。うん! よし! カズトラダムスだ!
「え、ええー!! 何ですか、それ」
いいぢやないか、カズトラダムス。**(ここに名字が入る)カズトラダムス。なんか前衛劇団の団員みたいだけれど、これによつて、カズ16は自らの俳句のスタイルも確立できる訳だし。
「ええ?」
つまり、予言俳句を詠むんだよ!
「予言俳句!」
俳句の中に予言を詠み込むんだ。たとへば…うしとらの 金神来る 七の月。
「はァ」
猿が吼え 牛が暴れる 晦日かな。…とかな。カズ16も詠んでみな。
「ええー!」
何でもいいから。カズトラダムスなんだから、さァ。んー、ぢやあ、自分の未来を詠んでみな。
「はい。ええと…。レコードを 捨てられて泣く 四十歳」
…す、凄い。それ、絶対当たるよ。さすがはカズトラダムスだ。
「鬱になり 患者の腹を 切りまくる」
怖い! 怖いよ、カズ! …いや、カズトラダムス!
「白髪の 震へる指にて モルヒネ打つ」
う〜む、予言俳句恐るべし。
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