フォース [etc]
タショくん来店。「いつも酔つ払つてやつて来てスイマセン。でも、ボクは自分の奥さんを愛してゐますから」と言ふ。タショくんによれば、自分の奥さんは自分を肯定してくれ、妄想を何倍にも拡げてくれる相手なのださうだ。彼女のゐない人生は考へられない、といふ。だからタショくんは、会ふ全ての人に結婚を勧めてゐるのださうだ。結婚は自分の妄想及び理想を何倍にもしてくれる、故に素晴らしい、と。
「いや、それは一寸違ふんぢやないですか」と、powerくん登場。
「ボクの場合、結婚して自分の持つてゐた妄想・理想は完膚無きまでに叩き壊されました。あんたそんなんぢやダメやん!!! と、ビシッと指摘され、ボクの人生でここまで完璧に自分が否定された事があつただらうか、いやない! と、叫びだしたくなる程でした。自分が否定され粉々に砕かれる。でも、これがなかなか快感なんですねー。これぞ結婚の醍醐味だと思ひます。」
なるほど。ところでタショくんは自分の生徒さんを連れてきてゐたのだが、なんとその若者の名前はマスオくんといふのであつた。素晴らしい名前だ。すでに婿養子になる事が決定されてゐるかのやうだ。が、名前の良さではpowerくんも負けてはゐない。何と言つても、“power”だよ! 英語だよ、日本人のくせに。
「powerはハンドルネームですやん! 本名は違ひます」
ほう、さうだつたのか。ぢや、本名は?
「フォース、です!」
おお! カタカナか! こりゃまた!
…で、実を言ふと、私は本日、この“力”の塊のやうなpowerくんと、ジェンガエクストリームで対決しなければならないのであつた。しかもpowerくんはジェンガ初挑戦。といふ事は、ビギナーズラックといふ“運”がもれなくついてくるではないか! “力”+“運”を兼ね備へた相手に勝つのは至難の業である。しかし、それを成し遂げてこそ、真の強者と呼ばれるに価するのではないだらうか。では、いざ、勝負!
……負けました。
やはりな、予想通りだ。しかし! 負けると分かつてゐる闘ひに敢然と向かつていくのが、真の勇者ではないだらうか。真の強者にはなれなかつたが、真の勇者にはなれたやうな気がする。でも、できれば私は藁しべ長者になりたいです。
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