inhale! inhale! [映画, powerくん]
さう言へば昨日POWERくん御夫妻が来店してゐて、私はちやうど帰るところだつたのだけれど、話が思はず『ミリオンダラー・ベイビー』の事に及んでしまひ、ついつい盛り上がつてゐるうちに、閉店までゐ座つてしまつた。しかしそれだけの事はあつた訳で、当然の事ながらPOWERくんは私と観てゐるところが違ひ、その点を話し合ふのは非常に面白く、且つ有益であつたので、そのうちの些細な事を書き記しておかうと思ふ。
まづ、POWERくんがとても気になつたのは、ボクシングジムの壁に書いてある落書き。それはヒラリー・スワンクが練習してゐるバックにズーッと写つてゐて、しかもピントがあつてゐるので「多分、わざと写してゐるな」とPOWERくんは思つたらしいのだが、その落書きとは、“勝者は、敗者がやりたがらない事をやるだけだ”といつたやうな意味の英文だつたらしい。(Winner only do what loser do not willing to do、とか、そんな感じ、かな?)うーむ、私は全く見えてゐませんでした。しかし、これは大切な点だな。以来、POWERくんは、自転車に乗りながらも、「むむー、Winner only do what……」と呟いて、明日への意欲を高めてゐるといふ。
もうひとつ。イーストウッドが、試合中に鼻を折つて出血したヒラリー・スワンクの血を止めるシーンで、スワンクの鼻の穴に巨大な綿棒のやうなものを突ッ込みながら「息を吸へ!」と叫ぶところがあるのだけれど、最初スワンクはさう言はれても息を吸ふ事ができない(吸はない)。が、何度か言はれてやつと息を吸ひ、血が止まる。とても緊迫したシーンなのだが、私はこれを、最初は苦しすぎて息を吸ふ事ができなかつたのが、最後になんとか気力を奮ひ起こして息を吸ひ、事なきを得る、みたいに解釈してゐた。ところがPOWERくんに拠れば、最初イーストウッドは「inhale!inhale!(息を吸へ!)」と叫んでゐたのだが、無知・無教養のホワイトトラッシュであるマギー(スワンク)には言葉が難しくて通じず、「breathe!(息を吸へ!)」と簡単な言葉で言つてやつと通じて、マギーは息を吸つた、といふ事らしい。つまり、映画の中で何度も出てきた二人の階層の違ひが、鋭く現れてゐるシーンだつたといふのである。うーむ、これも気づかなかつた。字幕はちやんと訳してあつたのだらうか。
と、まァ、こんな感じ。やはり、英語の勉強をやり直すべき、かな。
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