5.5 [マツヤマさん, バトル]
マツヤマさん来店。
「さァ、誰かボクとジェンガをやらう!」
と言つて、カウンター席ではなく、フロアの席に座つた。むろん、フロアの席の方が机が広く、ジェンガには最適だ。この呼びかけに応へたのはテラリー。実はテラリーは先日、マツヤマさんにジェンガ対決で負けてゐるのだ。
「リベンジさせていただきます」
テラリーは一礼してマツヤマさんの前の席に座り、ここに静かな闘ひが始まつた。
一方カウンター席にはハッシー & YO!ちやん、ジュリさんが座つてゐた。ハッシーは「このあいだYO!ちやんに、また怒られたんです。どう思ひます?」と、我々にしきりに訴へかける。あのな、ハッシー、二人の間の事を公の場に持ち出すなと言つただらうが。俗に、夫婦喧嘩は犬も食はん、と言つてな、夫婦や恋人の間の問題には、他人は容喙できないんだ。だから、そんな事をするとそこにゐるみんなが困るから止めなさい。
「おおおー!」テラリーが叫んだ。ジェンガの塔がかなり高くまで積み上がり、ユラ
ユラ揺れてゐる。ジュリさんは、「最近は煙草が吸へない茶店が増えて難儀するわ」と紫煙を燻らせながら言ふ。そしてそのまま花粉をDIS! 可能もDIS! 「花粉と可能は女性の敵や!」と、身も蓋もない宣告を下す。澎湃と沸き起こる拍手と歓声。「その通り! その通り!」人々は熱狂のうちにそれぞれプラカードや旗を持つて行進を始めた。各所から続々と集まる人の群れ。それらは波となり渦となつて奔流のやうに街を流れ、中心地にあるバベルの塔を取り巻き、轟然と揺れた。
オイ! オイ! オイ! オイ! オイ! オイ! オイ!
と、天が砕け散つたかのやうな大音響とともにバベルの塔は崩れ、空気は叫び声をあげ大地は呻き、降り注ぐ塔の断片によつて泣き叫びながら人々は潰されて阿鼻叫喚、血と脳漿と脂の匂ひと温度と湿気がムッと立ち籠め、混沌と混乱は此処に極まつた。
そんな中、茫然と突ッ立つたテラリーが
「リベンジに失敗しました」
と呟きながら肩を落として去るのを、人々は夢見るやうな気持ちで眺めてゐたといふ事です。
今日は子どもの日でした。
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