ジェンガ [コータローくん, バトル]
コータローくん来店。ジェンガを持つてきてくれる。私はこのゲームを知らなかつたのだが、私以外の人は全員知つてゐたので、有名なゲームなのだらう。細長い立方体の木の棒を3本づつ、最初に3本並べたらその上に90度回して3本並べ、さらにその上にまた90度回して3本置き…といふのを繰り返して、垂直にそそり立つ柱に組み上げる。そこからゲーム開始。どの部分でもいいから木の棒を一本抜き、それを上に重ねていく。この時に、片手しか使つてはいけない。どんどん抜いていくので下の部分は不安定になつていくし、積み上げていくので高さは伸びていく。で、抜く時にか積み上げる時に、この柱を崩してしまつた人が負け、といふゲームである。単純だが面白さうである。試しに、その場にゐたテラリーとコータローくんに試合をやつて貰ふことにした。
二人とも結構上手なのだらう。ヒョイヒョイと棒が積み上がつていく。私なら一寸無理ぢやないか? と思ふやうな所からも、スイスイと抜いていく。どちらかといふと心理戦で、お互ひにこやかに笑ひながら、相手を牽制しあつてゐる。うむ、かういふものなのか。しかし、30分を過ぎたあたりから、様相は変はつてきた。
相変はらず、二人とも笑みは絶やさない。が、もう座つてゐられなくて、辺りをウロウロしてゐる。なんと言つても、抜く時、積み上げる時、どちらもグラグラと柱が揺れるのだ。最初に比べてかなり高くなつてゐる。抜き取る時間もかなりかかるやうになつたし、それより、どの棒を抜くかを決める時間の方が断然に長くなつてきた。我々もついつい息を詰めて見守る。「煙草買つてくるわ」「よーし降りてこい!」様々な応酬は続く。相手の番の時は、満面の笑みを湛へてゐるのが、無事に相手が抜き終はつた瞬間に真顔になるのが、見てゐて面白い。正に天国と地獄が交互にやつてくる、ロシアンルーレットのやうな感じだ。気がつけば、店中のお客さんも、息を詰めて見つめてゐた。
もの凄い緊張感が店内を支配した。こ、これは、癒しの空間としてのカフェではない! は、はやく決着を…‥
「あー!!!」ガラガラガッチャーン!!!
崩したのは、テラリーであつた。
「ぐ、ぐやじい〜〜〜」と身悶へするテラリー。
「悔しいよなァ。オレも負けてゐたら、死ぬほど悔しかつたもん。ワッハッハ! いやー、今日はグッスリと安眠できさうやー」
「ぼ、ぼくは、涙で枕を濡らしさうです…」
「んな、大袈裟な。いや、大袈裟ぢやないか? ワハハハ! いや、運、運。運が悪かつたよ、テラリー。」
「いいえ、運も実力のうちです。負けは負けです。」
「ま、そりゃさうだ。負けは負け。悔しさには変はりないよなー。ワハハハハ! あー、気持ちいい」
「………」
これは、ジェンガバトルもやりますか。
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