オパール花見大会 [テラリー]
夕刻になり、雨も上がつた。場所とりのテラリーたちはブルーシートを木の間に張り、テントのやうにして雨を凌いだやうである。結局ウメドンは朝までみんなと将棋をさし、そのまま会社に向かつたやうだ。で、仕事を終へてからまたここに戻つてくるのだ。アホである。が、若さの特権、といふ事もできるだらう。
私とトモコは、19時頃に仕出しでとつた花見弁当を持つて円山公園に到着した。我々の花見の場所は…些か暗い。が、仕方ないだらう。広さは充分にある。周りはすでに全て埋め尽くされ、ドーンと盛り上がつてゐる。懸念された桜もかなり咲いてをり、花見には充分だ。よし! とりあへず場所とりのテラリーに乾杯! と、私は一杯目のお酒を胃の中に流し込んだ。
続々とみんなが集まつてくる。それに伴ひ、私の身体の中にも着々とアルコールが蓄積されていく。
「こんばんはー」
「場所が分かりにくくて。でも桜がきれい」
「ヘイYO! オガケン、いまからオレとオマエ、一対一、どこまで続くか、やつてみるか」
「はーい、みなさんご注目!」
「なんや、君は痴漢か!」
「えー、今から銅像が消えます」
「お弁当、凄くおいしいですよ。最高」
「大西さんを見に、高源も島田さんも来るらしいよ。阿部さんも来るのかな?」
「ベルギー土産のチョコレートです」
「やはりこれがないとねー、春を迎へた気がしないんですよー」
「はい、えー、みなさん何を飲まれますか?」
「サラリーマンコントー!!」
「みんなで写真を撮りませうよ」
「ハイ、チーズ!」
パシャ!
…気がつけば、私は枝垂れ桜の前に立つてゐた。去年も一昨年も、ここに立つてゐたやうな気がする。来年も再来年も、ここに立つてゐるのだらうか。夜空を背景にその偉容を誇る枝垂れ桜が、静かに風に揺れてゐた。
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