アイアムアヒーロー [強制起訴シリーズ]
起訴者: 元店主
強制起訴シリーズ65弾
鈴木英雄は35歳のマンガアシスタント。いつかは自分のマンガの連載を目指して持ち込みを続けるも、いつも不採用。それに従い、彼女との仲も険悪,破局寸前。で、ついに同居中の家からも追い出されてしまう。帰る家もなく、希望もない、そんな英雄の日々が一変する。日本にZQN(ゾキュン)と呼ばれるゾンビが大量発生したのだ!噛まれると感染してZQN化する。果たして英雄の命運やいかに?
原作は花沢健吾による人気マンガ。しかし、どんなに人気のある素晴らしいマンガでも、日本で実写化されればクソになる、と言われる昨今。果たしてこの映画の出来はいかに???
- ヤマネ
- もー、ダメですよ、こんなの。グロいんだもの。観てて疲れる、ねぇ?
- 元店主
- いや、私は最初に謝りたい・・・マンガの実写化は日本では失敗必至~、なんて言ってごめんなさーい!この作品は素晴らしいです!もう、やればできるやん。
- ヤマネ
- ええー!ケンタロウさん、この作品オッケーだったんですかー?・・・まぁ、確かによく出来た作品ではありますよ。マンガの実写化、という点ではなかなかですよね。でも、グロいしなぁ・・・。あ、ゾンビ映画マニアのマツヤマさんはどうだったんですか?
- マツヤマ
- まぁ、突っ込みどころはたくさんあるよな。あんな自動車事故で怪我もしないのは不自然だし、噛まれてからゾンビ化するまでの時間がマチマチすぎて、その場の都合に合わせた様に思える所とかな。全力疾走型とノロノロ歩き型が混在してるのも、御都合主義っぽいし。
- ヤマネ
- うんうん、やはりゾンビ映画ファン的には色々と問題あり、と?
- マツヤマ
- いや、オレは敢てここで宣言したいね・・・そんなチマチマした突っ込み所なんてどーでもいいんだよ!これは日本が世界に誇れる素晴らしいゾンビ映画だぁー!!!
- ヤマネ
- ええー!マジ???・・・確かに、作品としての完成度は非常に高いのは認めるんですが・・・まー、ボクはゾンビ映画とか好きくないんで。って、ケンタロウさんもゾンビ映画はダメなんじゃなかったんですか?
- 元店主
- いやー、私はホラー映画がダメなだけで。まぁ、ゾンビ映画もホラーだと思ってたから、基本ゾンビ映画はコメディもんしか観てないんだけどね。『ショーン・オブ・ザ・デッド』とか『ゾンビランド』とか。で、今回のは別にコメディではないんだけど、特に恐くはなかったし、その点は全然オッケーだった。
- マツヤマ
- え、そうなのか?オレはけっこう恐かったぞ。特に始めの方な。このまま行ったらちょっとたまらんかも、と心配になったくらいだよ。
- ヤマネ
- 始めの方はJホラーテイストがありましたよねー。彼女がZQN化する所とか、職場に足を踏み入れる所とか。
- マツヤマ
- 日本のホラー映画の恐さのひとつはさ、靴を脱ぐ生活にある、とオレは思っているんだ。だから、職場に足を踏み入れた時の「靴なんか脱がなくていいから」というセリフにハッとさせられたよ。これはホラー映画ではなく、ゾンビ映画なんだ、と。この作品、分かってるー、と思ったな。
- 元店主
- 特に新しい事をしてる訳ではないんだけど、Jホラーやハリウッドが培ってきた映画の文法をうまく消化して、嫌味なく使ってましたよね。手堅い。テレビ画面やモニター画像、鏡や制限された視野、なんかを使って映像をポリフォニックに配置するやり方とか、うまいなー、と思いました。
- ヤマネ
- でもねー、ヒロミ(有村架純)がなんか凄そうな存在になっているのに、結局最後まで大して活躍しないのが残念じゃなかったですか?もっとなんとかならんかったんか、と。
- 元店主
- うーん、まぁ、私も密かにヒロミの活躍には期待してたけど、でも結局なんの活躍もしなかったのは、それで良かったんだと思うよ。だってこれは英雄がヒーローとして覚醒する話じゃない。そのためには、ヒロミは徹底して無力であるべきなんだよ。それ故にこそ、彼女を守るために、ダメ男の英雄はヒーローとして立つんだから。
- マツヤマ
- その通り! それにしても英雄は良かったよなー。てか、英雄役の大泉洋!オレ、ちゃんと彼を観るの初めてだけど、メチャメチャ良かったよ。
- 元店主
- 私も大泉洋をちゃんと観るのは初めてだったんですけど、凄くよくてビックリしました。最後までちゃんとダメな感じはそのままで、でもカッコ良く光り輝く、という。
- ヤマネ
- 大泉洋は上手い役者なんですよ。『清須会議』での秀吉役なんて凄かったですから。観てないんですか?
- 元店主
- 観てる訳ないやん。私が****嫌いなの知ってるだろ。
- マツヤマ
- いや、そこ伏せ字にしてもバレバレだから。・・・ヒロミをカートに載せて歩き始める時のロングショットとそれに被さる荘重な音楽・・・いよ!拝一刀!!としびれたな。英雄の銃に対する執着は、侍の刀に対する拘りみたいなもんかな。そのままショッピングモールに入っていくのは、時代劇っつーか、西部劇っつーか。とにかく、ゾクゾクきたよ。
- ヤマネ
- でもあのショッピングモール、実は韓国らしいですね。韓国でロケして、韓国の特撮会社の協力を得て作ってるらしいですよ。この韓国の特撮会社は「デモリッション」という名前で、『アベンジャーズ』とかにも参加してゐる有名な会社らしいです。という事は・・・この映画がここまでいいのは韓国のおかげ?
- マツヤマ
- まぁ、そういった面もあるだろうけど、ハリウッドだって色んな国で撮影して、色んな国のスタッフ使って、それでハリウッド映画を作ってるんだから、別に問題ないだろ。なんやかんや言っても、これは優れた日本製ゾンビ映画だとオレは思う。銃の扱いとか、ZQNが、生前(?)のある種の行動に執着してそれを繰り返している所とか、非常に日本的で良かった。ZQNの「いらっしゃいませ~」は恐かったな。マジで。
- ヤマネ
- あれは恐かったですねー!確かにあの不気味なZQNの生態は、日本独自のものかも。・・・で、結局マツヤマさんは、この映画が日本独自のゾンビ映画だから評価してるんですか?
- マツヤマ
- いや、むろんそれは評価ポイントだけど、それ以外の、ゾンビ映画に必須の普遍的な要素をちゃんと備えている所も大事なんだよ。まず、人体破壊描写がちゃんとしてる。これ凄く大事。
- ヤマネ
- う~ん、それはそうですけど、ボクはそれがダメだったんですよねー。気持ち悪いですよ・・・。
- マツヤマ
- わはは、それがダメならゾンビ映画は観られないな。ケンタロウさんは大丈夫なの?
- 元店主
- ええ、私は拷問シーンとか、リアルに痛そうなのはダメなんですけど・・・、あと陰惨な奴。でも、この映画の人体破壊描写とか妙にスカッと明るいでしょ?それは、リアルじゃない・嘘くさい・・・とか言うと語弊がありますけど、むしろリアルとかリアルじゃないの問題ではなく、別種の表現だと思うんです。見せ物的な。如何にリアルか、ではなく、如何にカッコ良い・凄い・美しいか、というのが優先されている、というか。
- ヤマネ
- 「美しい」って・・・二人とも趣味悪いですよ!
- マツヤマ
- わはは。あと、大切なのが“どうしようもない絶望感”な。アベさんが大量のZQNに追われて「わー」とか言って逃げてくるとこ。あそこ最高!それから、最初の方で英雄が「わー」とか言いながら街中を逃げ回る所も好き。ちなみに、『宇宙戦争』でトム・クルーズが大量のトライポッドに追われて必死で逃げる所も好き。トムは「わー」って叫ばないけど。
- 元店主
- 英雄が「わー!」って叫びながら街中を逃げ回るシーンは良かったですね!逃げてるうちにドンドン街中にZQNが溢れ出して、空には飛行機がビュンビュン飛ぶしで、加速度的にパニック度が増していく・・・。あの日常から非日常への転換は上手かったですねー。
- マツヤマ
- それから、ロッカーの中に閉じこもった英雄が妄想ループに陥るところも最高。あの間はうまいよ。笑った。グルーヴィーだな。
- ヤマネ
- あそこはボクも笑いました。まぁ、要所要所でそういった笑えるシーンがあるのが救いでしたけど・・・。
- マツヤマ
- ゾンビ映画って、そういう所はあるよ。恐過ぎて笑っちゃう、といった所が。オレだって恐がりだから、ホラー映画は絶対に観ない人間だけど、ゾンビ映画は違うんだよ。笑いに通じる恐さ、っていうか。ホラーはダメだけどゾンビはオッケー、っていう人間、けっこう居ると思うぞ。
- 元店主
- そうですね。私もゾンビ映画は大丈夫な気がして来た。もっと観てみようかな。
- マツヤマ
- これは原作マンガが20巻まで出てて、そのうちの8巻ぐらいまでを映画化したもんらしい。で、原作マンガはまだ連載中、と。映画的には、あの絶望的な未来へ向かうまでの一時の清々しさ、みたいなラストはパーフェクトだと思うけど、続きも気になるし、マンガも読んでみようかな。
- ヤマネ
- ボクはけっこうです!身体の腐った人間がゾロゾロ歩いてて、それを潰す話ですよ。いくらボクがマンガ好きでも、そんなものわざわざ読みたくないです!腐った人間・・・は!そ、それはもしかして・・・。
- トモコ
- なによ、ヤマネくん。
- ヤマネ
- わー!でたー、“腐”女子ー!!
- トモコ
- なにガタガタ言ってるのよ。マンガだったら『囀る鳥は羽ばたかない』ヨネダコウ著を読みなさい。
- ヤマネ
- それってやっぱBL・・・?
- 元店主
- BLだけど、そんな枠を超えて凄く面白い作品だよ。まだ連載中だけど、傑作になる予感。
- ヤマネ
- ケンタロウさんまで・・・こ、これは・・・わー!感染してるー!わー・・・
- 元店主
- ・・・ああ、ヤマネくん、走って逃げちゃった。・・・ん?マツヤマさん、なに後ずさりしてるんですか?
- マツヤマ
- お、おう。いや、オ、オレもそろそろ家に帰らないと・・・。
- 元店主
- なに言ってるんですか!5月の課題映画の発表、お願いしますよ!
- マツヤマ
- あー、そうだった。ええと・・・うん、5月はマイケル・ムーアの『世界侵略のススメ』にするよ。5月27日公開、と遅いけど・・・。
- 元店主
- 別にいいですよ。という訳で、次回はマイケル・ムーアで!では!・・・あれ、マツヤマさん?
- マツヤマ
- わー!・・・
- 元店主
- ・・・・・・追いかける、べきなのかな・・・。
Comments
投稿者 オーソン : 2016年05月11日 22:11
変に深刻ぶったり、お涙頂戴、残酷描写なしのゾンビ映画だったらどうしようかと身構えて観に行きました。が、杞憂に終わって良かったです。素直に楽しめました。ゾンビ映画の醍醐味はありふれた日常の風景にゾンビが現れるとこだと思うので、日本のありふれた住宅街でゾンビから逃げるシーンは良かったです。
でも、気になる点がいくつか…
鼎談でも出てますが、はやいゾンビとノロいゾンビが混在していて、どっちのゾンビ?というのが気になりました。
ショッピング・モールでは遅いタイプが増えたのは、あの場にいるZQNはロメロゾンビのファンなんだろうなあ、と強引に納得させましたが…。
あと、ヒロミは赤ん坊にかまれて半分感染したけど、(歯はないけど)彼女に噛まれた英雄はなぜ感染していないのか、という点も気になりました。原作が途中だから仕方はないんですが…。
それと、原作ではZQNが各地で発生しているけど、異変に多くの人々はまだ気づいてない状態の場面が多く、いくつかのZQNから逃げてきた英雄が電車に乗り込んだあと、惨劇が起きるシーンがあるのですが、原作で一番好きなシーンでとても怖くてコミカルなのですが、映画では出てこなかったのが残念でした(ZQNを酔っ払いか変な人間だと扱っていた周囲の人間が噛まれ、続々と感染してZQNになっていくというシーン)。
日常から非日常へと変化する過程をもう少し描写してくれた方が好みだなーとは感じました。
投稿者 元店主 : 2016年05月12日 02:40
オーソンへ
>鼎談でも出てますが、はやいゾンビとノロいゾンビが混在していて、どっちのゾンビ?というのが気になりました。
うーん、私はこれ、気にする所じゃないと思うんだよね。だってこの作品、“ゾンビ”とは一言も言ってないよ。あくまで“ZQN”でしょ。で、ZQNの生態なんて誰も分からないんだから。早いのか鈍いのか、早かったり鈍かったりするのか。それどころか、噛まれたら感染する、とか、頭を破壊しないと死なない、とかも、所詮従来のゾンビイメージに引きずられた怪しげなネット情報で、それが100%正しいかどうかは分からない・・・というのが肝だと思うんだよね。だから、ZQNの事を「どっちのゾンビ?」とか気にするの、おかしいと思うんだ。どーみたってゾンビだけど、それでもゾンビじゃないし。ZQNだし。
あと、この間オパールで『シビル・ウォー』についてオーソンと話した時にも思ったけど、オーソンはちょっと原作に引きずられすぎだな。原作は原作、映画は映画、と分けて考えた方がいいよ。原作で好きだったシーンが映画にはなくて残念、というのは(気持ちは分かるけど)あんまり生産的な感想とは言えないと思うなー。
投稿者 uno : 2016年05月13日 00:16
こんばんは。
かつて大泉洋に似ていると言われたことのある者です(どうでもいい情報)
映画館で予告編を何度も見て、つまらなそう。。。って思ってたんですが、めちゃめちゃ面白かった。
この作品、怖いんだけれども、どこか笑ってしまうようなところがあって、そこが良かったです。
英雄がショッピングモールで革ジャンを試着(試着ってのがいい)したところZQNに「いらっしゃいませ」って言われる場面なんて、怖いんだけどプッっと吹いてしまう面白さ。
ゾンビ映画としての面白さもありましたが、感染してない人達が作ったコミュニティ内での闘争を、単純なプロットで効果的に描いていて引き込まれました。
非常事態にも関わらず支配欲を満たそうとする者の愚かさと、それに追従する者。ベタやなー、と思いつつ、非常事態にこそ起こりうる人間の持つ醜い側面を上手く描いてるなと。
それに対し英雄の優しさと強さが光ってましたね!
藪も言ってましたが、逃げる時に偶然一緒になった比呂美ちゃんを守り続けるって凄いし格好良い!子連れ狼が如く比呂美ちゃんをカートに乗せて運ぶ様が異様であり、滑稽でもあるんですが、凄くグッときました。(富士山麓で拾ったカートも、コミュニティーから逃げた人の物で、途中ZQNにやられたんだろうなと、今になって思います)
ロッカーに隠れた英雄が、何度もロッカーから出ようとする度にZQNにやられる事を想像してしまうシーン。あれ、めちゃ共感しました。ついついしてしまう脳内シミュレーション。しつこいまでに場面を繰り返すことで生まれる焦燥感。ついにロッカーから出た時は、ヤッタゼ!と心の中でガッツポーズしました(単純)
終盤、ZQNに囲まれ、意を決し英雄がライフルを冷静に撃ちまくる場面を見てて、ZQNになった人達は何も悪くないんだよな。。。と泣けてきた反面、棒高跳びの選手を倒した時の安堵感。そして不思議とカタルシス。
最後に、比呂美ちゃんが無表情にキャットフードを頬張るシーンは名場面だと思います!
投稿者 元店主 : 2016年05月16日 13:59
うのぴへ
前にオパールに来た時に、この映画を観るの凄く渋ってたけど・・・ほら、面白かっただろ? うのぴはこの映画を楽しめると思ったよ。だって、大泉洋に似てるし・・・って、言ったら、「大泉洋に似てるとか言われても嬉しくない!」って憤慨してたけど、今ならちょっと嬉しいんじゃないか。次回オパールに来る時は、是非ヒステリック・グラマーのキャップを被ってきて下さい。
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