マジック・イン・ムーンライト [強制起訴シリーズ]
起訴者: 元店主
強制起訴シリーズ53弾
1928年。凄腕人気マジシャンのスタンリー(コリン・ファース)に、友人のハワードが相談を持ちかける。ハワードの知り合いの富豪の一家に、霊能者が取り入って金を巻き上げている。これがなかなかのやり手で自分ではトリックを見破れない。ついてはこの霊能者のトリックを見破り、インチキを暴いて富豪一家を救ってくれないだろうか、と。徹底した合理主義者で、霊能力など全てインチキと言い切っているスタンリーはこの話を受け、南仏の富豪の家に乗り込む。そこで彼を待っていたのは、若くてチャーミングな霊能者ソフィー(エマ・ストーン)であった・・・。 ウディ・アレンの描く、ロマンチック・ラブコメディー!
- ヤマネ
- う〜〜〜ん、観ている時はそれなりに楽しめたんですけど・・・見終わって、これほど時間を無駄にした感のある映画は久々。ボクの大事な時間を返せー!
- 元店主
- あ、その感覚わかる。なんか誉める所も貶す所もそこそこで・・・正にどーでもいい感のある映画だったね。
- マツヤマ
- 良くもなく、悪くもなく・・・全て世はこともなし、って感じか。
- ヤマネ
- あのケンタロウさんが日記でボロカスに貶してたイニャリトゥの「バードマン」。ボクも確かにあの作品はイマイチだったし、あれに較べたらこの「マジック・・」の方が面白いんですけど、でも「バードマン」は観て損した感じはない。色々と貶して楽しめるしー、それによって何かを得た様な幻想も持てる。でも、この「マジック・・」は・・・。
- マツヤマ
- つまりこれはウディ・アレンのファン向け映画なんだよ。オリーブ少女向け映画、とかそんな感じ。ファンにとっては面白いだろうけど、別にファンでもないオレたちには、どーでもいいというか。
- ヤマネ
- でも、明らかにウディ・アレンのフィルモグラフィの中でもダメな方でしょう。手抜きなんじゃないの?とか思いましたけど。雑すぎる。
- 元店主
- 私もラストの雑さにはガックリきたよ。大体、スタンリー(コリン・ファース)がソフィー(エマ・ストーン)に惚れるのはまだ分かるけど、ソフィーがスタンリーに惚れるのは不自然でしょう。むろん、途中からソフィーがスタンリーに惚れてるのは匂わせていたけれど、あれはむしろ騙しの一環と捉えた方がしっくりくる。実は本当に惚れてました、なんて・・・雑すぎ!
- ヤマネ
- そうですよねー、だって、ソフィーに求婚してた富豪のボンボンだって、決して悪くはない。むしろ、スタンリーより魅力的じゃないんですか?スタンリー・・・単に性格の悪いおっさんで、ちっとも魅力がないですよ。ソフィーがボンボンを蹴ってスタンリーを選ぶのは不自然すぎる。それを納得させる様に描けてない時点で、この映画のマジック失敗!
- 元店主
- 合理的・論理的に考えたらあり得ない二人がくっつく、それがマジックだ!と言いたいんでしょうが、この映画はそう言いたいという事が伝わってくるだけで、それを描けてない。明らかに粗雑な映画です。
- マツヤマ
- 二人の言いたい事は分かるよ。でも・・・実はオレ、これとそっくりの映画を観た事があるんだ。ネタばれを防ぐために題名は伏せるが・・・ほんとパクったみたいに同じなの。で、唯一の違いは、ラスト。二人が結ばれた後に、でも実はそれも騙しで、男は全てを奪われて絶望の淵に叩き込まれる・・・という映画だったんだ。
- 元店主
- おー、それ、面白そうじゃないですか。この映画も、もう一捻りあれば、と思ってたんですよ、ラスト。
- マツヤマ
- オレはその映画の事を思い出して観てたもんだから、もうラストが気が気でなくて・・・だから、ハッピーエンドで良かったなー、と。
- ヤマネ
- ガク!な、なんですかそれはぁ!そんなの作品の評価と関係ないじゃないですかー!
- マツヤマ
- いや、そういうのも大事だよ。オレはもう、こんな歳にまでなって、フィクションの中でまで絶望したくないよ・・・。
- ヤマネ
- ・・・なんか、重いっすね。現実にそこまで絶望する事がある、とか。
- マツヤマ
- 安倍が首相やってる時点で絶望だらけだよ!
- 元店主
- ははは。お二人とも、エマ・ストーンはどうでした?
- ヤマネ
- ボクはダメ!「バードマン」にも出てましたけど、どこがいいのやらさっぱり・・・。やっぱ「アメスパ」の時の悪印象が消えないですね。
- マツヤマ
- あれ?「アメリカンスナイパー」に出てたかなぁ?
- ヤマネ
- 「アメイジングスパイダーマン」ですよ!
- マツヤマ
- わはは、冗談、冗談。実はオレもエマ・ストーンは苦手だ。やっぱそれも大きいか。エマ・ストーン好きなら、この映画もかなり楽しめるんじゃない。
- ヤマネ
- わかりますけどー。でも、そんな出て来る女の子が好きだからって、作品がよくなる訳でもないだろうし・・・。
- 元店主
- いや、そういうのも重要だよ。出て来る女の子が真に「いい!」と思えたら、内容なんて割とどうでもよくなる・・・という事を、私は最近「けいおん!」観てて学んだ。
- ヤマネ
- ・・・なんすか、それ。そんな事でいいんですか?それなら完全に趣味の話になっちゃって、作品の話なんてできないですよ。
- 元店主
- あ!そうか、さっきの「バードマン」との対比の話はこれかもね。「バードマン」はいくら下らないとはいえ、作品として話す事ができる。でも、この「マジック・・」は、なんか作品として評価しずらいんだよ。ウディ・アレンのファンかどうか、とか、エマ・ストーンをいいと思うかどうか、とか、趣味の話になってしまう。だから、いくらそこそこ楽しめても、観たのが時間の無駄に思えるんだよ、きっと。これが趣味じゃない人間にとっては。
- ヤマネ
- でも、ボクやケンタロウさんは、一応これを作品として“粗雑”と評価してる訳で・・・。
- 元店主
- だからー、それが“ゆるさ”になるんだよ、ファンにとっては。で、「そのゆるさがいいんだよー」ってな話になる。これが趣味の話。趣味の対立は喧嘩にしかならないから。
- ヤマネ
- そうなんですか?うーん、そうなのかなぁ・・・。
- マツヤマ
- おいおい、別に“作品”の話に拘らなくていいんじゃないか。そもそもオレたちみたいな素人が、作品の評価云々したって仕方ないじゃないか。もっと雑談風にいこうぜ。コリン・ファースはどうだった?オレは割と良かったけどな。
- ヤマネ
- ボクはダメ!やっぱあの声とか、口許の動きとか、美しくないし。単に偉そうで、嫌味で、頭が悪そうなおっさんにしか見えないですよ。
- 元店主
- まぁ、あの役は明らかにウディ・アレンが自分を想定して書いたもんだろうし・・・、ああいった口数のやたら多い腐れインテリみたいな役は、ウディ・アレンの様な貧相な男がやったら愛嬌もあっていいだろうけど、コリン・ファースみたいな押し出しのいい人間がやると、単に嫌味にしかなってないよね。なんでコリン・ファースを起用したのか謎。
- ヤマネ
- ウディ・アレンって、要するにツンデレなんですよ。作品も、シリアスなのとコメディを大体交互に撮ってる様な気がするんですが、それもツンデレでしょ。作品の中でも、コリン・ファースにツンデレをやらせて・・・なんか、おもしろくないですねー。
- 元店主
- やっぱツンデレに合ってないんじゃない、コリン・ファース。ツンデレが似合うといえば・・・斎藤千和とか釘宮理恵とかだろう。
- ヤマネ
- それ、アニメの声優じゃないですか!
- マツヤマ
- オレは、エマ・ストーンがセーラーカラーの服を着て出て来た時に、「お、『ヴェニスに死す』か」とか思ったし、冒頭のベルリンでの如何にも演劇臭いシーンから、南仏に来たらいきなり映画っぽくなる所とか、そんな所が興味深かったけどな。
- 元店主
- あ、そういえば、最後にウテ・レンパーの名前がクレジットされてた様に思ったんですけど、出てましたっけ?あの、ベルリンのキャバレーで歌ってた人?
- マツヤマ
- ええー、気がつかなかったなぁー。にしても懐かしい。けっこう歳なんじゃないの?
- ヤマネ
- マツヤマさーん、なんか深読みとかないんですかー、この映画、南仏の美しい風景がー、とか、20年代のファッションが素敵ー、とか、言っても仕方ないと思うんですよね。なんかー。
- マツヤマ
- いや、オレも別に何もないよ。クラシックカーとか良かったけど・・・って、それはダメなのか。うーん・・・そうだなぁ、この映画、時代が1928年だろ。それってつまり、世界大恐慌の前年なんだよ。だから・・・たとえソフィーが富豪のボンボンと結婚しても、すぐに破産したかもしれない訳。だから、実はスタンリーを選んだのはそこまで非合理な選択ではなく、案外正しい選択だった、と。ここらが合理を超えたマジカルな選択。この映画で描かれた“マジック”とは、世界恐慌を乗り切る選択をしたことなんだ・・・というのはどう?
- 元店主
- おお!案外いいんじゃないですか。マジック=齢の差恋愛の成就、と捉えるより、ずっと収まりがいい。となれば、ソフィーは単純にスタンリーに恋したんではなく、サバイバル戦略としてスタンリーを選んだ、と。ふむ・・・そうなれば、これもなかなかいい映画かも。
- ヤマネ
- さすがマツヤマさん!伊達に深読みしてる訳じゃないですね!・・・まぁ、こんなもんでいいか。で、次の課題映画は?
- マツヤマ
- うん、ニール・ブロムカンプの新作「チャッピー」ね。オレがこの映画を選んだ理由は・・・
- ヤマネ
- グルビのチャッピーを連想したからでしょう!!!
- マツヤマ
- えええ!どうして分かった?
- ヤマネ
- ふふふ・・・メンタルバイブレーションを感じたんですよ。・・・ああ、見える見える、マツヤマさんの絶望が見えますよー・・・マツヤマさん、誰か大事な人を諦めましたね・・・これは、男性か・・・
- マツヤマ
- うわー、やめてくれー!・・・って、そんな訳ないだろー!
- 元店主
- 二人とも、なんやかんや言っても楽しんでるな・・・。てな訳で、またー。
Comments
投稿者 オーソン : 2015年05月03日 21:59
観てから時間が経ったこともあり、ほとんど記憶してません…。すみません…。特にウディ・アレン作品のほとんどは観ても内容をすぐに忘れてしまうものが多いです。『ミッドナイト・イン・パリ』と『ブルージャスミン』等はよく覚えているんですが、それ以外のは全て同じ内容に思えてきて…。観てるときはそれなりに楽しめるんですけどね。ゆるく観光している気分には浸れます。
覚えているのはコリン・ファースのミスマッチ感です。コリン・ファースが人生素晴らしいとか言っても似合わないと思います。あと今回ゲイじゃなかったのも個人的には残念な点です。
エマ・ストーンはかわいくみえましたよ。
投稿者 uno : 2015年05月04日 01:09
こんばんは。
かなり楽しかったです。
エマ・ストーンが凄く魅力的で。バードマンでは演技が上手いとは思ったもののグッと来なかったんですが、この作品ではグググッときました。特にしかめっ面!
ドライブしている時に大雨に降られる場面で雷を怖がったりするところなんて素でキレたりしててキュンときました。で、天文台でしょ(笑)これぞロマンティック・ラブコメディーですよ!
コリン・ファースも良かったです。コミカルで愛嬌があって。マジック以外はまるでバカ。最後のおばさんとのやり取りも手の上で転がされてて笑いました。どんなけ愛されてんねん。そこからベタな展開のラストは期待通りキュンとしてほっこりな大円団。
この作品、やっぱエマ・ストーンに尽きるんですが、思い起こせば「ミッドナイト・イン・パリ」の時はマリオン・コティヤールに惚れたし、そもそもダイアン・キートンが好きっていう。。。
これってもしかしてウディ・アレンの描く女性が好きなのか?
薄々は感じてたんですが(笑)
最後に細かいんですがこの映画、お酒を飲む場面でグラスを合わせる音が凄く綺麗に鳴ってたんです。ウイスキーのグラスの当たる音やマティーニのグラスの当たる音。いいグラスでお酒を飲みたくなる音でそんなところも良かったです。
ゆるいわ〜(苦笑)
投稿者 マツヤマ : 2015年05月06日 00:01
オーソン
それなりに楽しめたものを、スッカリ忘れてしまうなんて、アラフィフのオレの世代でさえあり得ないぞ。とくに今の時代は思い出せるツールはいくらでもあるだろう?
それはともかく、ウディ・アレンの映画が同じ内容に思えるというのも、どういった部分なのか興味があるのだが。
コリン・ファースがゲイのイメージって、オレはそんなに持ってないんだけど、定着しているのかな?「シングルマン」は観てないけど、印象強かった?
「アパートメントゼロ」「秘密のかけら」のゲイかな?みたいな微妙な役がぴったりで、今回の役もオレ的には性的なイメージがぜんぜん湧かなくて良かったと思っている。
ウノピ
それこそツンデレの女性が好みなんだね? ウノピってちょっとMっぽいもんな。
グラスの音とか、いいなと思って記憶に留めることができるのはすごい!
音といえば、音楽も良かったんじゃない?タイトルバックとエンドロールもクラシックな作りがいやらしくなくて、観ているときはそれなりに楽しんでたつもりだが…記憶にない。
投稿者 uno : 2015年05月07日 00:03
マツヤマさん
グラスの音は見ている時にかなり印象深かったんですよ。単なる思い込みも強いんだと思いますが。
音楽も統一感があって良かったですよね。統一感ありまくりの、いつものウディ・アレンの音楽なんで、印象しか残ってないですが。エンドロールは字体もクラシックで可愛かったです。
観ている時に楽しんで、後に残らないってのも、小粋でいいじゃない?なんて思います。
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