フォックスキャッチャー [強制起訴シリーズ]
起訴者: マツヤマ
強制起訴シリーズ51弾
マーク・シュルツは1984年のロサンゼルスオリンピックにおけるレスリングの金メダリスト。とはいえ、当時はまだまだオリンピックにアマチュア精神が生きていた頃であり、スポンサーをつけたりする訳にはいかず、極貧の中で次のソウルオリンピックを目指して、日々練習、辛く暗い日々を送っていた。そこに大財閥であるデュポン家の御曹司のジョン・デュポンから、援助の申し出。最新設備の整った練習場と大きな屋敷、十分な手当をあてがわれて、ジョンの主宰するチーム「フォックスキャッチャー」の一員としてソウルオリンピックを目指す事になった。が、そこにマークの良き兄であり、優れたコーチでもあるデイブが加わる事になり、事態は悲劇に向かって転がり出すのであった・・・。
実際にあった大金持ちの御曹司による金メダリスト殺害事件を映画化した話題作!
- ヤマネ
- う〜ん、まぁまぁ、っすかね。ダレずに面白く観られたし、別にケチをつける所もない。まぁ良かったんじゃないですか。
- 元店主
- そうだねー・・・。まぁ、面白く観られたのは事実、って感じかな。
- マツヤマ
- なんだなんだ二人とも、はっきりしないなぁ。オレは面白かったぞ。それもかなり明確に面白かった。
- ヤマネ
- ほう、どこらへんが良かったですか?
- マツヤマ
- そりゃやっぱり、ジョンとマークのダメダメコンビだよ。ジョンは金持ちのボンボンで自分は何でもできる王様だと思ってる勘違い野郎、マークは身体能力は高いけど兄貴がいなかったら試合に勝てないし人間関係も築けない脳筋野郎。で、ジョンは母親に、マークは兄貴に深い劣等感を抱いてる点で似た者同士。この二人がすぐに「国のため〜」とか言い出して盛り上がってるとことか、まんま「安倍とネトウヨ」だよ!二人とレスリングチームの連中がシャンパン飲んで騒いでるとこなんか、大笑いだよ。
- ヤマネ
- フェイ〜ム!って、ボウイの歌が流れてるんですよね。しかもBGMかと思ったら、自分らで流してたという・・・痛過ぎて正視に耐えないシーンでした!
- 元店主
- まぁ、中身がカラッポでプライドだけが高い人間は、すぐに“愛国心”とか大義方面へ行ってしまうんですよね。私はむしろオイシンとか思い出しました・・・。
- マツヤマ
- わはは!あいつも石原慎太郎の尖閣買収作戦に寄付したりしてたからな。突っ込まれそうになると無表情になって体裁を護ろうとする、その表情とかジョンにそっくり!眼が死んでるんだよ。
- 元店主
- オイシンも社内の若い連中集めて、フットサルチームを作ったり、勉強会を組織してドラッカーを読んだりしてましたからねー。やりたいんだろうな、そういうこと。そもそもオイシンに本が読めるとはとても思えないんですが。
- マツヤマ
- 中身カラッポなのに外面だけ整えようとするからそうなるんだよ!まぁ、オイシンの場合、どうしたって会社を継がなきゃならないから仕方ないかもしれないが・・・その点も、ジョンといっしょだな。
- ヤマネ
- 二人とも、そのうちオイシンに撃ち殺されますよ・・・。
- 元店主
- オイシンはともかく、私は最後のジョンによるデイブ殺しがあまりに唐突すぎて、ちょっと引っ掛かるんですが・・・お二方はどうです?
- ヤマネ
- んー、唐突?・・・そう言われたらそんな気もしますが・・・実はボク、この映画のことも元になった事件のこともよく知らずに観に行ったんです。ただ、なんかの殺人事件の映画化、といった程度の知識で。だから、誰が誰を殺すか分からなくて、最後までドキドキのサスペンスが持続して良かったです!だって、殺人の動機をはっきりとは描いてないでしょ?誰が誰を殺してもおかしくない状況に描かれていたと思うんですよ。
- 元店主
- あ、私もジョンがデイブを殺すとは知らなかった。ていうか、予告編みる限りでは、ジョンがマークを殺す話だと思ってた。ミスリードだった訳だけど、だから途中で「あれ?マーク居なくなったけどどうするのかな?」と思ってたら、いきなりジョンがデイブを殺して・・・。あまりに唐突な様な気が。わざとかもしれないけれど、殺人に至る経過の描写が弱い様な気がした。
- マツヤマ
- そうか?オレはジョンがデイブを殺すと知って観ていたけど、自然な流れに描かれていると思って、唐突感はなかったぞ。とにかく、デイブの優秀さとジョンのダメさがどんどんはっきりしていく訳じゃない。ジョンはデイブに対して劣等感を募らせていったと思うんだ。で、自分の最大の劣等感の元である母親が死んだあと、その劣等感の対象はデイブに集約される。で、あのデイブが仕方なく(大人な態度で)ジョンを誉めるシーンがあるビデオを観たあとに、デイブを殺しにいくだろ。あのデイブの大人な態度、母親にそっくりだったと思うんだ。だから、ジョンのデイブ殺しは一種の母親殺しだったという訳だ。
- 元店主
- う〜ん、それは分かりますよ。ジョンがデイブを殺した時点で、遡ればそういった事情だったんだろう、と、そう思うしかない。でも、正に“遡ればそう思うしかない”という点が、私はこの映画の弱点だと思うんです。実際にあった事件を扱うには多義性に欠ける、というか・・・。実際の事情はどうだったんだろう?
- ヤマネ
- 実際の事件でも、動機はイマイチ不明、という事になってるみたいですね。デュポン側からは、ジョンは統合失調症だった、という申し立てがなされたみたいです。ジョンは自分の命を狙う国際陰謀団の手先だとデイブの事を思う様になったみたいで・・・殺される前に殺した、ということらしいですよ。
- 元店主
- へえ!そうなの。・・・なんかそっちの方がリアリティがあるな。だってジョン、最初っから頭の病気としか思えない感じだったし。
- ヤマネ
- さらにですねー、ジョンがデイブを殺した時に、ジョンの横に部下が居たじゃないですか。彼が怪しい、という説もあるんです。ってか、彼がジョンの側近になってから、ジョンがおかしくなった、という周りの証言もあるんですね。彼がジョンに変なことを吹き込んでたんじゃないか、とか。
- マツヤマ
- でもそんなの本当かどうか分からないだろ。加害者はそうやって何とか罪を軽くしようとするもんだし。しかもジョンは大金持ちだしな。周りの証言とかどこまで当てになるのか。どっちにしろ、この映画はそんな説には意味なし!と切り捨てた訳だ。
- 元店主
- ええ。確かに何が正しいのか我々には知りようがないですからね。それでも、やっぱ映画のあれはイマイチ説得力に欠けると思えるんですよね・・・。人を殺すって、やっぱ大変な事ですよ。特にジョンの様に社会的地位も財産も多大に持ってる人には。なんか、「殺人」というものを軽く見過ぎじゃないかな。その点・・・イーストウッドとは大違いだ!イーストウッドなら、あんな安易な殺しのシーンは描かなかったと思う。
- ヤマネ
- 「アメリカンスナイパー」ですね!
- マツヤマ
- イーストウッドを持ち出すのやめろよ!それはズルいよ!
- 元店主
- それはそうなんですが・・・でもやっぱ「アメリカンスナイパー」を観ると、「フォックスキャッチャー」なんて一気に色褪せてしまうんですね・・・。とはいえ、主役の三人は良かったですね。個人的には、役者の演技でみせる映画でした。
- ヤマネ
- ジョンを演じたスティーブ・カレルが凄かったですね!とても今までコメディしかやった事がない人とは思えない。ヤバ過ぎる演技。見てて恐くなるような、新しい演技だったんじゃないでしょうか。それを引き出せたのは、監督もえらい。
- マツヤマ
- オレはマークを演じたチャニング・テイタムかな。レスリングマットを見たら反射的に「ウホウホ」って感じで四股を踏んだりするとことか、大笑いしたよ。あの内股気味でノソノソと歩く気持ち悪いとことかな。人間というより、野生動物って感じだ。
- ヤマネ
- 言われてみれば、スティーブ・カレルはもの凄く上手に「アホを演じてる」って感じなんですけど、チャニング・テイタムは「まんまアホ」にしか見えないですからね。そっちの方が凄いかも。
- 元店主
- 私はデイブを演じたマーク・ラファロが良かったです。実は私、マーク・ラファロってあんまり好きじゃなかったんです、今まで。なんか演技臭いというか・・・。それが今回は、自然と滲み出る善良性。おお、ええ感じやん!と感心しました。
- ヤマネ
- あと音楽の使い方が抑制されていて良かったですね。集中を邪魔せず、サスペンスをうまく維持してたと思います。
- マツヤマ
- 映画的には不要なのかもしれないけれど、個人的にはもっとデュポン家の事を描いて欲しかった。陰謀論的な観点からも色々考えられると思うしな。
- ヤマネ
- マツヤマさん、陰謀論好きですねー。・・・で、どうだったんですか、マークとジョンの関係に関しては。
- マツヤマ
- え?だから、“安倍とネトウヨ”みたいで笑えた、と・・・。
- ヤマネ
- いや、そうじゃなくて!二人の同性愛的な関係がほのめかされていたじゃないですか!そこはどうなんです?
- マツヤマ
- ああ・・・言われてみれば、そうもとれるかな・・・。
- ヤマネ
- あれー!なんにでも同性愛的なものを見てしまうマツヤマさんらしくないですねー!どうしたんですか???
- マツヤマ
- ひとをヤオイ女子みたいに言うな!・・・オレは一応、ちゃんとそれらしきサインがあるものだけをだな、ちゃんとピックアップしてるというか、なんというか・・・この映画には、そこまでサインはなかっただろ。
- ヤマネ
- えー、でも真夜中に二人でレスリングの練習とかしてるんですよ。男同士が、ほとんど裸同然の格好で、くんずほぐれつしてるんですよ。この殺人事件に、痴話喧嘩的な要素はみないんですか?マツヤマさんが??
- マツヤマ
- 考えもしなかったよ!
- ヤマネ
- ほー、それは謎ですねー。もしかしたら、こっちの方が解くべき謎かもしれない・・・
- マツヤマ
- しょーもないことを考えるな!それより、三月の起訴映画はなんだよ。
- ヤマネ
- は、ボクか・・・えーと「イミテーション・ゲーム」にします!アラン・チューリングとエニグマの映画ですよ!
- マツヤマ
- ああ、カンバーバッチのやつか。割と普通のやつ選んだな。
- ヤマネ
- アラン・チューリングはゲイなんですよ!さらにエニグマといえば国家機密。同性愛と陰謀論という、マツヤマさんの大好物が詰まった映画ですよ!どうだ!
- マツヤマ
- そんな理由で映画を選ぶな!迷惑だよ!
- ヤマネ
- ええー!そんなぁー、マツヤマさんのために選んだのにー。
- 元店主
- この二人、えらく仲がいいな・・・は!もしかして!
- マツヤマ&ヤマネ
- もしかして!とちゃうわ!!
- 元店主
- ・・・では、また次回!
Comments
投稿者 オーソン : 2015年03月08日 20:43
面白かったです。痛々しすぎて笑ってしまうという感じでした。
でも、後半にジョンが母親の前でレスリングの指導をしようとしているシーンは本当にいたたまれなかったです。
『カポーティ』同様、人格的に問題がある人を描くのが上手い監督だと思います。
ちなみに、とある米国人にこの映画を知ってるか聞いた所、知っておらずこの事件のことも知らなかったです。そして、スティーヴ・ガレルが主演という事を教えたら、その瞬間に大笑いしてました。実在の事件で重厚な物語っぽいのに、主演がスティーヴ・ガレルという点が面白かったようです。
投稿者 uno : 2015年03月08日 21:13
こんばんは。
退屈はしなかったんですが、好みではないです。
冒頭の兄弟の練習シーンで熱い映画なのか!って期待したんですが、レスリングの場面が少なくて残念。期待するところを間違ってる気もしますが。。。
マークがヘリで初めてコカインを吸うシーンなんですが、いくら筋肉バカだからといって、コカインは知ってるだろ。。。オリンピック目指してるんと違うんかい!って違和感が。麻薬に溺れていく過程がしっくりこなかったんですよね。唐突な感じがして。本当に何も考えていないのか?って。
デイヴが一番良かった。すごく格好良い。レスリング以外でも成功しそうな雰囲気がプンプン出ていました。それが結果として仇となる訳なんですが。
ジョンのデイヴ殺害に関しては、作品内に限ると違和感はありませんでした。
劣等感と嫉妬心の強いジョンからすると、自分がコントロール出来なかった者(マーク)に対してではなく、自分がコントロール出来なかった者をコントロールした者(デイヴ)に対して恨みを募らせたのが映画内でよく描けていたと思うんです。
母親の死の後、馬を放つ場面なんてベタだと思うんですが、印象に残っているんですよね。ジョンは解放されることなくさらに深い闇に沈んでいくのも含め。
ところで事件が起きたのって1996年なんですよ。1996年って字幕を見たとき、エッ?て思って。ソウルオリンピックの1988年からだとだいぶ時間が経っているんですよね。
で、デイヴはソウルオリンピックに出たのか?いつまで競技をしていたのか?というのが気になって調べたら、ソウルオリンピックには出ていないんですが1995年には国際大会で金メダルを取っているんですよ。
1988年から1996年の間に何があったのかは描かれていないので、私が映画から感じたジョンのデイヴ殺害の動機と、実際の動機(それは分からないのですが)が違う可能性は大いにあると思います。
そこんところが引っ掛かってます。
投稿者 マツヤマ : 2015年03月09日 19:00
オーソン
せっかく書くなら、もう少し踏み込んで欲しいなぁ。
確かにジョンとマークは見ていて痛々しい。ただ、オレの中にも、ちょっと空気に流され易いような、マーク的な部分があるのを振り返ったりして、苦しかったりもしたんだよね。
その、とある米国人って、日本で言えば国民B層だよね。アメリカ人だからって、みんなハリウッド映画を観るわけではない。映画のことも社会の事も知らない。でもテレビでバラエティー番組ばかり見ているから、お笑い芸人としてのスティーブ・カレルのことは知っている。日本にもアメリカにも山ほどいるんだよな。
ウノピ
マークがコカインにハマってるのは、オレも意外に思った。
だけど、あの時のマークが「ベンジャミン・バトン」で若返ったブラピみたいに、ちょっとカッコよく見えたりもした。唯一、人間っぽかったというか…
ソウルオリンピックに出て負けたと勝手に思っていたけど、違ったんだね。
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