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2014年10月06日(Mon)

舞妓はレディ 強制起訴シリーズ

起訴者: ヤマネ

強制起訴シリーズ46弾

かつて「シコふんじゃった」「Shall we ダンス?」などで日本娯楽映画の気概をみせ、最近では「それでもボクはやってない」「終の信託」など社会的なテーマにも取り組んでいる周防正行監督による最新作。テーマは花街。現代の花街を撮るのは難しい・・・という事になっていますが、如何に周防監督は取り組むのか。かつての娯楽映画の粋を再び示せるのか?
ここ、京都は祇園の盲点にあるカフェ・オパールにて、強制起訴メンバーズが語り明かす!

ヤマネ
おたのもうします!
マツヤマ
おう。オレは全然面白くなかったぞー!
ヤマネ
えええええええ?
マツヤマ
全体的に散らかり過ぎ。薄い、軽い、雑。こんなもの見せられて、すっかり脱力したよ。
元店主
すんまへん。
マツヤマ
・・・ま、まさか。ケンタロウさんもヤマネ君も、またも揃って「良かった」とかいうんじゃないだろうな。オレだけ駄目だった、またはその逆、というお約束のパターンか?
元店主
いや、意見の相違があってこそ、意味がある訳で。・・・実は私も、始まった時は「うわ!これヤバいかも」・・・と思ったんですよ。でも、途中ぐらいからどんどん良くなってきて、最後は・・・結構満足して劇場を出られた感じ。
ヤマネ
おおきに。
マツヤマ
もう京都必須三単語はいいって!・・・しかしなー、二人ともこんなのがいいって言うんだもんな、理解出来ないなー。
ヤマネ
ていうか、ボクはまだ良かったとはいってませんよ。3人の中で京都生まれはボクだけなんで、こういう映画には厳しくいきますよー。
マツヤマ
ほう。で、どうだったんだ?
ヤマネ
・・・コホン。素晴らしかったです!!!
マツヤマ
どてっ。そりゃ桂三枝も椅子から落ちるわ!
ヤマネ
やー、ボクもですねー、題名から、「マイ・フェア・レディ」をモチーフにしてるんだな、とは気づいて観に行ったんですが、まさかミュージカルだったとは・・・。違和感を感じる唐突さや、決して名曲とは言えない歌の数々に、ボクも最初はひきぎみだったんです。これは周防監督、どうしたん、と。
元店主
同感。最初、あまりに説明的なセリフと些か安っぽいセット、置屋の女将がネットやブログを知らないという不自然な設定、唐突に歌い踊り出す人々がいまいち白々しい所など、ひっかかりまくりで、あれ、周防ってこんなに下手だったかな?それとも衰えたのか・・・と暗い気持ちになりかけたんですが・・・。途中からそれらがどんどん噛み合ってきて、うまい!となる場面も多々。
ヤマネ & 元店主
で、これはいい映画だ、と確信しましたー!
マツヤマ
キミら、タッグ組むつもりか。もうね、2対1だとしんどいから喋るの二人のうちどっちかだけにしてくれるか。レビューの表記もヤマ店主か元ヤマネでいいだろ!
ヤマ店主
オウケイ、わかりました。じゃ、マツヤマさんが、この映画のどこが駄目なのかが知りたいなあ。一応、批評家、ブロガーなんかでも評価が分かれていて、凄くいいという人もいれば、退屈すぎる、とか、周防はそもそも嫌いだけど観たらいつも面白い、といった何となくわかるようなこと言われてるんですよね。
マツヤマ
そうかぁ? オレが読むブログはすべて高評価だったぞ。でも春子が「舞妓になりたい!」と言うわりには、積極的にやる気があるようにも見えず、ステップアップの過程もよく分からないままにたった一年で舞妓になる、という展開はどうよ。ラストに岸部一徳が「たとえよそ者でも本気で頑張った小春はほんまもんの舞妓や!」みたいなことを言うんだが、もひとつピンとこなかったけどな。春子はよそもんじゃなく、サラブレッドだったというオチなんだから、それもなんだかねぇ・・・。
元ヤマネ
んー、結構修行も丁寧に描いていたと思うんですけどねー。劇的に変化したというより、徐々に芸の世界に馴染んでいった様子を感じ取れたですし・・・。むしろ、むちゃくちゃ上手いなこのバランス感覚!と思いましたけど。キャラも全員立ってるし。主役の子もいいんですけど、何と言っても最高だった富司純子を監督がリスペクトしていることがよく伝わってきて、観てるこっちも最高!。高嶋政宏も岸部一徳も、竹中直人も、田端智子も、わずかしか出て来ない妻夫木聡に至るまで登場するすべてのキャラが立っている。凄い、周防監督。役者を使いこなすとはこういうことなのかー!!!
マツヤマ
冒頭の高嶋政宏のウザいキャラはぜんぜんいいんだけど、胸毛抜いてフーッ、ってやるシーンがね・・・。あんな事やられちゃうと、あっ、こういうレベルなのね、この映画、みたいな。続いて岸部一徳たち3人の台本読み合わせ的な会話シーンがあるだろ。はっきり言って、第一印象でテンション下がりまくり!それで固定されちゃったんだな、多分。
ヤマ店主
いいシーンではないかもしれないけど、普通に高嶋政宏がコミカルに駄目な役を好演していて、昔の竹中直人っぽくて、微笑ましかったですよ。この人、うざい役最高ですもんねー。
マツヤマ
そうかぁ?・・・他にも矯正のための「スペインの雨」のパロディもしつこいし。うざい。ミュージカルとしても、ただ状況説明に曲をつけただけで、タイトル曲以外は耳に残らない曲ばかり。やっぱり見ていて恥ずかしくなるんだよな。それって、単にオレがミュージカルが嫌いなだけか? 踊りもあれでいいの? 花街が舞台なのに如何にもなベタな洋風のダンスって・・・。草刈民代が舞台レビュー風に変身っていうのも・・・ザ・ 陳腐!
元ヤマネ
陳腐ですかぁ・・・いや、めっちゃ楽しかったじゃないですか! 特に、タイトル曲で全員踊るエンディングは鳥肌立つほどの幸福感(うっとり)。後ろでshall we ダンスしている竹中直人なんか反則です(笑)。なんか、誰の歌であってもそこまで上手くもなく、いい曲とも思わないけど、じわじわっと心にしみる(しんみり)・・・・役者のキャラにピッタリのシーンばかりだったじゃないですかー(喜)。そもそも、花街というある種虚構というか、日常からずれた世界を描くのにこんなにもミュージカルという形式がピタッとはまるなんて、思わず膝を打ちましたよ(ポン!)。監督はこう言っています。「最初から本格的ミュージカルにするつもりはなかったんです。いわば面白い映画にするための歌と踊りのシーンなんです。もっといえば、ファンタジーとしての京都を表現するための手段でもあります。それこそ京都のお座敷は、ある意味ミュージカルですから。ミュージカル・シーンは、お茶屋のお客さん気分で楽しんでほしいと思っています」って。もうばっちぐー。京都ファンタジー。イエー。
マツヤマ
結局さっきからヤマネ君が喋ってるだけじゃん(笑)。
ヤマネ
あらおおきに。・・・ミュージカルとして、三池の「愛と誠」と同じ系統じゃないですか、この映画。歌の使われ方というか。まあ振り付けもパパイヤ鈴木なんでしょうけども。マツヤマさんも「愛と誠」や「鴛鴦歌合戦」、植木等とか、いい感じのミュージカルも嫌なんですか?元祖「マイフェアレディ」も最高っしょ。
マツヤマ
「愛と誠」なんかは、三池監督の、正統派ミュージカルやミュージカルファンへの茶化しな感じが楽しいんだよ。オレはそこに共感した訳。
ヤマネ
これは茶化してませんけど、楽しいですよー。まーいこーはレディー??
元店主
私は「愛と誠」も別にミュージカルを茶化してるとは思いません。あれは、70年代熱血物を今そのままやっても変なだけだから、それを相対化し、現在形にアップデートするための装置だったと思います。で、この映画もいっしょ。花街文化というそもそも虚構性が強いものを、さらに相対化し、虚構化するために、「マイフェアレディ」を持ってきたんですよ。「マイフェアレディ」を露骨になぞる事によって、見事に相対化/虚構化に成功してる。うまいよなー。多分、最初にうまくのれなかったのは、二重に虚構化がなされてるから、ちょっと戸惑ったんだと思います。
マツヤマ
オレは最初から最後まで戸惑いっぱなしだよ!・・・隨心院のシーン とかなぁ。京都でロケするにあたって京都市産業観光局がアドバイスしてるんだろうけど、どうも商工会議所が京都検定と絡めたがってる節もあるような…。まぁ確かにロケーションはいいんだけどね。
ヤマネ
やっぱ気になりますか。そこらへん。
マツヤマ
ああ、気になるよ!オレは深読みティストだからな・・・。他にも、今の舞妓ちゃんは自由恋愛、強制的に旦那をとらされる事とか、水揚げとか、そんな事はおまへん・・・みたいな所とか、プロパガンダくさいな。
元店主
んー、でも実際に今の舞妓ちゃんは自由恋愛だと思いますけど。
マツヤマ
っふ。甘いな。花街は虚構の世界、とか言っておきながら、その本当の意味、分かってないんじゃないか?京都の闇は案外深いぞー。・・・あと、研究室のインテリアがダサくてさ。デザイナー家具なんだけど、あのセッティングはおかしいよ。
ヤマネ
ま、あんなもんですよ。京都人のボクが言うのもなんですが・・・京都はダサいです!
元店主
がーん。それを言っちゃあ、おしめーではー。でも、そういったダサい所とかも引っ括めて、うまくポップ感に繋げていると思いましたが。・・・あと、同じシーンを繰り返し積み重ねてリズムを作っていく、とか、ピローショットをわざとらしく入れる、とか、「兄貴の嫁さん」以来の小津イズムも健在で、やっぱ嬉しかったですね。
ヤマネ
そうですよねー、山田洋次に小津は無理でも、周防監督はいけそうですよねー。大体、街がえらくちゃっちいセットで表現されてるな、なんか奥行きもないしカメラもいつも同じ方向からのショットばかりだし、リアリティが全然ない・・と思ってたら、途中でそれが小津ばりに、意図的であることに気づくんです。好きやわー。
元店主
褒め過ぎかもしれないけど、それぐらいレベルが高いと思うんです。こういう良く出来た映画があまりヒットしていないのは、どういうことなのか。やはり宣伝が良くなかったのか。予告編は観る気をなくさせる酷いもんだったしなぁ・・・。や、やはり福山雅治とかが出てないと動員出来ないのかー!!!(頭を抱え込む)
ヤマネ
「るろうに剣心」のことですね。
元店主
他にも上手いと思ったのは、この映画は花街のドロドロ=暗い側面をほとんど描いていないんですが、西野屋の息子の存在や、女将(富司純子)の昔語りの中に現れるフッと微かな気配、という形でそれを描いている。それはホントに僅かしか描かれていないんですが、この映画自体が二重の虚構化をほどこされている所から、その二重に隠蔽されたドロドロを思うと、その強烈さが返って強く想像される様になっているところです。描かずして、かえって強烈に描く、という手法。うまいと思うなぁ。
マツヤマ
きみら、最初から最後まで褒めてばっかりやん。オレは冒頭でテンション下がったまま上げることができなかった・・・というより肌に合わないんだろうな、こういうの。そう思うしかないよ。ここまで印象が正反対だと。はっきり言って、きみらの言う事にはちっとも納得できん!
ヤマネ
ささ、もう細かいことは気にしないでマツヤマさんも一緒に踊りましょ。まーいこーはレディー♪まーいこーはレディー
元店主
花となり〜ましょう〜♪
マツヤマ
いいよ、オレはー。こんな映画は嫌いだって、言っただろー。
ヤマネ
まるで西野屋の息子の秋平君みたいですね、マツヤマさん。それ、まーいこーはレディー♪まーいこーは
マツヤマ
ちょっと、屋根の上登ってくる。
ヤマネ
そっちですか!
元店主
という訳で、10月の強制起訴映画は「MOTHER(マザー)」です。楳図かずおの初監督作品です!
マツヤマ
グワシ!!!
ヤマネ
あ、マツヤマさん、グワシできるんですね。じゃー、ボクも・・・サバラ!

Comments

投稿者 uno : 2014年10月10日 10:39

おそうなってすみませんどす。
。。。
。。。
俺:アレッ?筆が、筆が進まへん。どうしよ、筆がすすまへん。。。
岸部一徳:それは強制起訴イップスや。メンバーからの極度のプレッシャーを浴び続けた結果、知らず知らずのうちに心が折れて何も書けんようになってしもたんや。しばらく休養しなはれ。
俺:そうやったんか(泣)ではしばらく休養を。。。

ってのは冗談なんですが、ほっこりしましたー。
前半の面白くないなー感から後半じわじわ面白くなっていくのが気持ちいい。最初は唄や踊りのあか抜けなさに、違和感を感じたんですが、ジワリジワリと気づかないうちに作品に引き込まれて、途中から違和感と感じていたものが面白くなっていく。竹中直人ええやん!みたいな。田畑智子は最初っからええやん!
これ落語であるんです。前半無理に笑わせないで気づかないうちに客を落語の世界に引きずり込み、後半になると自然に笑いが起きる。これが凄く心地良い。まれですけど。
この映画にも同じような印象を受けています。
周防監督の上手さなんでしょうね。上手さを感じさせないのがまた良いなあ。

春子の津軽弁と鹿児島弁のちゃんぽんと朴訥さがキュート。で、なんでお茶屋のお母さん、お姉さんは春子の訛に、母親が舞妓だったことに気づかへんのや。。。母親の方も最初は訛があったはずやろ?って思っていたら、気づいとったんかい!ってここでグッときて涙です。
春子の使ってる部屋が母親が部屋使ってる部屋だった、なんて超ベタな展開なのに泣けるという。
春子の舞妓デビューのお座敷で使われた「梅は咲いたか」が好きな曲なんですが、映画の中での使われ方がまた良くてそこもグッときました。

最後に、やっぱり富司純子先輩(中学の先輩なんです)はええなあ。間違いないなあ。エンディングの軽々と優雅に踊っている姿に見惚れました。粋です!

投稿者 オーソン : 2014年10月13日 12:07

おそうなってえらいすんまへん。
この映画、コメント書きづらいです…
何を書いていいのやら。最終的には楽しめたんですが、そのうえで気になる箇所を。
花街のダークサイドは意図的に隠してるんでしょうが、ときおりでてくる黒さが本当にドロドロしてるんだろうなあと想像しすぎて、ファンタジーに乗り切れなくなってしまった感もあります。
あと、やっぱりミュージカルシーン自体は決して上手なものではないかと。尺も少し長く感じました。

投稿者 元店主 : 2014年10月14日 01:21

お二人ともご苦労さん。

うのぴへ
なるほど、落語ね。確かにこの映画は、「ガーディアンズ・・・」とかみたいに最初から客をグッと惹き付けて、そのままドンドン突っ走っていく・・・といったタイプではない。じわじわ〜と世界に引き込んでいく、しぶい感じの作品。昨今まれかもしれないね。
にしても富司純子は最高だった。間違いない。

オーソンへ
うむ、どうやらオーソンにはこの作品を受け止める受容器がなかった様だね。あんまこんなタイプの作品は観ないのかな。
最終的にはよかった・・・・との事だけど、どのあたりが良かったのかな?あるいは、どの様に良かったのかな?
ミュージカルシーンは上手くないと思ったらしいけど、それは最後まで?ラストの全員で踊るシーンもダメだったの?

投稿者 オーソン : 2014年10月14日 18:49

ラストのミュージカルは良かったですよ。前半が特に「どうなんだろうか、これは。。。」と考えながら観てました。主人公の声がでなくなったあたりから、のることができたかなあと。
なにより、横の席に座っていた2人連れがポップコーンの容器をガラガラ鳴らしていたのがとにかく気になったことが前半のりきれなかった最大の要因だったのかもしれません(汗)

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