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2014年06月18日(Wed)

「グランド・ブタペスト・ホテル」 []

Text by 元店主

昨年のオパール年間ベストで1位に輝いた「ムーンライズキングダム」のウェス・アンダーソンによる待望の新作。
やー、観る前から「これは面白いのでは」と期待満々だった訳ですが、正に「素晴らしい!」の一言。こういった映画が観たいんだよねー。

まず、語りの技術が洗練を極めて凄いことになっている。もう脱獄のシーンの描き方には、あまりの洗練さ故に呆気にとられてしまった。凄い。
もともとウェス・アンダーソンは、様々な物事をギュッと圧縮してスタイルの中に入れ込み、凝縮されたスピード感ゆえの“軽さのエレガンス”を現出させる作風ですが、今回はアクション映画!であるが故に、その圧縮感、エレガンスさがハンパない事になっているのです。
もう軽い、軽い。エレガーント、エクセレーント。陶然としてしまいます。

今回はヨーロッパが舞台なのですが、きっちりウェス・アンダーソンのヨーロッパになっているのもいい。スタイリスト故に当然とはいえ、美意識もビンビンに健在です。

この映画は、現在の荒れ果てた東欧の街で、ひとりの少女がある作家の墓を訪ねる所から始まります。その墓のそばで、少女はその作家が書いた「グランド・ブタペスト・ホテル」という本を読み始める。と、舞台はその作家が存命の頃に移り、彼自身がその昔に訪れたグランドブタペストホテルの話を始める。と、舞台は若かりし頃の彼が訪れたグランドプタペストホテルに移り、そこでホテルのオーナーと知り合い、彼からホテルを手に入れた経緯を聴くことになる。と、舞台はそのオーナーがまだベルボーイだった頃に移り・・・と、何重にも入れ子細工の様な構成になっているのです。
結局、そのベルボーイと、彼の師匠であるグランドブタペストホテルの伝説のコンシェルジュ、ムッシュ・グスタウ゛との冒険譚になるのですが、映画の最後で、実はこれら映画に描かれた華麗なる戦前ヨーロッパの世界は幻想であった事が明かされます。それは、ムッシュ・グスタウ゛の努力によって維持されていた幻想であった、と(現実はもっと散文的であった、という訳でしょう)。しかも、これらの舞台になったズブロフカ共和国も、完全なるフィクションだという事実に鑑みれば・・・これは一体どういう事なのでしょうか。
私が考えるに、それは“美”というものは、現実の中にゴロリとあるものではない。それは、“美”を現出させ、維持しようとする努力の中に、“美”を語り、それを受容し、想像力を膨らませ、またそれを語り、それが受容者の想像力を刺激し・・・という連鎖の中にこそあるのだ、という事です。
だからウェス・アンダーソンは語り、我々はそれを受容し、想像力を膨らませ、またこの様に語るのです。
我々もこの“連鎖”の、“連帯”の一員なのだ。そう、この映画は語っている様に思えます。

出演陣も相変はらず素晴らしくて感涙。特に、今回はシアーシャ・ローナンが結構活躍したのが嬉しかった。まぁ、これは個人的な話ですが。

Comments

投稿者 オーソン : 2014年06月26日 00:40

いや、本当にこの映画も良かったです。ウェス・アンダーソンの映画を観ると、いつもその映画の世界に入りたくなります。

そして、この映画のグッズがあればすごい欲しいですね。ホテルのフィギュアとか、断面図模型とか。

投稿者 元店主 : 2014年06月27日 02:25

やっぱ、アライグマのバッチじゃない?

あのお菓子は要らないけれど。でも、シアーシャが作ったのなら食べてみたい様な気が・・・でも、絶対に不味そうなんだが・・・うーむ・・・。

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