「七番房の奇跡」 [強制起訴シリーズ]
起訴者:マツヤマ
強制起訴シリーズ39弾
知的年齢6歳のヨングはイェスンという実年齢6歳の愛娘と貧しいながらも幸せに暮らしていた。しかしある日、ヨングは少女暴行殺人犯(なんと!死亡した少女は警察庁長官の娘)という無実の罪を着せられ死刑判決を受けて刑務所の七番房に収監される。その刑務所内で、ひょんなことからヨングに命を救われた七番房の房長は、仲間たちと共に「娘と会いたい」という彼の願いを叶えるべく、イェスン刑務所潜入作戦を決行する。
- ヤマネ
- 最高でしたねー「新しき世界」! とてもスリリングで激しく面白かったです。マツヤマさんのおかげで、いい映画を観ることができました。ありがとうございます!
- マツヤマ
- おいおい、ボケるのもいい加減にしろよ。確かにヤマネくんに「新しき世界」はススメたけど・・・
- ヤマネ
- ハイ、ボケてましたー! いやー、今回はまったく気が乗らないですねー。予想通りというか、それ以上というか、まぁ、ダメでしたネ。
- 元店主
- 私もダメだった、というか、そもそも私の感覚では、これは映画ではなくて、果てしなくテレビドラマに近いものだよ。映像として自律しているところがひとつもなく、ただひたすら、ストーリーに奉仕するために映像があるだけなんだよね。
- マツヤマ
- ・・・・・・、ですよねー。
- ヤマネ
- な、なんですか?気持ち悪い。
- マツヤマ
- いや、まぁ、2人の感想が予想通りだし、確かに起訴映画の評価的には底打ち感がある映画けど、オレはそんな「嫌いっ!」というほどじゃ・・・
- 元店主
- 嫌いですっ!
- ヤマネ
- とにかく気持ち悪かったです!
- マツヤマ
- うわっ!殺意すら感じる。で、でも、こういうの見て、笑って泣いて「いいもの見た」とか思える人たちの世界があるのは、それはそれでいいんじゃないの。
- 元店主
- いや良くないですよ。私だってもちろん泣きましたが、それは可哀想だから泣いたのであって、間違っても感動の涙ではありません。
- マツヤマ
- うん確かに可哀そ過ぎたな。
- ヤマネ
- ボクも泣くには泣いたんですけど、ただ悲しいだけの話で、感動できるところはひとつもなかったと思います。
- マツヤマ
- とりあえず涙は出るんだよね。まぁ、泣かせることって意外と簡単なんだよなぁ・・・
- 元店主
- 私は基本、何を観ても泣いてしまうので、泣かせるのって、笑わせるよりも遥かに簡単なんでしょうね。例えばアンゲロプロスの「霧の中の風景」とかアルモドバルの「欲望の法則」なども可哀想で泣くんですけど、それは単に可哀想というだけのお気楽な感情ではなく、世界の厳しさに、観ている自分自身も傷付けられて泣くといった感じです。でもこの映画は観る人を傷付けるような厳しさは微塵もなく、あくまで観客を安全地帯に置いて、いじめられている可哀想な人を見せ物的に見せているだけです。そういうところが私はテレビ的で嫌だと思うところです。
- ヤマネ
- あと子役が顔立ちはいいんでしょうけど、ぜんぜん可愛くなかったですねー。芦田マナちゃんの方が断然いいと思いますよ。もちろんウチの娘はもっと可愛いですけど。あ、それから、さらに言うと、主人公の顔が嫌いですねー。アップには耐えられなかったというのもあるんですが、演技が作り過ぎで、ものすごく嘘くさかったですねよねー。
- マツヤマ
- 主役のリュ・スンリョンって「王の男」に出てたときはシリアスなイメージで、とても同じ人物とは思えないんだよ。今回はリュ・スンリョンが6歳の知能のキャラクターとして「戯画化された典型的な演技をしないこと」を最優先にした研究の結果らしいぞ。
- ヤマネ
- えっ?言っていることがよく分かりません。ああいうのが戯画化された典型的な演技って言うんじゃないんですか?
- マツヤマ
- まぁね、あれじゃ志村けんとか藤山寛美みたいだからな。あの演技は完全に喜劇の舞台向きだよな。
- ヤマネ
- やはり「母なる証明」でウォンビンがやったような知的障害者がリアルなんじゃないでしょうか。人間誰しも不気味さのようなものを持っていて、同じく知的障害者にだって特有の不気味さがある、ということから逃げているような気がしますが。
- 元店主
- 他の登場人物も警察庁長官以外は、み~んな善人というのもトホホだよね。みんな善人だと話が成立しないから、長官ひとりが現実離れした悪人に描かれてて不自然この上ない! ストーリーの随所にこの手の不自然な強引さがあってシラけまくってたよ。
- マツヤマ
- そもそも主人公の父娘と警察庁長官の家族が同じエリアに住んでいること自体が不自然なんだよな。でも、汚い路地でヨングが長官の娘にヒョイヒョイと付いて行くところで思わず息を呑んだりしたんだけどね。けっきょくその後はどうでもよくなるんだけど。
- ヤマネ
- これもどうでもいいことですが、登場人物が日本人っぽくなかったですか?
- マツヤマ&元店主
- うん、思った!
- ヤマネ
- まず、ヨングが中村勘三郎。
- マツヤマ
- あ、それだ!誰かに似てると思ってた。
- ヤマネ
- 看守課長は渡辺いっけい。
- マツヤマ
- オレは声だけで完全に竹中直人のイメージだったな。
- 元店主
- ヤクザの人は田口トモロヲに似てなかった?
- ヤマネ
- あー、ハイハイ、ボクもそう思ってました。
- マツヤマ
- オレは岸谷五朗だと思ったぞ。
- ヤマネ
- なんか・・・虚しいですね。韓国臭さがちっともない。そもそも何が奇跡なのかさっぱり分からんし。実はヨングが死刑を免れて生きていた!とか奇跡的な結末がひょっとてあるのかと思ったら、ぜんぜんないし。十何年か後の模擬裁判で無罪にはなったけど、ぜんぜんハッピーじゃないですからね。
- 元店主
- 模擬裁判で無罪にはなったけど、ぜんぜん冤罪ははれてないよね。新たに検証するわけでもなく、ただ過去の思い出話にみんな同情して無罪にしてあげたというだけ。これは単に、少女が殺されて怒り狂った人々が感情にまかせて主人公を有罪にしたことの裏返しだよ。何ひとついいことなんてないし、なにも問題が解決していない!そもそ裁判の意味が分かっているのか???ったく酷い映画だと思うよ。
- マツヤマ
- オレは観終わってからしばらく考えたんだが、あれはセーラームーンのランドセルを欲しがる人が不幸になる、という話ではないかと思うんだが。
- ヤマネ
- エーッ!反日映画?
- マツヤマ
- そ、そうそう、そうなんだよ。日本のセーラームーンのせいで、みんな酷い目にあって泣かされているという。
- 元店主
- それじゃセーラームーンが可哀想でしょう。
- マツヤマ
- やけに美少女アニメの肩持つねー(笑)。
- 元店主
- そういう発言は誤解を招きますからやめてくださーい! でもセーラームーンにも興味はないことはないですが・・・
- ヤマネ
- でもセーラームーンに関しては、世界的に人気らしいですから、韓国でも普通に人気があるんじゃないでしょうか。ホントに反日なら安倍晋三の顔が付いたランドセルとかでいいんじゃないですか?
- マツヤマ
- そんなランドセルあったらグロ過ぎて誰も欲しがんないだろ! 今でも「日本を、取り戻す。」とか意味不明のポスターがあっちこっちに貼ってて、一瞬「あれ?林真須美か?」とか思ってビビるぞ! でも林真須美だって冤罪かもしれないんだしな。むしろ安倍の方を重罪にしろっつうの!っと、話とんじゃったな。まぁとにかく、さんざん泣かされたけど、何の感動もない映画だった、っていうのはオレも同感。
- 元店主
- 私の後ろの席で3人組の女子高生が観ていたんですが、この3人もグチャグチャに泣いてて、観終わったとき、その内のひとりが「めっちゃ可哀想」って言ったんです。私はその彼女に人差し指を突きつけて「キミの言うとおりだ!あの映画はただただ可哀想なだけの映画なんだよ」って・・・
- ヤマネ
- 言ってあげたんですか?
- 元店主
- もちろん、心の中でね。
- マツヤマ
- オレの横にいたオバサンなんて、前半部分でもうグジュグジュやってたから、この「奇跡の映画」を12回くらい観てんじゃないかと思ったぞ。
- 元店主
- そうやって「魔法の映画」みたいな言い方しないでください。そもそも「魔法の映画」っていうのはですね・・・
- ヤマネ
- はーい!ストップ!「魔法の映画」の話は今日はやめておきましょうねー!・・・と、では3月のお題ですが、清水崇監督「魔女の宅急便」です!
- マツヤマ
- うゎー、相変わらず興味のないとこ突いてくるなぁ。
- ヤマネ
- 「七番房」よりマシだと思いまーす!
Comments
投稿者 uno : 2014年03月08日 22:22
いやはや、激しく嗚咽しました。
映画館での嗚咽はレ・ミゼラブル以来です。
滅多に涙が出ないのですが、身体が化学反応でも起こしたかのように涙が。。。
こ、これは、泣きのケミカル系映画。
いくらなんでも不自然。
個人的には鼎談の「可哀想」というキーワードがおもいっきり的を得ています。
主人公の不自然な演技はキツかったのですが、監房に子供がいるっていうシチュエーションは面白かったですよ。それすら悲惨なんですが。。。
監房にいたメンツのなんとも言えない安っぽさは良かった。
あのメンツに日本人っぽさは感じなかったけどなあ。
この作品に限らず、映画の宣伝などを見ていると、涙が出るのと感動するってのが混同されている、もしくは制作側が分かっていて利用しているようで気持ちが悪いですね。
嗚咽すると体調が悪くなるんです。。。
投稿者 マツヤマ : 2014年03月11日 19:56
ウノピへ
>監房にいたメンツのなんとも言えない安っぽさは良かった。
出所後も胡散臭いことして稼いでるところも面白いと思ったよ。日本のドラマだったら、もっとステレオタイプの善人になるだろうけどね。ただ、この映画は七番房のヤクザや看守課長、または娘が、主人公に救われたという事実を背負って生きていたわけで、しかしそういう部分はまったく描かず、無意味な模擬裁判でお茶を濁すのみというのがダメなんだろうな。
>嗚咽すると体調が悪くなるんです。。。
そういうときは、小さな袋を口にあてて二酸化炭素を多めに取り込むと良くなるかも。
投稿者 元店主 : 2014年03月11日 23:24
うのぴへ
>こ、これは、泣きのケミカル系映画。
うのぴって、リトマス試験紙みたいで面白いなぁ。
投稿者 uno : 2014年03月13日 00:13
マツヤマさん
冒頭では模擬裁判だと言ってませんでしたよね。
言ってたら、見る気無くしますし。
少女が弁護士になって冤罪を晴らす物語だと思って見てたら、ラストで模擬裁判かい!ってズッコケました。
体調悪は過呼吸じゃなくて目と鼻がやられてしまうんですよ。
元店主さん
ケミカルに打ち勝つ涙腺を持つよう修行します。
身体が反応してます。
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